【読書感想】道具としての微分方程式
こんにちは。
『道具としての微分方程式 偏微分編』(著・斎藤恭一、講談社)を読みました。
ポイントだけまとめたいけど、本を写すことになりそうなので、頭に残った部分だけ書いておこうと思います。
読書のモチベーション
微分方程式を解くよりも、物理現象から微分方程式をつくることに重点を置いて書かれた本です。
「微分方程式を使う」というと解くことに視点が行きがちでしたが、実際には微分方程式が作れなければ解くこともできず、「使える」とは言いがたいですね。
実際の仕事で、実験時の材料の変化を予想したいことがあったのですが、1つの式ではうまく表すことが出来ず、Excelで漸近的に積み上げて計算していました。
私のExcelでの計算の仕方は、ある時間の状態から次の時間の状態を計算して、実験結果とフィットするようにパラメータを弄る方法を使っているのですが、「もっとスマートにやる方法を昔習ったような気がする…」と思い、そのうちの1つが偏微分方程式だと思いました。
偏微分方程式を作れるようになりたい!ということで本を読みました。
内容
この本は、イメージしやすい物理現象から偏微分方程式の作る部分に重点を置いていて、何度も何度も同じようなことを繰り返しながら、少しずつ前に進んでいくような内容です。
一応、ラプラス変換を使った解き方についても書かれていますが、3章までの作り方の部分がメインだと思います。
また、偏微分方程式を使うあらゆる手法を解説しているわけではなく、微小空間内での質量・熱・運動量(文中ではマヘモと表現)の変化に絞って、かなりシンプルに表現された系で解説されています。
なので、著者も書いているように、この本だけで全ての現象を表せるようになるわけではないですが、偏微分方程式を使ったモデリングの方向性は理解できますし、偏微分方程式の意味も分かりやすく表現されています。
ポイント!というか、これしか覚えていない
読み終わってから頭の中にあるのは、以下の言葉です。
マ(mass)・ヘ(heat)・モ(momentum)
入溜消出
フィックの法則、フーリエの法則、ニュートンの法則
ビブコン(微分をコンシャスする)
他にも大切なことがあったのですが、これらの言葉は何度も出てきたので、頭に残りました。
マヘモ
1は本文中で「質量、熱、運動量」を略すために著者が作ったっぽい言葉なのでそんなに意味はないと思いました。
入溜消出
2は微分方程式を作るための手順のようなもので、本文中で何度も出てきます。
入:微小空間に流入する物理量(質量or熱or運動量)、流速×微小時間(Δt)
溜:微小空間内に溜まっていく物理量、tからt+Δtの間に溜まる物理量×堆積
消:微小空間内で消える物理量、化学反応で別の分子になる等
出:微小空間から流出する物理量、流速×微小時間
「入ー溜ー消=出」となるように物理量の収支を式にすることで、偏微分方程式の元を作る。
フィックの法則、フーリエの法則、ニュートンの法則
それぞれの物理量の変化を表すために使われる有名な物理の法則
フィックの法則:質量の微分方程式で使用
フーリエの法則:熱の微分方程式で使用
ニュートンの法則:運動量の微分方程式で使用
ビブコン(微分をコンシャスする)
微分をコンシャスするらしいんですが、これだけでは意味が分かりません。
要するに「入ー溜ー消=出」で作った式を、微分方程式っぽい表現に変形するという意味です。
感想
上記の言葉以外にも、じわじわ流速とかドヤドヤ流速とか独特な表現が多いのですが、なぜか私にはしっくりきました。(Amazonレビューでは酷評するコメントもありましたが…)
また、現象をイメージしやすいように(と書いてあるように)、偏微分方程式でモデルを作る対象の物理現象をイメージするためにかなりのページを割いています。その書き方がまた面白いししっくりくるので読んでいて苦ではなく、モデルをイメージできるので数式への理解も進んで、著者はなかなかやりますね。この人の講義を受けてみたいと思ったくらいです。
実際に使えるようになったかというと、やはり読むだけでは習得は出来なくて、読みながら紙とペンを使って式の展開などを追っていった方が見につくでしょうね。
そこまではやってないのですが、さっそく仕事で使ってみようと思いました。
とりあえず、入溜消出で収支式を作ったまでは良いんですが、ビブコンがなかなかできません。ちょうどいい感じに微分方程式の形にならない。
いろいろ考えて工夫もしてみたつもりですが、仕事で使っている系はこのやり方では難しいようです。
本文中で扱っている現象とは大分違うので、入溜消出が使えない場合、もしくは解析的には解けないものなのかもしれません。残念。
今の仕事ではすぐには使えていないのですが、この本の考え方は有限要素法などCAEの仕事をする上で、とても役に立ちそうです。
この分野は興味があるので、うまく仕事の中で使える機会を作れれば、この本で学んだことを活かしながら、楽しく仕事が出来るんじゃないかと思います。
今日は以上です。