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繋いでもらったいのちを無駄にしない【スーパースターを唄って。を読んだ感想】
魂の震えを言葉にする。リリックに残す。ラップに乗せる。
「ヤバい」や「エモい」で終わらせないことが人生を彩る。
今回は、久しぶりの作品感想回です。
すごく面白かったので、「私がなぜ、面白いと思ったのか?」をサクッとまとめてみます。マンガ選びの参考にしてみてほしいです。
・人生に退屈を感じている方
全員にオススメの作品です。
作品紹介
痛みに優しさを。剥き出しの人生叫ぶ、人間叙情詩。
貧困と音楽、圧倒的な熱量で描く問題作。
「やらんかなぁ俺は、ラップ。」「歌いたいことなんか、ないもん。 ・・・伝えたいことも」 主人公・大路雪人。17歳、売人。大阪の路上、絶望的な環境で、感情を殺しながら生きる日々。幼い頃に、シャブ中の母親と最愛の姉を亡くし、天涯孤独となった主人公だが、唯一信じてくれる親友がいて・・・ 仕事先の上司に殴られ、流血しながら売人を続けてく中で、彼の心に宿るものとは? どうしようもない環境を抜け出すことができるのか・・・!?
音楽に救いを求める人々を描く、極限の人間ドラマ。
メイジにとっての雪人と桜子
主人公の雪人は、17歳でヤクの売人。母が残した借金を肩代わりして、犯罪に手を染める日々を過ごしている。最愛の姉 桜子を亡くし、毎日地獄のような日々を過ごす。
親友のメイジは「nervous rat」という弱冠17歳にして一目置かれるトラックメイカー。元々裕福な家庭の生まれで、普通に学校にいたら交わることがないであろう二人。
ましてや、ヤクの売人をやっているような雪人。しかしメイジは、雪人の18歳の誕生日に、オリジナルのトラックをプレゼントする。最終的には、雪人をプロデュースして、ラップの世界に引き入れる。
なぜ、メイジはここまでして、雪人のために動くのか?
天才トラックメイカーがここまでする理由はなんなのか?
雪人と桜子が居場所をくれたから。
トラックをつくるキッカケをくれたから。
たぶん、これだけ。
もちろん、ここから展開があるかもしれないので、あくまで私の仮説に過ぎない。けど、鳥のひなが最初に見たものを親だと思い込む習性のように、メイジは最初に居場所をくれた雪人と桜子のために、トラックをつくる。今度はメイジが雪人の居場所をつくる。
ラップがつくる熱狂
雪人のラップは、いわば素人のラップ。決して、上手なものではなかった。
けどこれがまた、彼の魂の叫びは、オーディエンスを熱狂させる。
なぜか?
メイジがつくるラップは、雪人の1015冊にも及ぶ日記がベースになっているから。SNSに転がっているようなありきたりな言葉、ありきたりな表現ではない。地獄の日々を過ごしてきた雪人にしか書けない言葉たちが、リリックになっているから。感情を表に出さない代わりに、日記にありのままを書き記していたから。
メイジが雪人と桜子からキッカケをもらったように。
オーディエンスはこの熱狂からキッカケをもらったのかもしれない。
言わば、「雪人⇨メイジ」という1to1の熱狂が、「雪人⇨オーディエンス」という1toNの熱狂に変わった瞬間だ。
大切な人の死
そして雪人とメイジがつくる熱狂の全てをくれたのは、姉の桜子だ。
雪人が書いていた日記は姉の桜子の真似事だし、メイジがトラックに興味を持ったのは、桜子が部屋で曲を流していたから。
全てを背負って、弱音を見せずに頑張っていた桜子が死んだ。
身近な人の死は、ネットニュースで見る有名人の訃報とは訳が違う。
最初は死んだふりをして向き合うことを恐れていた雪人も、姉がつないでくれたいのちをラップに乗せる。姉の死をキッカケに、本気で生きる事を決めた雪人とその背中を押すメイジ。
あなたが空しく生きた今日は、昨日死んでいった人が、あれほど生きたいと願った明日だ
この詩がふと頭に浮かんだ。
人生、退屈している暇なんてない。
キッカケでいい。
想いが込み上げてしまい、アツくなってしまいました。
でもここまでアツくなれるマンガに出会ったのは久しぶりだったので、ご容赦ください。
もしかしたら、人によっては重たくてウザい文章になってしまったかもしれませんが、私が言いたいことはそんな大層なことではありません。「人生、全力で生きようぜ!」とかそういうことを言いたいわけではありません。
キッカケでいいんです。
自分が何気なくやっていたことが、知らぬ間に誰かのきっかけになっていることは結構あります。すごいことをやらないとキッカケにならないわけではないんです。
だから、私も今の私にできることをできる範囲で頑張って、誰かのキッカケをつくり続けたいと思います。