ダイエットの呪い
よっぴの体重がちょっとずつ増えていっている。
以前のように長距離自転車で出かけることもなくなったし、新しい趣味が机の前から一歩も動かないやつ。
そして、芋けんぴのおいしさにハマり、ほぼ毎日食べている。しかも止まらない様子で「悪魔の食べ物」と呼んでいる。
以前あった25kgもの体重差は、よっぴの激痩せと私の微増により15kgとなったが、また25という数字が見えてきた。何のこだわりかわからないけど、なにはともあれ好きな人の体積が増えることは悪くない。
「もうええねん誰も見てへんし」とおじさん化が進んでいくのを、傍で見られるというのもいいものだ。ぽっこりしてきたお腹もかわいいし、178cmで71kgなのだからもっと増えてもいいくらい。
私にとってはおじさんになっても、かっこよすぎることに変わりはないのだけれど。
それに比べて、私はほぼ毎日体重のことに囚われている。
ちょっと自分でも異常なほどだとは思う。お前はタレントか?アイドルなのか?と問い詰めたい。
しかしここまで思う(追い詰められている)のも理由があってのこと。
私が一番太っていたのは、2002年、2017年。いずれも52kgくらいあった。
若いころはあまり気にしていなくて、食べたいものを食べていた。母はおそらく胃下垂、父も瘦せ型だったためか太ることはなかったが、大学生になり夜遊びするようにもなるとめきめき増えていった。
そんなときに男友達に言われたのが「お前はあと5kg痩せたら最高やのに」。
別に異性として意識している人ではなかったので、その言葉自体は気にならなかった、むしろ体重以外はええ感じなんやな、とすら思っていた。
ただしそこで一人目の彼氏に「もっと痩せてほしい」と言われたことを思い出し、そこから芋づる式に「自分が太っていることを実感する出来事」が脳内に浮かぶ。当時流行っていたヒステリックグラマーのデニムが履けなくて試着室で凍り付いたこと、体重が増えだしてから男性が私を見る目に変化があったこと…。
男性の目って本当に感情が出る。大好きな恋人をみるとき、セクシーなお姉さんをみるとき、その他大勢をみるとき、好みじゃない顔や体型の女性(いわゆる太っていたり不細工だったり)をみるとき。
太ったとき、その他大勢から太っている女性をみる目に変わっていることを実感した。
ちなみにこれは、まだメガネがおしゃれアイテムではなかった時代、コンタクトが壊れてやむなくメガネをかけたときにも感じた。
せめてその他大勢でありたいし、そのくらいのプライドはあったのにそれすら保てなくなっていることがショックだった。体質もあったのか、このときは働き始めたら勝手に体重は元に戻っていった。
2017年は、私史上最高に容姿の整った人と付き合っていた。付き合いだしてから油断したのか、一緒に食べまくっていたら見事に太り、下着姿になったときに「ろっか…ちょっとその体型やばいよ」と引きながら言われた。
他撮りの写真を見ても歴然。誰だこれ状態。
ここから私のスイッチが入った。「一生ダイエットに囚われる人生」のスタート。
怪しげなダイエットサプリを飲んだり、さすがに怖くなってカロリミットを規定以上にのんだり、「賢者の食卓」を買い漁ったり。
運動嫌いなのでとにかく食事制限とサプリに頼る。体重は減っていったが、全然満足できない。100gでも増えるのが怖かった。
2020年に帰阪して仕事が落ち着いてからは47~48kgをキープできるようになった。そしてよっぴと出会う。それからは無理なダイエットはせず、ジムに行ったり自宅でストレッチと筋トレをするようにしている。
もうあんなダイエット狂みたいな日々に戻るのが怖い、でも体重が増えることがもっと怖い。ただ昔ほどの強迫観念はない。
●男性から認められなくなるのが怖い
●同性からも蔑まれたくない
●太ったら恋人に捨てられる
から
●おしゃれしたい、好きな洋服を着たい
●身体が軽いと仕事も日常も楽で効率が良い
●よっぴに褒めてもらいたい
みたいなヘルシーなほうに変わってきた。
今はSNSを見ても痩せている人が非常に多い。
164cm、44kgの私が教えるダイエット法!みたいなのがゴロゴロしてるし、実際キラキラして映る。
でもそれが自己否定感や自己嫌悪につながってしまってはいけないよね。
…とは思いつつ、私もダイエットの呪いから出られずにいる。