それでも地球は曲がっている 毎週ショートショートnote
惑星探査 【410字*含まず】
地球への帰還予定は一時間後に迫っていた。もう酸素が足りない。
比較的近傍の恒星オリオン座*ベテルギウスの惑星探査は無事に終わった。やはり*ハビタブル惑星は存在しないという観測が正しいことが証明された形となってしまった。
そもそもベテルギウスは*赤色巨星、その挙動は安定していない。巨大化の一途を辿る恒星を巡る惑星に希望を託すなど愚の骨頂だ。
時間の制約を受けて*ワープしたのは地球大気圏のすぐ外側。地球の端から*太陽コロナが見えている。早く大気圏突入しなくては機体が焼かれる。
3秒後、大気圏へ。しかし姿勢制御*ジャイロは狂っていた。急遽ワープしたせいで、*地球の軌道を正確に捉えられていなかった。銀河の辺縁を回っている地球の、天の川銀河内の周回軌道誤差の調整がされていなかった。一万分の一の大気圏突入角度の誤差は距離が伸びるほど大きくなり、機体はAmazonの密林へと突っ込んだ。
なんの道標もないような暗い宇宙。それでも地球は曲がっている。
了
語句解説
*ベテルギウス:地球から550光年離れた赤い星。オリオン座を構成する星であり、冬の大三角の一点を成す星でもある
*ハビタブル惑星:人間が生存可能な惑星。
*赤色巨星:エネルギーを使い果たす直前の星の姿。大きく膨張して、やがて超新星爆発をするとみられる
*ワープ:未だ人間の科学技術が到達していない空間を飛び越える技術
*太陽コロナ:太陽の外側で燃えている炎 太陽表面よりも温度が高い
*ジャイロ:回転するものの軸は安定していることから、姿勢制御に用いられる。ここで言っているのはジャイロの誤作動ではなく、それを用いるコンピュータの誤作動である
*地球の軌道:地球は太陽の周りを回っている、これを公転という
また、地球は天の川銀河の外縁部を回っている。銀河の中心よりも移動距離は大きい。ベテルギウスとのその僅かなズレの調整がされていなかった
さらに、天の川銀河やアンドロメダ銀河の属するこの銀河団の中をも動いているし、銀河団もまた動いている。しかし今回の場合、地球とベテルギウスは同じ天の川銀河系内にあるため考慮する必要はない
たらはかにさま
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