見出し画像

#9 テイラー・スウィフトがお金を発行する日は来るのか?

「新しい時代のお金の教科書」が1話無料で読めるマガジン。前回は「インターネットが世界をデジタル化して、コミュニケーションを加速させる技術なら、ブロックチェーンは、世界を「上書き」し続ける技術である。」という話でした。

今回は、お金の変化を促す”国家”の流れをみていきます。編集秘話では、「これから国家はどうなっていけばいいの?」という問いへの山口の答えについて触れていきます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 お金の価値を決めるのは、信用と汎用だという方程式について述べました。ではお金はこれからどうなっていくのでしょうか?

 今、お金に変化をもたらす大きな流れが起こっています。それを後ろから突き動かしているのが国家、技術、社会、経済の四つの動きです。この四つの観点から変化をみるフレームワークはPEST(P:Politics 国家、E:Economics 経済、S:Social Value 社会、T:Technology 技術)と言われよく使われます。

 技術に続いて、国家をみていきましょう。

国家から個人へ——個人がお金を発行する時代へ
 

まずはお金の変化とともに起こった、国家の変化を見ていきましょう。


 お金の信用母体の変化とともに、世界の構造も変化してきました。

 これは、世界は今どんな風に分かれてきているのかということを表した図です。

画像1

 国家の上に、企業つまりグローバルカンパニーがあり、そしてさらにその上にネットワークがあります。国家の中にこのようなネットワークがあるのではなく、国と同レベルにグローバルカンパニーがあり、同レベルで個人間のネットワークがあるのです。今はこの三層の戦いになっています。国家と企業の力は同程度になっている

 これは世界のGDPと企業の収益(Revenue)順位トップ一100を示したものです。

画像2

 2017年の資料ですが、アメリカや中国などが上位に並んでいる一方で24位にウォールマート、47位にトヨタなど、国家よりも経済的に大きな企業ができ始めています。ということは国家だけでなく企業や個人というものも、大きくなっていっていると言えるのではないでしょうか。歌手のテイラー・スイフトは何十億人というフォロワーを持っています。そういう人たちが貨幣を発行できないのかというとそうではありません。

 日本でもVALUというサービスが少し前に流行りました。個人が株式会社のようにVAとよばれる擬似株式を発行することができ、売りに出されたVAは自由に売買することができるというサービスです。このように、個人が通貨を発行するのはもはや当然の動きとなりました。

 そして、その裏で起こっていることは何かというと、お金の信用母体の変化なのです。

信用母体の進化


 お金の変遷を信用母体の変遷を中心にまとめてみます。

画像3

 図を見てください。お金の定義の図です。今のお金は国家によって担保された信用によって流通していますが、信用の裏付けがあるかどうかは怪しい状態です。

そしてそろそろ企業や個人が「お金」を発行する時代に差し掛かってきました。一人の個人のフォロワーの数が小さな国の国民の数を超えた時、個人の発行するお金の方が強い汎用性を持つようになるでしょう。そして、最後にはお金を介さず人々が取引をするようになるのです。

 これが第一の動き、すなわち国家から個人へ、です。

本文:山口揚平(「新しい時代のお金の教科書」)


ーー


<編集秘話>
 今回のメッセージは「お金を発行する主体は、国家から個人へと変化している」でした。

 それでは続き、「国家はこれからどうなっていけばいいの?」ということについて山口の主張をご紹介します。


あらゆる国家は、「民主主義」「国民国家」「グローバリゼーション」の3つのうち、2つしか選択することができない。(ダニ・ロドリック)まず日本が選択するものは、「国民国家」である。では、「民主主義」と「グローバリゼーション」のどちらかを選ぶべきかといえば、それは「グローバリゼーション」である。この国は国民一個人毎の主体的判断、すなわち民主主義を捨てても「グローバリゼーション」だけは手放してはならない。欧米各国が自閉化している今、我が国が優先的に選択できるのは、世界的な経済ネットワークの構築なのだ。(2017/3/30)


 日本は革命によって民主主義を勝ち取ることも、資本集約を軸に経済を推進することもなかった。経済は資本集約でなく、「工夫」を基軸に発展させてきた。しかしカリフォルニアロールやたらこパスタのように、輸入概念をカスタマイズしきって一段上に持っていくこともいまだできていない。里山資本主義も抽象的な概念、あるいは懐古主義、局地的な現象にすぎない。我が国は資本主義と民主主義を真に腹落ちさせることはできていない。

 そのために民主主義は、取り得ないのである。

 その中で日本のグローバリゼーションにおける「商材」は、次の3つである。

 一つにヘルスケア。

 ヘルスケアのイノベーションは、健康保険制度をはじめとしたエコシステムも、ロボティクスも、病院などの施設も、遺伝子、データ解析、その他、どの分野でも欧米の後塵を拝している(勝っているものがあれば教えて欲しい)。唯一、ただ「課題」の質と量だけが欧米に勝る。この国の急激な高齢化という課題は、ヘルスケアイノベーションをどう適用すれば効果があがるのか、最初に解を見つけることができる環境を用意した。その「解」を輸出する。これが第一である。

 二つにコンテンツである。

 アニメや伝統芸能等を問わない。演劇・芸能・意匠・映画、あらゆるコンテンツが輸出の対象となる。世界の人々は、「脂っこい」欧米モノのコンテンツの押し売りにもう胃がもたれている。わざとらしいミュージカルも大げさなハリウッドも時代遅れだ。20世紀のように崇める必要もないし、臆する必要ものない。世界各国で求められているのは「和食」である。それを輸出する。東京は部品でなく文化輸出の世界的拠点になるべきだ。

 三つに宇宙・環境科学産業である。

 宇宙は国を問わない(当たり前だが国境がない)。そこには資源と利権と好奇心という商材がある。我が国はそこに注力すべきである。

 「国民国家」「グローバリゼーション」を選択するため、ヘルスケア、コンテンツ、宇宙・環境科学産業の3つを商材にする。


 これが山口の主張です。


 国家戦略について、より詳しくはこちらから。

 ちなみに私が山口揚平のことを初めて知ったのは「10年後世界が壊れても、君が生き残るために今、身につけるべきこと」なのですが、一番感動したのは、国家戦略についての部分でした。

 ここまでお読みいただいて、ありがとうございます!次回もどうぞよろしくお願いします。

(良かったら投げ銭をお願いします。)

ここから先は

0字

¥ 500

期間限定!PayPayで支払うと抽選でお得

最後まで読んでいただきありがとうございます。 スキ、シェア歓迎です!励みになります。