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Photo by
tai_yuka
【ショートショート】 『無人島生活福袋』
「無人島…」
来た!「無人島にひとつだけ持っていけるなら何?」は想定の質問だ。
ならライターと答えるのはサバイバルの常識だ。この質問はもらった。
そう思っていたが、『アジ経出版』の面接に来た学生は愕然とした。
「…で一ヶ月研修をするのでひとつ福袋を選んでください。どの店のにしますか」
「ええ? ええっと薬のカメヤかな…」
「つまらんね」
「まじめなようですから『月刊医療』の下働きはどうです?」
研修の話は嘘だ。学生が何に価値を置くかを知る質問であったのだ。
次の学生が来た。
「地元の名物商店『要塞』の福袋一択です。衣服、娯楽品、災害グッズの入った福袋目当てに毎年行列ができまして」
「ほう」
「面白かったですね」
「今調べたが『要塞』なんて店はないなあ」
「ええ?」
「さては『採用』を逆にしたか」
人事課長は「広報課に採用」と記載した。
「ああ、広告誌にショートショートでも書かせますか」
「いや、機転がきくから謝罪会見で前に立たせる」