沈む寺 毎週ショートショートnote
京都観光 【410字】
「行く行く」大きな声で同意してきた君。いったいどこに魅力を感じたんだろう。
「なんか楽しそうじゃない?」
そんなお追従まで言ってきた。
むやみに観光地を巡るのもおもしろくない。せっかく京都にやってきたんだ。限りある時間で、最大の効果を上げたい。
ということでバスの終点からのルートを考えてみた。
錦林車庫、ここから北に哲学の道、法然院、銀閣寺、反対に南を向けば永観堂から南禅寺まで行ける。それから大覚寺、ここから清涼寺、二尊院、嵐山のメインストリートを通って天龍寺、渡月橋を渡って法輪寺まで行ける。
さて、まずはどっちに行く?
「沈む寺で決まりっしょ」
「そんなこと言ってないよ」
「言ったよ。最初に」
「ああ、すず虫寺か。ちょっと早口になり過ぎた」
「なーんだ、すず虫寺か」
「すず虫って共食いするらしいよ。運が良ければ見られるかも」
「ほんと?」
人というのは兎角他人の不幸が好きとみえる。なんでも蜜の味らしい。すず虫は蜜の味なのかもしれない。
了
たらはかにさま
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