みんなと私の『動機づけ面接』ーークライエントとの同行二人指南(24) 『技法のポケット』
「動機づけ面接のコツは?」
動機づけ面接が難しいとよく耳にする。技法の中では簡単に学べるほうのものなんだけどな……なんて言ってもしかたない。長く学んだ人でもうまくいかないことが多く、みんな日々唸っているのが現実なのだ。そこで今日は動機づけ面接の基本的なことを踏まえた人のために、さらにそこからうまく面接をするためのヒントを考えたいと思う。
まず「動機づけ面接」という面接技法がうまくいかないということはどういうことか。つい直面化をして、クライエントが反発してしまう。これは初歩中の初歩の失敗で、多くのベテランはこんなところでつまづいてはいない。あたたかみのある面接をしていていても、「動機」を引き出せずに困っている。
よくあるつまづきのひとつは、やはり「チェンジトークが引き出せない」というものだ。働きかけなければなかなか増えないし、じゃますると減ってしまう。もしたまたまであれクライエントの口から出てきたら「キターー!」と飛びつくのが大事なあの「チェンジトーク」を、引き出して増幅できないということだ。
言い換えればこれは「選択的強化」のことだ。上手な選択的強化に至らない。
ただ「選択的強化」も動機づけ面接の基本を学んだ人はだれでも知っている。知ってはいるができない。「チェンジトークを拾いさえすればよい」なんて、絵に描いた餅のように思えるときがある。
しっかりとしたチェンジトークが聞こえないと…
ここでチェンジトークとはなにかおさらいをしておくと
「すべての」というところががポイントだ。「タバコをやめようと思います」というわかりやすいものばかりがチェンジトークではない。そういうものしか拾えないと、「タバコをやめる気はまったくありません」と言うクライエントに当たって詰む。あらゆる言葉の中に潜むチェンジトーク、両価性を見出すことが必要である。
すると「表立って聞こえないチェンジトーク」を聴くことが、動機づけ面接の「コツ」に加わりそうだ。両価性を考えるところから動機づけ面接は始まるのであり、耳には「維持トーク」ばかりが聞こえても私たちはまず「この人にも両価性はあるはずだ!」とイメージすることで、聞こえなかったチェンジトークさえ聞けるようになるかもしれない。
ただこれは、「ちょっとしたコツ」には加えがたい。
「タバコをやめる気はまったくありません」という人に「そうは言ってもやめようと思っている」なんて聞き返しをしたら「やめる気はまったくないって言っただろう。話を聞いてねえのか、この野郎!」という反応が返ってくるに違いない。型にはまったコミュニケーションはステレオタイプな直面かよりも人を馬鹿にしている。
そこで、もう少し簡単な処方箋を考えてみよう。
チェンジトークを引き出す言葉
「チェンジトークはとりあえずない」というところから出発する。すると「ないものは引き出せばいいじゃない」である。これはひとつの大きなテーマなのだが、今回はてっとりばやい技法を述べておきたいので、チェンジトークをを引き出す「まほうのことば」集というものを作ってみた。本当は魔法なんて言葉はよろしくないかもしれずただのアンチョコなのではあるが、娘の生活科の教科書を読んでいるうちに明日の勉強会のテーマが浮かび、なんか真似してみたのである。
以下のセリフを実際の面接で、とにかくなんか使ってみるというのはどうだろう? 勉強会では、面接中に第三者がこのような言葉を投げ入れたら、カウンセラー役は無理矢理にでもこの言葉を使うという、遊び心のある演習を通して、面接で使う言葉を広げるということをやってみるつもりである。
ぜひ活用していただきたい。
Ver 1.0 2024/4/18
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