Jリーグ
野球が嫌いなので、Jリーグができて日本にサッカー文化が広まる兆しを見せたときは嬉しかった。
思えばあの頃、スポーツといえば野球一色であった。ナイトゲームのせいで、よくテレビ番組がつぶれていた。たいてい延長になるから9時以降の番組に影響し、ビデオ録画が大きく狂う弊害もあった。ダウンタウンの『ごっつええ感じ』が急遽野球に差し替えられたことがあり、怒った松本人志が番組を終わらせる、なんて騒動があったこともある。
「野球だからいいじゃないか」「野球だからしかたがない」がまかり通っていた時代である。
だが私は野球を嫌いつづけた。理由はいくつもあるが、間延びするというのがそのひとつである。過程がデジタルなのだ。表と裏が入れ替わる。ピッチャーは第1球、第2球と投げる。ストライクやボールもカウントされる。1塁、2塁、3塁、ホームがある。各ターンをつなぐ間が長く、選手たちが動く時間よりは止まっている時間のほうが多い。
私は昨日格闘技を観に行ったのだが、こちらはインターバルを意図的に取り入れないと選手の息が持たないくらいに、常に動きっぱなしである。それは応援も同様である。終始歓声が湧き、落ち着く暇がない。盛り上がりかたが違う。
サッカーも同じだ。敵味方に対称性があり、PK以外はひとつのボールを巡って双方が常時同じ条件で戦っている。間延びがない。
これぞ国際的スポーツだ。Jリーグ万歳! 野球文化をぶっとばせ!
野球で気に入らなかったのはプロ野球だけではない。高校野球もそうだ。無駄な坊主頭の連中が、無駄にストイックに振る舞うのが時代錯誤的で本当に気に入らない。
ところがJリーグ選手たちは、茶髪で登場した。当初は、旧い考えの連中が根拠もなくそれを「日本の恥」などと批判していた。実力があるなら髪型をどうしようがとやかく言われる必要はあるまい、と思うのだが。個人的な意見だが、髪を染める人のほうがよい動きをするように思う。ファッションにまで気が回る積極性は、戦いかたにも及ぶのではないか。
Jリーグ選手たちは髪を染める文化を日本に広めた。それが言い過ぎなら、少なくとも加速させた。今では信じられないかもしれないが、それ以前は 髪を染めること=不良 ということをかり良識のありそうな人でも言っていた。そんな発言をしても責められない恐ろしい時代であったのである。
(かく言う私も、下っ端として実力がないにも関わらずこっそり髪を染め、その色をじわりじわりと濃くしていったのを覚えている。帽子をかぶる職場であったからバレずに逃げ切れるかと思ったが、しっかりバレていた)
サッカー人気が上がるとともに、野球の人気は確実に下がっていった。プロ野球選手の子供でさえサッカー選手を目指すようになり、中島くんはカツオに「磯野、サッカーしようぜ」と言うようになり、ナイトゲームは必ずしも地上波で放送されなくなるのである。これはもう、革命なのであった。すごいぞJリーグ!
さて、Jリーグの実力だが、当初世界戦ではなかなか勝利を得られなかった。それを惜しがる人が多かったし選手たちに「もっとしっかりしろ」ととやかく言う人もが多かった。頑張れば勝てるという期待があったからだろう。だが、だれもあの当時言わなかったが、日本のサッカーは始まったばかりであり、世界と争うような実力には程遠かったのでは、と私は思う。
やがて日本のサッカーも成熟し、世界でそれなりの成績を出せるようになってきた、という印象である。
サッカー人気が日本で盛り上がり、実力もつけ、やったやった、サッカー万歳! ということになりそうなのだが…
今は、いっときよりもサッカー熱は高くないような気がするのは私だけだろうか?
私も結局そんなにサッカーに興じてはいない。WBCなんてのも結構注目されているし、新庄監督率いる日本ハムファイターズの試合などは、私でもけっこう気になってしまうのである。
そもそも私は、サッカーが嫌いではなかったが、好きでもないのであった。
私の髪も、すっかり黒髪に戻ってしまった。