ドラマ「first love 初恋」と宇多田ヒカルについて勝手に語る
満島ひかりさんと佐藤健さんが主演のNetflixオリジナルドラマ「初恋 first love」観ましたか?
私は観ました。
そのあまりの素晴らしさに、ガッチリ心を掴まれたうえ、ぐわんぐわん揺さぶられたのでここに感想を綴ってみることとします。
ネタバレはないものの、これから試聴予定の方は「多少の前情報は許容しちゃおう」くらいの心構えがあると嬉しいです。
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このドラマは、言わずもがな初恋のお話です。
丁寧に描かれる「晴道と也英の初恋」と、「綴の初恋」を視聴者は見守るわけです。
そして、このドラマは「過去」と「現在」のシーンが交錯しながら進みます。
最初「何が今で、何が過去?」とちょっと混乱するけど、すこし観進めるとすぐにその状況のアウトラインを掴むことができます。
繰り返し切り替わる過去と現在。
「過去の晴道と也英」と「現在の晴道と也英」の対比を繰り返しながら、それぞれの物語はすこしずつ進みます。
過去の晴道と也英の出会い、甘酸っぱい青春の日々と対比される、現在の彼らの姿。
独りで暮らしながらタクシードライバーとして働く也英と、婚約者がいながらどこか寂しげに警備員として働く晴道。
繰り返される「過去と現在の対比」は、時と運命の残酷さを伝えてきます。
その、残酷さに翻弄された彼らの寂しさや、葛藤や、苦しみが、彼らの人生を深みのあるものとして観る人の心を打ってくるのです、、。
普通の人には起こり得ないドラマならではの展開ももちろん、かなりあります。
それでも、このドラマを見た人はどこか「時と運命の残酷さ」に共感するのではないかなと思います。
大人なら誰にだって、大なり小なりありますよね。
「15の頃にはあんな別れを経験するとは思わなかった」「こんな大変な思いをするなんて思いもよらなかった」「自分はもっと違う生き方をすると思ってた」みたいな気持ちが、自分の中を探せばすこしくらいは見つかりませんか?
さらにこのドラマは、晴道と也英の人生を描きながら、視聴者が実際に経験してきた時代のピースを巧みに見せることで、私たちに自分の人生を思い起こさせます。
家族に邪魔されながら家の電話で恋人とかわす約束、タイタニックの映画、イラク戦争、東日本大地震、そして新型コロナウイルス。
時間や運命は残酷で、思い通りにならない日々を、いろんな感情と共に生きてきた。
だからこそ、人生は深く尊いなあという気持ちになりました。
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ここで、このドラマにさらなる奥行きを与えるのが宇多田ヒカルの存在です。
このドラマは、彼女の「first love」と「初恋」という2つの曲にインスパイアされて作られたそうな。
晴道と也英は、宇多田ヒカルと同い年の人物として描かれます。
彼らが15歳の時に作られた「first love」と、その19年後に発表された「初恋」。
ドラマ内で晴道と也英の過去と現在を対比させるように、同じ1つのテーマで作られたこの2曲は宇多田ヒカルの過去と現在を対比させていると言えます。
宇多田ヒカルは私の最も好きなアーティストで
、デビュー当時から欠かさず楽曲を聴いてきました。
宇多田ヒカルがお母さんを亡くした1年半後に私も父を亡くし、彼女が子どもを持った翌年に私も息子を産んだこともあって、大人になってからは一層、人生の感情を共にしたような特別な思いを一方的に抱いています。
15歳で鮮烈なデビューを果たしてから、19年。
宇多田ヒカルにとっても、この年月は残酷なものだったはず。
出会いと別れ、喪失と救いを経験しながら、彼女も喜怒哀楽という4文字では表せない、感情の機微を積み重ねてきたはずです。
「first love」では「明日の今頃にはあなたはどこにいるんだろう、誰を想ってるんだろう」という相手への想いを歌っているのに対し、
一貫して、初恋に対峙した自分の感情を表現している「初恋」。
1つのテーマについて書かれた2曲を対比すると、19年間、人生経験の中で自らの感情に向き合ってめちゃくちゃ深みを増した宇多田ヒカルの魅力が感じられると!思いませんか?
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妹の優雨の結婚式で、晴道は「どんな出会いも別れも、人生においては大切な1つのピース」だと語ります。
ドラマ内においても、小さな大切な1ピースが随所に散りばめられています。
それは、ノン子のダンスだったり、ナポリタンだったり、機内食だったり。
そのひとつひとつがドラマの魅力をものすごく高めてくれているのも、本当に素敵。
観終わったあと、しばらく世界観に浸れること間違いなし。
ぜひ観てみて欲しい作品でした。
おわり