#13 ”憧れと共感”で稼ぐ時代
「新しい時代のお金の教科書」が1話無料で読めるマガジン。前回は「社会はタテからヨコへと変化している」という話でした。
今回は、社会構造の変化を見ていきます。編集秘話では、この度重版がかかったこともあり、「本の出版、実際どうだった?」ということについて赤裸々に綴ってみます。
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”女”が”男”より稼ぐ時代
資本主義社会とネットワーク社会についてまとめます。
ご覧の通り、「タテ」と「ヨコ」では何もかもが違うのです。
「タテ」だった頃は円錐形だったものが、だんだんと円状に変化していきます。そして、ネットワーク社会ではハブ人材(インフルエンサー)が圧倒的な影響力を持つようになるのです。
今、東京の中心ではお金を稼ぐことに関しては完全に女性のほうが上になっています。男性の稼ぎ方はタテ社会(支配と依存)×ロジックですが、女性はヨコ社会(憧れと共感)×感性です。タテ社会は崩壊しつつあり、ロジックはAIに負ける。したがって男子的能力では稼げない時代になっています。
ヨコ社会の欲求の変化
人々の基本的な欲求構造が生存欲求から承認欲求、創造欲求へとシフトすれば、それに応じて当然社会システムも進化します。いまや生存欲求は脳に刷り込まれた習慣であり、本能ではありません。人は本能的に社会的欲求を求めている段階です。それはヨコ社会が主役になるということなのです。
お金(数字)という言語が有効なのは、衣(医)食住を満たす領域においてです。なぜならそれらは必需品であり、一つ一つの製品・サービスに独自性を求められないからです。しかし、承認欲求の段階では、それを満たすためには、常に文脈(つながり・物語)が求められ、それはお金では買えないのです。
幸福の本質は「一体性」にあります。周りの人や自分の期待値との一体性です。幸福とは解釈から生まれます。つまり何があるかではなく、自分がどう思うかだということです。
友達の数で寿命は決まると言われています。
寿命を決めるのはタバコや酒ではないのです。要するに社会参加した方が健康にいいし、職を持っていたりネットワークを持っていた方が健康にいいよ、ということです。
コミュニティの変遷
ネットワーク社会内でのコミュニティは今までどのように変容していくのでしょうか。
図を見てください。
1990年までの断絶の時代、2000年の遍在・オープンな時代を経て、これからは一人の人間が多層的なコミュニティにそれぞれが所属する時代になります。つまり、コミュニティ・ポートフォリオを持つということが必要になってきます。
1990年代までは断絶した国家があったのですが、Windows時代の過渡期を経て、2000年以降のGoogleの時代は企業によってあらゆるものがつながっていき、情報も人も偏在していました。その後2010年からは、Facebookがやってきて今度は仲間分けが起こっていき、そこから新しいコミュニティができてきました。
そして今ではある程度コミュニティ分けが終了していますので、これからはコミュニティを支える仕組みや規範が必要になってきます。つまり今からは、福祉や教育、通貨などインフラの整備の時代に入っていくのです。
この多層的なコミュニティのある時代で何が必要かというと、業界の中にいることではなく、業界と業界の間にいることで価値がでてきます。
ビジネス業界とそれ以外の業界の間に価値があるのです。
例えはベストセラーになった小説『もしドラ』(『もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーの『マネジメント』を読んだら』岩崎夏海 ダイヤモンド社)も、そうです。ドラッカーとアニメ業界にまたがっています。今後、いろいろな業界の間に立っている、すなわち、インターメディエイトな(業界横断な)人が尊ばれ、価値を生みやすくなります。21世紀の貨幣は、ネットワークと信用の掛け算で決まります。
ネットワーク社会というのは貨幣の原理が通用しなくなるというのが本質です。「お金」などの今までのメディアでは業界間で文脈が伝わらず、信用の蓄積が困難でした。しかし今後は、時間を共有する方向に流れていくため、グローバルの中にネットワークを作っていくことが重要になります。
〈第三章のまとめ〉
この章では、お金に大きな影響を与えている四つの大きな変化について見ていきました。国家に関しては、国力の低下によって信用の母体が国家から個人へと変化し、技術に関しては、ブロックチェーンによって個人の取引と信用が記帳されるようになります。そして経済は、人々の欲求が生存欲求から社会的欲求に変化することで財の形態がモノからコトへと変化していくことについて述べました。社会は、タテ社会からヨコ社会へと変化しつつあります。
必要なのはタテ社会(貨幣・権威)と、ヨコ社会(信用・ネットワーク)を両立させて生きてゆく術を身に付けることです。両者を決して融合して生活してはいけません。例えばタテ社会の大企業相手に契約や報酬を怠ってはならないし、ヨコ社会において安易に信用をお金に換えてはならないということです。二つの世界は別モノとして隔離して適応してゆく術を学びましょう。
またクラウドファンディングをはじめ、これだけ信用を自由にお金に換えられるマネタイズツールが浸透し、手軽に使えるようになると、お金を貯めるのでなく、社会的信用を貯める方が有効だと誰でもわかります。なぜなら信用のATMからお金を引き出すことはできても、お金で信用を創ることはできないからです。信用→お金は簡単になりますが、逆はありません。
21世紀、何が面白いかといえば、それは人々が欲しがるものが、モノではなく承認(社会的信用)に移ってしまい、承認はお金で直接は買えないということであり、そしてこの承認は、すぐにお金に換えられるということです。お金でもちろんモノは買えます。しかし賢い人は、このお金をうまくつかってまた新たな信用を創り出すのです。
(本文: 山口揚平「新しい時代のお金の教科書」)
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<編集後記>
今回のメッセージは「社会はタテからヨコへと変化している」でした。
今回もここまでお読みいただきありがとうございます!次回は、3/12「お金のなくなる日」についてです。
編集秘話では「本の出版。実際どうだった?」についてお話しします。出版に関わってみてわかった、①売れる本ができるまで、②出版業界の今後、③そして山口揚平の次回作について書きました…
さて、12/6に出版された山口揚平の書籍「新しい時代のお金の教科書」。
この本は、東京大学大学院社会情報学の修士論文(2016)をベースに、筑摩書房の編集者鶴見さん、著者である山口揚平、そして山口の会社でアソシエイトをしています私で制作されました。
本の執筆の補助をするのは、今回で初めてだったのですが、学ぶことが本当に多かったです。
まずは売れる本はどう作られるのか?ということについて。素人の私にとっては「いい内容であれば、売れるでしょ。」と安易な感じだったのですが。
「本が売れるかどうかは、1/3 マーケティング、1/3 内容、1/3 流通(出版社)で決まる。」というのが通説(?)なのだそう。
同時期に出し、類似した内容の「お金 2.0」は爆発的にヒットしたのに対し、山口の書籍は、”知る人ぞ知る”名著(濁してみた笑)になったのは、このマーケティングと流通に違いがあるという考察もできますね。
「お金2.0」はnewspicksと幻冬舎のコラボであるpewspicks bookから発売されました。と言うことは、newspicksアカデミアの会員や編集者の箕輪さんのオンラインコミュニティのメンバーからのレビューが集まり、SNSで拡散されることで、”売れている状態”が作られる。
一方、私たちはというと定型のコミュニティがない中で、筑摩書房や山口にも毎回負担をかけて広報をお願いしている状況を見て、「素晴らしい内容なのに、売れにくい。読んでもらえない。」という状態がとても悔しかったです。この経験から、山口揚平自身に注目し、応援してくれるファン層を育てていかないとと思いました。
そして出版業界の大きなトレンドは、と言うと「本を売る時代から、本というコンテンツを入り口にコミュニティに課金する時代へ」です。
例えば、宇宙兄弟。この作品は漫画から始まりましたが、ビジネス書や、ウエディングの会場などへと派生しています。
今まで読者が書店に行き、気になった本を手に取り買うという、本が最終目的地だった状態から、本自体や著者にコミュニティができ、そのコミュニティに対して提供されるサービスを提供する、という本が出発点となる状態へと変化しているということなのです。
編集者も本そのものを編集するというところから、本の読者や著者のファン、著者によって生まれるコミュニティの文脈を編集する時代へと変化しています。
そしてこの時代に。山口は次回、どんな本を出すのか、というと。
思考論です。思考とは、山口揚平が生まれてからずっと大切に育ててきた天才性そのもの。今までの本は、企業分析・事業創造・貨幣論など、山口が考えた結果を出してきたものでしたが、考えるというプロセスそのものを公開し本にする。
「これが世の中に受け入れられなければ、なんというか…僕の存在自体が必要がないということになってしまうね…」と山口とも話しています。
世の中に広く受け入れられ、山口揚平の天才性が読者の生活をより豊かにできる本に仕上げたい、と思っています。
ちなみに、売れる本の特徴は「8割が既知の情報で共感できるもの。残りの2割は新しい発見を。」というのが定石なのだそう。
今回のお金の本は、山口揚平の考えていることのほぼ100%を出したので…次回は少し薄めて、出そうと思います。
(編集後記: 大西芽衣 )
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