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#14 お金の未来を1枚の図で書いてみた

「新しい時代のお金の教科書」が全文無料で読めるマガジン。前回は「社会はタテからヨコへと変化している」という話でした。

今回は、お金の未来を見ていきます。編集秘話では、来るべき変化に備え、どんな準備をする必要があるのか?具体的なアクションプランについてご紹介します。

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お金の進化の行き着く先、三つの方向性


 ここまでは過去から現在までのお金の話をしてきました。

 ここから先は未来のお金について話しましょう。

 下の図を御覧ください。第二章で出てきた縦軸に信用(信用の外部化の度合い)、横軸に汎用(地域の広がり)をとった貨幣の発展の歴史を表した図です。

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​​ 原始共和制から個人間の取引の記帳を経て、貨幣の発生(金等)、そして中央銀行の成立、現在では各国中央銀行(国家)の発行する法定通貨と仮想通貨が乱立する状況までの推移を矢印で示しました。

 それではこれからのお金はどうなるのでしょうか?

 時間軸で表すと次の図のようになります。横軸は年号が入っています。縦軸はその時代のお金の形のシェアを表しています。

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 この図を見るとわかるように、短期的には仮想通貨(無国籍通貨)が発展するでしょう。しかし、2020年から2030年くらいまでがピークかもしれません。その後は、時間通貨の時代がやってきます。この時代を時間主義経済といいます。そして時を同じくして記帳主義時代というものが来るでしょう。

 おそらく21世紀の半ばから後半にかけてはこの時間通貨と記帳経済が中心となると想定されます。そしてやがて信用主義時代という形で中間媒介としてのお金を介さない経済ができてくると思われます。もちろん、途中には特定の地域やコミュニティなどで使える独自の地域通貨も増えてゆきます。ただこちらはメインにはなりません。

 メインは、既存の資本主義経済、そして時間主義経済、記帳主義経済、そして最後に信用主義経済への流れです。それぞれ簡単に説明しましょう。

仮想通貨(無国籍通貨)の短期的隆盛


 今世紀主流になるのはビットコインを中心とした無国籍通貨であるというように思われていますが、私は懐疑的です。各国の中央銀行が今のようにお金を刷り続けていればいずれまたその金融政策は失敗を繰り返すでしょう。その時には代替手段である仮想通貨に注目が集まります。しかしその注目は国家の凋落と信用管理の失敗に呼応した相対的なパワーであり本質的な意味で仮想通貨の信用を前提としたものではありません。

 なぜなら仮想通貨は、連載の第5回めで述べた貨幣の二大要素の一つである信用の担保が難しいからです。これまでの法定通貨を発行していた国家は世界に約190しかありません。GDPや徴税権の下支えもありました。したがって発行できる通貨も限度がありました。一方で無国籍通貨はビットコイン(Bitcoin)以外にもすでに350くらいは存在していると言われます。乱立しやがてそのほとんどすべてが淘汰されてゆくでしょう。

 お金は数字で表わされ、前述したように数字自体は人の意識を吸着する力がとても強い言語ですから、一時的には、仮想通貨の乱高下する価格という数字に人々の関心が集まりバブルが起こることは容易に想定されます。しかし過去のバブルが常にそうであったようにいつかは破綻します。

お金の進化の三つの方向


 仮想通貨のバブル現象とその崩壊の後、お金は一体どのような変遷をたどるでしょうか?次の図をご覧ください。これは未来のお金と経済システムを端的に表したものです。

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 まずは、左下の⑶の領域を見てください。これは20世紀まで中心的だった経済です。すなわちお金を使ってモノをやりとりしていた資本主義時代のことです。今でも馴染み深いです。

 そこから今後どうなるのかというと、まずは、上の領域、⑵時間主義経済、右の領域、⑷記帳主義経済へとシフトするでしょう。最後に、右上の⑴信用主義経済へ進みます。

 これが本書の要諦です。

時間主義経済


 時間主義経済とは人々の欲求がモノではなく社会的欲求(コト)にシフトしたときに、人々がお金ではなく時間を中心にして経済活動を行うことです。近い将来は、ほとんどの産業が人間の時間を主要な資源とする産業となり時間が通貨そのものとなって流通してゆく経済になるでしょう。

記帳主義経済


 記帳主義経済は、モノを対象としながらもそれをお金を使わないで流通させようという試みです。広くいえばベーシックインカムのように生活に必要な最低資金は共同体(国)で配ってしまおう、というものもこちらに含まれます。

 しかしメインの考え方は、モノを互いにシェアする中で、お金を使わずあげたもの、もらったものをすべて記帳してしまうことでやり取りを簡単にするということです。これを実現するのがすでに述べたブロックチェーン技術等です。参加者全員が取引のすべてが記帳された台帳を共有しているという状態ですから、Giver(与える人)とTaker(受け取る人)が明らかです。これならお金を使う必要がなくなります。

信用主義経済


 最後の信用主義経済は、人々が求めるものが信用であり、それをやり取りするツールも信用であるという不思議な世界です。これはまだ想像しにくいかもしれません。しかし実際に今世紀の半ばから2100年までには現実化してゆくでしょう。

 信用主義経済の世界ではまず、みんなが求めているのが承認です。そして承認とは信用にほかなりません。一方、お金を使わずにやりとりするツール(手段)も信用となっています。つまり、「みんなが、信用を求めていて、それをしかも信用でやりとりする」という世界です。手段と目的が信用という一点で統合した世界、それは名実ともにお金がなくなる世界のことです。

 いかがでしょう? イメージがわきますか? ここにきてお金は必要なくなるのです。

⑶は今まで私達が生きてきた世界の話です。⑵時間主義経済と⑷記帳主義経済は、世界が今大きく変化しているときなのでなんとなく想像がつくと思います。しかし⑴はまだみなさんが経験していない未知の世界ですから想像しにくいのではないでしょうか?

(本文:山口揚平「新しい時代のお金の教科書」より)

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<編集後記>
今回のメッセージは「資本主義経済は、時間主義、記帳主義を経て、信用主義経済に至る」でした。

 今回もここまでお読みいただきありがとうございます!

 編集秘話では「新しく来る経済圏。そのために今私たちは何をすれば…?」についてお話しします。来る信用主義経済。そのために ①今日から始められること、② 会社員のままでもできること、③そして今後のキャリア形成の上でできることについて書きました。


 さて、信用主義経済の未来に向けて私たちは何をすれば良いのでしょ?

 ”信用主義”と言うと聞こえはいいものの、これは別の言い方をすると「どんな小さな貸借りも記帳される、モノやサービスで誤魔化したり嘘をついたりできなくなる時代」とも言えるのです。


 それはまるで、物々交換とツケで経済が成り立っている数十年前の村での暮らしがグローバルで展開する、というものとイメージが近いです。


 この社会で、何をすればいいのかというと、地道に信用を貯めてゆくことに他なりません。

「じゃあ具体的に?」と尋ねるとすると、「何をやるのかというと、言葉遣いを変えて、靴を揃えて、ご飯粒を残さない、魚をきちんと食べるということ。本来社会生活において大事なことをきちんとするだけ。」だと山口は答えます。

では、それだけをやっていれば信用社会で食っていけるのか?と言うとそうではない、と山口は語ります。


そして会社にいる間に、基礎力をつけ、専門性を高め、信用を蓄えておくことは重要と言えるでしょう。

そして、どのようにキャリアを形成するのか?については、このように話しています。



なのだそう。その真意は、と言うと

17歳から27歳までの君たちの人生のテーマはたった一つしかないだろう。それは、こじらせた自己評価をマイナスからゼロまで持ってくる過程そのものである。
君たちは少なからず自分が嫌いだと思う。自己肯定感が足りてないかもしれない。君たちはなぜ就職ばかり気にするのか?それは就職したいからではない。怖いからだ。レールから外れること、お金がないこと、それらは恐怖であり、恐怖とは自己否定である。
だから君たちがやるべきは本来、就活ではない。恐怖と向き合う勇気を持つことだ。君たちはこれから10年かけて自分を取り戻す旅に出る。
一つは外の世界に向けてコントリビユーションを続けて成果を出し、認められ、金を得ること、そうやって自信を獲得してゆく過程だ。

もうひとつは、自分の内側の世界に向けての旅だ。君たちが嫌いな人間、どうしても許せないタイプの人を1人2人考えてほしい。親、兄弟、先輩、先生、クラスメート、誰でもいい。いいか、それは君たち自身の一つの姿である。この世には他人など存在しない。他人とは自分の心に生まれた感情の破片に過ぎない。他者嫌悪の本質は自己嫌悪である。認められない他人は誰にでもいる、その存在を認めること、それは自分を認めることであり、それこそが内なる旅だ。
この外と内の二つの旅をすることで、君たちは初めて自分を取り戻すことになる。君たちが社会に出ることの本質はそういうことにある。外と内の摩擦、恐怖と向き合い受け入れる過程が本当の自己を取り戻すために必要なプロセスなのだ。金やらスキルやらはその付随、よく言って副産物にすぎない。(山口揚平 2014年 慶応高校授業より)


(編集後記: 大西芽衣)

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