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solo_andata
ありがとう シロクマ文芸部
ありがとう
朝日が昇ると、森が合唱しました。
お陰で私たちは豊かな木々を育むことができます。
ありがとう
蟻が言った。
あなたが森を見守ってくれるお陰で、僕たちは木の側に巣をつくることができました。
ありがとう
ミミズが言いました。
蟻たちが巣を作ってくれたお陰で、僕たちは土の中で食事をとることができます。
ありがとう
黄色い野菜も、緑の野菜も、赤い野菜も、大きな野菜も、小さな野菜も、ミミズのお陰で大きくなることができたって。
ありがとう
川の中ではそよぐ川藻がお陰で根を張ることができている、と。
ありがとう
小さな魚が川藻のお陰で、僕たちは卵をうむことができたと。
ありがとう
小さな魚たちのお陰で、大きな魚たちは飢えずに済んでいると。
ありがとう
草原では草たちが、すくすく育つことができることを感謝していますと。
ありがとう
牛たちは草が育ったことで健やかでいられると。
大きなトラックがたくさんやってきました。
ありがとう。
あなたの遺産のお陰で僕たちは動くことができる、と。
市場には黄色い野菜と、緑の野菜と、赤い野菜と、小さい魚と大きな魚と、牛肉が並びました。
市場の屋根のソーラーパネルには太陽の光が惜しみなく降り注ぎます。
でも人は市場の屋根の下で、お金の話ばかりをして「ありがとう」とは決して言いません。
お日さまは、そこにあるのがあたりまえだと思っているからです。
おしまい
600字少々
小牧部長さま
今週もよろしくお願いいたします。