#プレイリストをさらし合おう カセットの時代なら収まらないやつになった
プレイリストその1 『マタイ受難曲』 J・S・バッハ
BGMをかける習慣がない。だが世の中には、音楽をかけて作業をする人たちが一定数おり、なんなら大半であったりして、仕事場で音楽をかけることが市民権を得ていたりする。
はっきりいってこれ、邪魔なのである。集中を妨げる。
バスで皆と長距離を移動する仕事をしていたとき、車内にはいつも音楽がかけられていた。手術場で働いていたときも、当然のようにBGMが流れていた。大抵は流行りの歌謡曲である。私はそういうのを楽しまない。
音楽についてはごく限られた好みのものを、ついでではなく真剣に聴くタイプである。自分の好きな曲を他人も聴く、などという発想も毛頭ない。
ところが世の中の人は、他人の好きな曲を聴けるらしい。というか、歌謡曲を広くなんでも聴いて楽しんでしまうようなのだ。
解せん。HEY!HEY!HEY! ではダウンタウンのトークしか必要としなかった人間は、どうやら周りとは分かり合えないようである。
仕事中、そんな最大公約数的に楽しまれる曲を聴かされ、苦痛であった。だがだれも文句を言わぬどころかそれを望んでいる空気がある以上、「音楽なんて要りませんよね?」と言っても同意が得られるわけはない。「え?」とか言われ、なに言っちゃってんの?この人かわいそう、とかいう目で見られることは必至なのである。
そんな私に、車中で曲をかけるチャンスが巡ってきたことがある。たまたまその日私がCDを購入したものだから、「それ、かける?」と提案されたのである。
ふふふ。しめた。
声楽が好きなのである。そもそも皆は運転中のBGMに、クラシックを選ばない。だが、世の中に歌謡曲以外の曲はあるのだ。車でそれを流すことが不可能なわけでもなければ禁じられているわけでもない。
私が曲をかける番なのだから、たっぷりと楽しませていただくことにした。皆はうんざりしていたが、私は普段ずっと苦しめられているのだ。CD3枚分とはいえ、1曲は1曲だ。
……そう思っていたが、運転手が根を上げた。やむなく、なら無音にしようということで手を打った。そのうちに運転手が眠いと言い出した。
再び歌謡曲が延々と流されることとなった。
「エリ・エリ・レマ・サバクタニ(主よ、主よ、なぜ私をお見捨てになったのですか)」とひそかに叫ぶ私であった。
プレイリストその2 『Tubular Bells』 マイク・オールドフィールド
私も車を乗り回すようになる。函館に住んでいた頃であった。
一人で運転する際は、ガンガンに音楽をかけた。
よく、音楽が外に漏れている車というのがある。ああいうのを心でひそかに軽蔑しておったものであったが、それは車を持たぬ者のひがみでしかなかった。かく言う私が車を持ったとき、カーステレオをガンガンにかけまくったのだから。
なんかその頃は、やってられなかったのである。暴走はしない代わりに、音楽でもかけて頭を吹き飛ばさなければならなかったのである。『Tubular Bells』の1回ごとに入れ変わる変則な拍子は、一瞬で空間を異次元に吹き飛ばす威力を持っていた。
この曲は言わずと知れた、映画『エクソシスト』に採用された曲である。映画では最初のほうとエンディングに使われているが、実は途中で、曲の真ん中あたりの部分が使われていることに気づいている人は少ないだろう。
『Tubular Bells』は『エクソシスト』のために作られた曲でもなければ、悪魔払いともなんの関係もない(とは言っても、後に『Tubular X』という、『Xファイル』とのタイアップで作られた曲があるから、オカルトとまったく関係がなくもないのだが)。
元はとても長い曲なのだが、その冒頭部分が怖いテイストになっている。『エクソシスト』の監督が、作曲家の作ってきた映画用のテーマ曲の出来の悪さに業を煮やし、『Tubular Bells』をそのまま採用することにしたという。
映画では途中までしか流れず、先が気になってしまうが、ずっと聴いているとさほど怖くもなくなり、幻想的な調べとなる。
とにかくかっこいい。だから私は、女の子を助手席に乗っけたときにもこの曲をかけた。すると
「なんか怖い」
と言われてしまったのである。
「え? かっこいいじゃなくて?」
動揺する私をよそに、なんか理由をつけて女の子は退散してしまった。たぶん、悪霊だったのだろう。
一人車に取り残された私は『Tubular Bells』でも足りず、CDを相川七瀬のアルバムに変え、街中に Bang! Bang! Bang! Bang! したのであった。
プレイリストその3 『MEIN KAMPF』 アドルフ・ヒトラー
持っているのである。
どこで手に入れたかも忘れてしまった。海外で買ったような。
Amazonのレビューが1つもない。
ま、これ、コメントしづらいよね。どうい需要があるのかも判らない。ドイツ本国では発売できないと思うし。(『我が闘争』は長らく法律で出版が禁止となっていた)
ヒトラーについて述べた書籍というものは非常にたくさんある。私もその手のものを、高校生の頃から読みあさっている。
その理由は、『クトゥルフの呼び声』というTRPGのシナリオを作るため、であった。
しばらくそういったものからも離れていたが、最近、YouTubeの配信のため、クトゥルフ神話のオリジナル小説を書くことになった。
(ま、ナチス・ドイツの時代の話にはしないかな)
っていうか、このCD、音楽じゃなくて朗読だし。
っていうか、この企画が想定していたのは、もっと短い曲のリストだよね?
どれも、めっちゃ長いものになってしまったな。