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#6 お金の変化を1枚の図で書いてみた。

新しい時代のお金の教科書」が全文無料で読めるマガジン。前回は、「お金(通貨)の価値とは使っている人の数×発行している母体の信用である。」というメッセージでした。

今回は、お金の変化を表す1枚の図について紐解き、編集後記では、「なぜ仮想通貨は永久的な通貨にならないのか?」についてを書いてみたいと思います。

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信用の外部化における貨幣の質的変化

 今まで貨幣として使われてきたものを信用性と汎用性の二つの軸のマトリクスでまとめてみましょう。縦軸は「信用の外部化の度合い」、つまり貨幣化の度合いを表します。そして横軸が「地域的な拡大の度合い」であり、汎用性の拡大を表します。

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 まず図の縦軸から説明します。信用がどうやって外部化してきたのかということを示したステップです。

 最初は、信用は外部化しない形、つまりみんなによる持ち寄りの時代でした。原始的な共同体においては、生産物は個人ではなく集団の持ち物だったのです。ここでは「贈与」という価値観もないままに消費される段階です。共同体の最小単位である家族内においても価値の交換は行われません。家族全体でシェアされ、それがゆえに構成員は安心と信頼を得るのです。

 その前提として婚姻制度を中心とした共同体を規定する仕組みがありました。人類20万年の歴史の中で、多くが贈与経済を用いた部族間の交換であり、一方が何かを贈与すると、それに対して返礼する。それが延々と繰り返されるという形でモノやサービス(財という)の交換がなされていました。

 次に信用が一部、外部化され、個人間の取引になります。ここでは、会計の仕組みによって個々人が互いの取引を記帳することによって、財(モノやサービス)の交換を行いました。この段階においては、個人間の信用関係を基礎としています。

 次の段階として、兌換(だかん)通貨の発行、金(きん)に換えられる通貨の発行です。貴金属などとの交換を前提として、信用を持ち運ぶことができる形態に変化した段階です。

 そしてその次の段階は、不換通貨の発行です。信用の前提を貴金属などに置くのではなく、その信用を権威つまり、王権や政府に置くものであり、現代の貨幣はここにあたります。 単なる交換から、貸借になり、そのうちみんなが欲しがる財が通貨となり、それに信用が集中していきます。そこから貴金属等に信用母体が変化し、その後王様がお金を定義するという流れです。

信用の範囲の拡大における貨幣の量的変化

 次は横軸のお金の適用範囲の拡大、つまり社会的・地域的な拡大の変化を見てみましょう。

 こちらは共同体内、国家内、国家間そして無国籍(グローバル)に整理することができます。本来は、共同体を超えた取引は、価値基準に関して合意することは難しいのですが、価値流通においてお金が用いられる場合は、その強制的な拡大が可能です。それは、お金が数字によって表現されているからなのだと思います。

 お金はこの二軸で発展してきました。最初にわかりやすく理解してもらうために簡単にお金の歴史を述べましたが、ここではもう少し詳しく書いてみたいと思います。

 最初、原始共産制があり、そして記帳が増える、その記帳がグローバルに展開していき商人の取引が大きくなり、そして現代のロスチャイルドのように5人の息子のうち4人を他国に送り、5カ所で銀行業を発展させたグループが現れ、ネットワーク取引という時代がありました。

 すでに一四世紀半ばには、トスカーナ、ジェノバ、バルセロナなどの都市国家では、小切手などの借用書による支払いが一般的になりつつありました。現存する最古の小切手は、フィレンツェの貴族階級であるトルナクィンチ家が銀行家のカステリャーニ家に振り出した1368年の小切手です。

 16世紀半ばには、ヨーロッパを中心に国際商人の私的なネットワークによって商業取引の国際化が行われてきました。各国において使用範囲が限定され、王権によって管理されるソブリンマネー(sovereign は独立国家、主権者)を超えて新しい商業経済を成長させるために、ヨーロッパの国際商人は階層型の信用体系を創りだしたのです。

 国際商人は、四半期ごとに大商会の一団がリヨンの大市に集まって、帳簿を精算するようになりました。大市の最初の2日間は大量の売買が行われ、新しい勘定の記入のため、古い勘定の整理が行われました。

 2日目の終わりに四半期分の帳簿を締め、商会間の残高を照合し、3日目に、為替銀行業者だけが集まって「コント」を作成する。コントは貿易金融システム全体の軸になっていて国際商人ネットワークと彼らの用いた帳簿精算システムによって大規模な商取引が可能となったのです。

 やがて、商業と政治の融和の結果として17世紀に登場したのが中央銀行制度です。最初の中央銀行は、イングランド銀行であり、ウィリアム・パターソンの発案で1694年に設立され、1709年には、イギリス国内での銀行券の発行を事実上独占する権利を与えられました。

 これによって国際商人のプライベートネットワークとソブリン通貨の融合が実現しました。

 現代の経済取引システムは中央銀行を中心とした信用管理のもと行われている基本的には不換通貨です。現代の貨幣は、貨幣価値は流動的なものだということです。1円の価値は日本国内では突然下がったりすることはありませんが、外国の貨幣との交換価格である為替レートは日ごとに変わります。政府と中央銀行の権威と信頼の薄氷の上に漂う不安定な存在となっています。

 国全体に流通しているお金の大部分は、物理的な実体を持っていないのです。例えば、アメリカの場合は約90%、イギリスの場合は97%、物理的な実体がまったくありません。それにもかかわらず、世界の多くの国がこの貨幣による取引を前提とした資本主義を採用し、すべてがたがいに影響しあう世界が形成されているという不思議な世界になりました。

 そして今、新たに現れてきているのが仮想通貨です。

 これは質と量の観点で見ると、不換通貨でありながら、無国籍通貨ということです。図の一番右上の最終段階です。

 まだ萌芽段階であるもののビットコイン(Bitcoin)等をはじめとするブロックチェーンを用いたアルゴリズム通貨・代替通貨などの存在感は、政府の信用管理の限界とその結果生まれる好不況のサイクルが徐々に短くなる事態によって年々大きくなっています。

 これら無国籍通貨を、一定の期間で膨張と暴落を繰り返す法定通貨のリスクをヘッジする代替通貨としてみなす人々も現れています。

 コンピューターのアルゴリズムの強度を信用保全の前提とするこれらの無国籍通貨は、国家の通貨と異なり、その発行に限度なく、その本質においてなんら財としての価値や信用の前提を持たないという点においてこれまでの貨幣とは性質が異なります。

 これらの通貨の存立の前提はその流動性にあります。際限なく発行されるアルゴリズム通貨はいずれもっとも流動性・流通性の強いものに集約されます。ですが最終的に残りうるいずれの通貨もその信用の前提の欠如および高度な流動性が生み出す投機的動機によって破綻する不安定さを常に抱えています。

 それでも人々はこの曖昧な信用を前提とした通貨群をその流通性ゆえにおびえながらも一般生活の経済活動において採用せざるを得ない状況にあります。

 これが貨幣の進化のまとめです。ちょっと難しかったでしょうか。

 次回はお金を4つの要素に分け、それぞれの課題を見ていきましょう。

本文:山口揚平(「新しい時代のお金の教科書」)

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編集後記

信用の外部化と地域的な拡大でお金は変遷してきた。」というのが今回のメッセージです。

では、もっとも外部化され、もっとも地域的に拡大している仮想通貨が、永久的に通貨の機能を果たさないと考えるのはなぜなのでしょうか?

仮想通貨とは、ネットワークの信用性に由来する通貨です。これはすなわち、どこにも信用の母体がないことを表します。

そして仮想通貨は、国とは違いいくらでも発行でき、これらの通貨の価値は流動性(=使っている人が多く、いろいろなところで使える度合い)で決まります。そして、その高い流動性から、価値が上昇していき投機的に仮想通貨を使う人が増えていきます。

投機的に使われた仮想通貨は、不安定になり、信用の母体を持たないため、通貨としての安定性がなく、最終的に2,3の仮想通貨のみになり、やがて消失するという考え方です。

今日も読んでくださってありがとうございます。TVなどでも話題になっている仮想通貨、「〇〇の儲け方」という情報が出回ったら儲からないようなものだと言われていますが…果たして、どうなるのでしょう?

(編集後記:大西芽衣)

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