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食糧不足だけど、食べものの好き嫌いはするんかい

こんにちは。さぁです。
今回はわたしの調査地の村の食事事情についてツッコミを交えつつ、お話したいと思います。


初のアフリカ滞在地が最底辺の村

2022年の夏、わたしはタンザニアのとある村にいました。

村までわたしを連れてきてくれた日本人の先輩は村をひとことで紹介してくれました。
「ここはチーニ・カビサ(Chini kabisa)な村だ。」
チーニ・カビサ(Chini kabisa)とはスワヒリ語で「最底辺」を意味します。
わたしはこれからその村に半年以上暮らす予定だったわけですが、村の紹介が最底辺の村って…!
そんな捨てゼリフを吐いて、先輩は日本へと帰国してしまいました。

夕方の村のようす

村にガス・水道・電気は完全に整備されていません。
通信状況も悪いです。
幹線道路沿いの町までは約8kmほどの未舗装の悪路が続き、
雨季になると、この道は膝丈ほどの深さの季節河川に飲み込まれ、文字通り、村は陸の孤島になってしまいます。

しかも、わたしが村にお邪魔した前年の農耕期は旱魃が起こり、
多くの農民が十分な量の作物を収穫することができませんでした。

12月の食糧が不足する端境期になると、村人のなかには、昨日から何も食べていない、数日間お酒しか飲んでないという人も少なくありません。
十分な食糧がある世帯は全体の1~2割程度だったのではないかと私は推測しています。

わたしは村で、一般的な家族の家にホームステイさせてもらっていました。
パパとママ、6歳の長男と、2歳の長女、そしてわたしとその調査助手の18歳の女の子。
この村は全員が農家であり、わたしがお世話になっていた家族も農家でした。
しかし、農家だからといって、十分な食糧があるわけではありません。
先述したように、この村は去年旱魃が起こったため、わたしのホームステイ先の家族も食糧不足に苦しんでいました。
そこで、ステイさせてもらっているお礼に、食糧を全てわたしが購入し、提供することにしました。
主食となるトウモロコシだけでなく、おかずもです。

よく出る一般的なおかずは、川の小魚の揚げ焼き、煮豆、酸乳(匂いが強いヨーグルト)、菜っ葉を炒めたものなど。
稀に、大きなナマズやイモムシ、シロアリ、ネズミ、ウサギ、牛肉などの家畜の肉が食卓にのぼります。

一般的な食事(ウガリ・酸乳・煮豆)

好き嫌いは防衛本能

さて、本題の好き嫌いの話になります。
村では多くの世帯が食糧不足です。
しかし、わたしの食糧提供により、その心配がないホームステイ先の一家は、好き嫌いを言って、わたしが買ってきた食糧に対し、ブーイングを出すようになっていました。
しかも、困ったことに、全員がそれぞれ別のものを好き嫌いするのです。
例えば、私はおかずに酸乳を買って帰ればパパと長男が食べれないと言い、村ではなかなか手に入らない肉を買って帰れば、調査助手が食べれないと言います。
ただでさえ、食糧が不足している村で食糧を購入するのも難しいのに、やっとおかずをゲットすると、誰かしらが食べれない。
「我慢して食べて」と言ったり、「じゃあ食べないでいいよ」と言うと、まるでわたしが悪者であるかのように「おかず無しで食べろということか。それはひどい」と責めてくる。

わたしを含め、一般的な日本のこどもたちは、好き嫌いは良くないと教わります。
でも、これは食品衛生がしっかりした日本だからの話であって、アフリカではそうではないのかもしれません。
何が安全で、何が毒なのか分からない環境では、食べたことがない危険な食べ物を避け、生存率を上げるために、好き嫌いは必要な性質であるという説もあるそうです。
ちなみに、わたしは村で出たものは、野草でも虫でもネズミの肉でも何でも食べるタイプなので、本来であれば生存競争で負けていたでしょう。
なんていうことを考えて、自分を慰めていました。

野生動物もいただく

食べれない理由はさまざまでしたが、まとめるとこの5つ。
①クランの伝統。
パパのクランではある種の野草を食べることができないと言われているそうです。ママ、長男、長女は問題ないそう。クランなら、長男・長女も食べちゃいけなさそうなのに。よく分からん。
②遺伝的に食べれない。
例えば酸乳。パパは酸乳を食べるとお腹を下すと言い、それが長男に遺伝したため、長男も酸乳が食べれないという。しかし、長女は大好物でばくばく食べていました。長女には遺伝しなかったのかなあ?
③身体が慣れていないから食べれない。
例えば豚肉。長男・長女は豚肉を食べません。前に豚肉を食べた際に身体に発疹がでて、それ以降ずっと豚肉を避けているそう。ちなみに、パパも子供のころ豚肉を食べて発疹が出たらしい。しかし、大人になって試しに豚肉を食べてみたら、問題なくおいしく食べることができたから、今は豚肉大好き。
④つわり。
まあこれは分かる。ママはインゲンマメの煮豆が大好物だったけれど、こどもを妊娠していたため、だんだん煮豆を拒否するようになりました。

そして最もわけが分からないのが、⑤悪魔にのっとられてしまうから。

悪魔にとりつかれやすい子との共同生活

わたしの調査助手は特に悪魔にとりつかれやすい性質だったため、食事には本当に気を遣いました。
まず、肉全般が無理。
小魚は食べるけど、ある特定の種類の魚はだめ。酸乳(ヨーグルト)もだめ。虫ももだめ。
ベジタリアン、いや、ビーガンの方が近いかもしれないですね。
そして困ったことに、彼女は、肉を調理した器具や、かつて肉類を載せた食器を使用することもできないのです。
そして、肉類を食べた人が身体を洗わずに、彼女に触れてしまうと、彼女は悪魔にのっとられてしまうという・・・

悪魔にのっとられる前の正常な調査助手

したがって、彼女と一緒に暮らしていたわたしも、必然的にビーガン寄りのベジタリアンな生活を強いられました。
まあ、村で肉が出回ることなんて滅多に無いので、いずれにせよベジタリアンな生活を送っていたかもしれません。

ちなみに、わたしが村に滞在した7か月のあいだ、彼女は何度か悪魔にのっとられました。
それはそれは大変な騒ぎでいろいろあったのですが、長くなるので、その詳細については、また次の機会に書くことにします。


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