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【詩】 大人たち

「大人」と呼ばれる存在を

まだずっと遠い 空の上のもののように

思っていたとき

それは全てにおいての見本であり

規範であり 確固とした基盤だった

いつかその「大人」というものになれば

抱えている問題のほとんどは解決すると

何があってもびくともしない 怖いもの無しになれると

漠然と信じていた

けれどいま その「大人」と呼ばれる存在になってみて

決してそうではないことに気づいた

抱えてきた問題は何ひとつ解決せず

むしろ いや増し こじれている

かつて仰ぎ見た 見本であり規範であり基盤だった大人たちも

思ったほど確固としたものでないと気づいた時には

慄然とした


ぼんやりと憧れた「不惑」という言葉がいまは

ただただ面映ゆい

けれど ようやく

そろそろ地に足をつける時期であることだけは悟りつつ

裸の足の長い指で

おずおずと地面を掴み、

踏みしめ始めている

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