【ショートショート】 「ロイド」
アナウンサー、歌手。そういったものは、完全にAIが人間の代わりをする時代になってしまった。
もう人間では勝ちようがなかった。というのは、初期のAIは個性がなかったしその後次々と色々な声が量産されたものの、その後はごく稀に個性的な声が作り上げられるようになってしまったのだ。つまり、人間の飽きるタイミングまでをAIが計算して、適切なタイミングでクセのあるキャラクターが作られるようになってしまったのである。
AIに正確性で勝てないのではない。人間味で人間が敵わなくなってしまったのだ。
だがそこに、エイミンという歌手が出現した。
実はエイミンは、AIではなかった。ボーカロイドを真似た、ボーカロイドロイド。つまり人間であったのだ。
そこそこファンがついた。みな、AIだと信じていた。AIにしてはファンの数が少ないという指摘もあったが、「ファンの数をコントロールするのも次のAIの戦略なんだろう」と人々に思われるようになったのである。
そのエイミンに、熱烈なファンの愛という子がいた。
エイミンはふと気づいた。
「あれ?」
ファンは人間じゃなかったりして、とエイミンは思うのであった。
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