色見本帖 三羽さんの企画
憧憬色(しょうけいしょく)
当然色を持たない「憧憬(あこがれ)」という概念。この抽象にどのような色を与えうるだろうか。
憧れは月に似ている。
どこかよそよそしく、また同時に体温を感じられるほどに近しくもある。ふと見上げた空にそれはあって、冷たい顔でちょっと笑っていたりする。
それは踏み込まないやさしさなのだろうか。そのくせ眩しいほどの視線を感じることだってある。
また打ち寄せる波にも似ている。憧れの思いの丈は打ち寄せたり、引いたりの繰り返し。押せば引かれ、引けば追いかけてくる。
月が満ちた日の海は憧れの象徴と言っていいかもしれない。海に映え輝く月は幻影でありながら、あたかもそこにある美の象徴のように見える。
憧憬色とは未だ目にしたことのない月の裏側のような色なのだろう。
憧憬色はそんな一見曖昧なものでありながら、怪しい光を放ち常に私を惹きつけてやまない。
了
三羽さん
よろしくお願いいたします