見出し画像

静寂のオフィスで電話をかける恐怖

シーンと静まり返ったオフィス。


皆が黙々とパソコンに向かう中、

私だけが電話をかけなければならない

瞬間が訪れる。

この静寂を切り裂くのは、

私の、

震える声だ。


それはまるで、

公開処刑。


周りの視線が、

まるで処刑台への階段のように、

私に重くのしかかる。


先日、

取引先への納品スケジュールの調整で、

先方の担当者に

電話をかける必要があった。


通常業務の一環なのに、

その日はいつも以上に

緊張している自分がいた。


深呼吸をして、

意を決してダイヤルを押す。


しかし、

受話器から聞こえる呼び出し音は、

私の鼓動と共鳴し、

不安を増幅させるだけだった。


やっとのことで相手が出たものの、

私の声は緊張で上ずり、

肝心なところで言葉が詰まる。


「えっと…あの…その…」

情けない言葉ばかりが口から漏れ、

納期の件で先方の都合を聞き取るだけで、

しどろもどろになり、

いつも以上に時間を使ってしまった気がする。


電話を切った後、

どっと押し寄せる自己嫌悪。


周りの同僚は、

何も言わずに

黙々とパソコンに向かっている。


その無言が、

かえって私の失態を

際立たせているように感じた。

きっと、私と同じように、

静かなオフィスで

電話をかけることに

恐怖を感じている人は

少なくないはずだ。


社交不安障害やあがり症で悩む人なら、

この気持ち、

分かってくれるのではないだろうか。


でも、

いつまでも

逃げてばかりではいられない。


電話をかけるたびに

「また失敗するかも」

と不安になるのは、

過去の失敗に

囚われているからかもしれない。

だから、失敗を恐れず、

電話対応を一つ一つ、

丁寧にこなしていきたい。


失敗したら、

その原因を分析し、

次はどうすればうまくいくのか

を考える。


そうやって、

小さな成功体験を積み重ねていけば、

きっとこの恐怖を克服できるはずだ。

私は、

そう信じている。


いいなと思ったら応援しよう!