見出し画像

国際協力を見据えて会社員をする際の留意事項2点

国際協力をする前に会社員をすべきとは言うけども…

途上国でボランティアや文化交流を行う国際協力サークルがどこの大学にもあると言っても過言ではない今日この頃、途上国のために貢献できるよう、国際協力を志す10・20代は相当数いるんじゃないかと思う。ただし、僕が就職活動をして思ったのは、国際協力を志す学生の数(需要)に対して、国際協力の仕事の数(供給)は少ないように思う。伝統的にはJICA(協力隊含む)、JETRO、国際交流基金、開発コンサルなどの公的組織に加え、最近では総合商社や途上国ベンチャーが受け口だろうか。
 
国際協力を仕事にしていることに成功した30代以上の先輩達はよく言う、「スキルも何もない新卒では、途上国のためには何も出来ないよ。まずは会社に入ってスキルを高め、その後国際協力の仕事をするのが王道だ」、と。 これは実際その通りだと思う。NGOや開発コンサル企業などをみても、大概は中途採用だ。ただし、ここで僕が提起したいのは、民間企業で働くことは下積み機関として大事だけど、どの職種に就くかを意識した方が良い、と言うことだ。

僕の大学卒業後のキャリア選択


僕は大学卒業後の職種としてビジネスコンサルタントを選んだ理由は、「国際協力の仕事は社会の問題解決を行う仕事。では、企業の問題解決を行うビジネスコンサルタントとして働けば、国際協力業界で働く際に有効な問題解決スキルが身につく…」ということだ。国際協力業界で働いている今思えば、当時の僕の考えは、筋はいいが考えがまだ甘い、といったところか。筋が良かった点としては、コンサルタントとして働くことで、基本的な事務処理能力やプロジェクトマネジメント力が短期間で身に就いたということだ。専門調査員として転職した後、データ分析、議事録やパワポの作成スキルなどは大使館で高く評価された。ただし、甘かった点は、問題解決能力や事務処理能力といったスキルは、転職活動では強力なアピールにはなりにくいことだ。例えば、Excelやパワポスキルが低い元NGO国内職員と、コンサルタントとして勤務してきた僕がNGO駐在員のポストで競争した場合、業界経験がある前者が選ばれるだろう。

1つ目の論点:会社員としての職種と国際協力の初めての仕事に類似性があるか?


「国際協力のファーストキャリア問題(国際協力の仕事を始めるには、国際協力の経験が求められるため、業界への新規参入が難しい問題)」を解決するために色々もがいた僕の経験から言えることとして、職種選択の際には、二つのポイントを意識すると良い。
 
1つは、「多様な職種がある国際協力の世界でどのような職種で働きたいのか具体的なイメージがついていますか?国際協力のファーストキャリアと、会社員として選ぶ職種に一貫性がありますか?」ということだ

僕は、コンサルタントとして働いていた際のプロジェクトマネジメント経験を売りにして国際機関のプログラムオフィサーに応募したことがある。しかし、"プロジェクトマネジメント"とはいえ、IT業界のプロジェクトマネジメントと国際開発業界でのプロジェクトマネジメントでは関連性が乏しいと見なされて書類選考で落とされてしまった。この反省から言える事は、会社員と国際協力のファーストキャリアで一貫性を保ったほうが採用時に評価されるということだ(専門性=関連分野に従事した"年数"なので)。言い換えると、なりたい職種を起点に、逆算した上で、関連性が高い職種に新卒で就いた方が良い。
 
良い例として、最近需要が増えている気候変動分野で政府にアドバイスする仕事に就く、というビジョンが定まっている場合、気候変動に携われるような仕事、例えばコンサルの公共セクター部門や、環境省などへの入社が視野に入るだろう。別の例として、国際機関で人事職として働きたいなら、人事領域を強みにしているコンサル企業や、人事職採用をしている企業に入るだろう。これらの例のように民間企業での仕事と国際開発機関との仕事でなるべく一致している職種を探すことをお勧めする。 なお、可能であれば、英語を使う国際的な環境で働ければより良い。僕は企画調査員としてITとは全く関係ない仕事をしているが、国際的な就業経験は民間の経験であっても評価されたからだ。

2つ目の論点:学位と職歴に一貫性があるか?

2つ目は、学位と職歴の一貫性を保てているか?という論点だ
 
2つ目の論点で自分の例として挙げたように、「ITコンサルからプログラムオフィサーに応募する際に、関連性(専門性)がないとして書類選考で落選してしまったのはわかった。であれば、ITコンサルタントとしての経歴を活かして、Innovation OfficerやData SpecialistなどIT系のポストに応募すればよかったのでは?」と思った人もいるかと思う。確かに僕がIT系のポストに応募すれば、会社員と国際協力ファーストキャリアの一貫性は担保できる。ただし、(特に)国際機関の場合は学位と職歴の専門性を求められる。僕の場合は、職業人としての専門性はITでも、コンサルを辞めた後で取得した修士号は公共政策だった。JPOのポストでシステム導入や管理を行うポスト(Information Officer/ Innovation Officer)を見て、「これはコンサル時代にやっていたことと一緒だ!」と思っても、求められる学歴に情報工学修士などと記載している場合が多いので、業務遂行的には実際に可能だが、専門性がないと見なされるため書類選考で落とされてしまう…

Information System Officerの応募要項に記載している、必要な学歴。情報系の修士などが求められるため、社会科学系の修士だと書類通過は困難。

良い例として、例えば、文系学部卒でサプライチェーン管理や原材料調達の仕事を民間企業でしている人は、よくある開発学修士ではなくサプライチェーン管理修士などを取得し、Logistic OfficerとしてJPOに応募する。もしくは、ITコンサルをしている人は、情報系の修士号を取って、Innovation OfficerやInformation Officerとして応募すると良いだろう。これらの例のように、学位と職歴の一貫性を保つことが重要だ。

 まとめると、論点1・2を検討するための材料として、下記3点が出来れば素晴らしいと思う。
①どのような国際協力キャリアで働きたいのかを決める(例えば、働く場所を軸に考える場合は、草の根レベル-途上国の地方都市?-途上国の首都?-本部勤務で先進国?のどれがワクワクするのか。また、業務を軸に考える場合は、人道支援?実行(保健・教育・民間連携・気候変動…)?管理(IT・ロジスティクス・財務?)のどれにワクワクするのか)を考える。そのためにネットでどんどん話を聞く(国際協力キャリアで発信している人は大概親切)
②TOR(応募要項)を実際に見て、どのような学歴・職歴が求められるかを把握する(これめちゃくちゃ重要、大学生の僕はできていなかった)
③それを踏まえて、類似経験が積める会社や職種を探す。必要な学位を取得する。

偶然性は人生の醍醐味だが…


以上、僕自身の経験から、国際協力の仕事に就くために、下積みとして会社員を積もうとしている人向けに意識すべき2点を紹介したが、最後に偶然性と戦略性について一言述べておこうと思う。僕自身、戦略的なキャリア形成を十分にしてきたとは言い難いが、その当時持っていた知見で最大限考えた結果であり、後悔は全くしていない。むしろ、その場その場での好奇心やアイデアに従って選択を行う事は人生の醍醐味とも思う。ただし、JPOを目指す場合は35歳という年齢制限があるため、大学院に進学する事、結婚や出産、転職を考えると意外と時間がない。ゆえに、戦略的なキャリア構築が求められる。偶然性と戦略性のバランスを取ることが大事。