「研究を売れ!」を読んで考えたこと
どーも、研究開発組織で駆け出しのアウトリーチをやってるafroscriptです。
「研究を売れ!―ソニーコンピュータサイエンス研究所のしたたかな技術経営」を読んでみたので、重要だと思った部分や考えたことをまとめてみます。
afro的な雑なサマリ
ソニーCSL(コンピュータサイエンス研究所)における、TPO(テクノロジープロモーションオフィス)に関するお話。
(ちなみにソニーCSLとは別に研究開発組織も存在する)
TPOはソニーCSL内の「技術営業」を担う組織。ミッションは「CSL研究成果の最大化」
「技術営業」とは、研究者が生み出した研究成果を、実用化、社会実装する役割
「技術営業」がやることとしては、通常の営業と同じように、研究成果を仕入れ(研究者へのインタビュー等)、営業素材として整備し(研究成果を営業チラシに落とし込む)、営業活動を行い(出張デモやメルマガ)、技術移管フェーズのサポートまでを行う(技術提供合意確認書を結んだり、クレジットを残したり)
「技術営業」が通常の営業と大きく違うのは時間軸。現在の先端研究が実用化されるまで平均10年ほどかかる。
社会実装の方法としては主に3通り。社内で活用・製品化する、他社とコラボして活用してもらう、スピンアウトして会社設立
afroが考えたこと
技術営業は研究組織に対して非常に重要な役割であると認識した
適正利益を追求すべき企業の中の一組織であるかぎり、投資した文化は回収を試みないといけない。それを担うのが研究営業という役割なので。
と同時に非常に難易度が高い役割だとも感じた
なぜなら、所属する研究組織の先端研究を理解しつつ(そもそも先端研究は1つだけ理解するのでも難しい)、関連する分野(何が関連するかの見極めもそもそも難しいし、いろんな分野を理解するのも多様な背景知識が必要で非常に難易度高い)にアンテナを張り続け、しかも10年単位の時間軸で実用化を考える戦略と粘り強さが必要だから。
アウトリーチの担当としては、「技術営業を円滑にする」と言ったサポートができそう。
先に「アンテナを張り続け」と書いたが、これには限界がある。1つの組織内でイノベーションを起こすのでなく、いろんな組織の研究を結びつけないとイノベーションが起こせないよねという意味の「オープンイノベーション」という言葉ももはや最近の言葉と感じなくなった現代。いろんな分野の発展は加速し続けてる所管。そうすると、社会実装に必要なアンテナの範囲が、1人の人間が張れるアンテナの範囲の限界値を軽く超えるはず。なので、自組織の研究を適切に「発信」し続けて、必要なコラボレーションが向こうからやってくるようにできるのではないか、というのがその心。
そういう意味ではアウトリーチは、研究営業に対して、研究マーケティング的な役割を担えるのかも。「研究を売る」のでなく、「研究が(自然に)売れる」状態をつくる的な。
(この本でもTPOの役割の中に「研究マーケティング」が入ってたので、実際はソニーCSLの「研究営業」という言葉の中にも「研究マーケティング」が入ってるんだとは思うけど。アウトリーチはそこにより意識を向けれる気がする)