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【学会誌】蛍光分析を使った水質分析
こんにちは。
表面技術協会の学会誌である『表面技術』2022年10月号は表面技術と水に関する特集が掲載されています。
今回の記事のタイトルは『蛍光分析を用いた水質分析』で、著者は堀場アドバンスドテクノの小島さん川口さんという方々です。
短い記事なのでマインドマップはなしで、用いられている分析方法であるEEM-PARAFACについてメモしておきたいと思います。
EEM-PARAFAC
EEM-PARAFACは、Excitation Emission Matrix - Parallel Factor Analysisの略です。
Excitation Emission Matrixは、縦軸を励起波長、横軸を蛍光波長にしてマトリックスを作り、どのポイントにピークがあるかを調べることで、対象物質の性質を調べる方法です。
PARAFACは多変量解析の手法を用いたピーク分離技術のようです。
複数の物質からなるEEMは視覚的には区別することが難しいこともあるのでピーク分離が必要になります。
PARAFACは蛍光分析で広く用いられているようです。
分析装置
今回の記事は堀場アドバンスドテクノの記事ということで、こちらのHPの内容とほぼ同じです。
(表面技術誌の記事とはEEMの縦軸・横軸が入れ替わっているのが気になりますが、まぁどちらでもいいっちゃいいですね)
単層カーボンナノチューブの巻き方の分析
EEMの結果は何か見たことある図だと思ったらカーボンナノチューブの分析にも使われている技術でした。こちらも堀場のHPで紹介されいます。
カーボンナノチューブはグラフェンを筒状にした構造ですが、その巻き角(螺旋構造のねじれ方?、カイラル角と言われます)や直径によってバンドギャップが変化する特徴があります。金属にも半導体にもなるってやつです。
多層カーボンナノチューブは複数のカーボンナノチューブが重なっているので総合的には金属型が多いのですが、単層ナノチューブ(特に軽の小さいもの)はカイラル角の影響が多いと思われます。
このカイラル角を調べるのにEEMが使われているようです。
(だいぶ昔に聞いた話なので主流になったかどうか分かりませんが)
EEMの水質分析
水質分析では水の中に用いられる有機物の分析に使われるようです。
汚水の浄化や純水の製造の過程で砂ろ過やフィルタリングを行いますが、各処理前後で有機物ピークの変化を見て、処理の効果を見えるかすることができます。
例えば、こちらの文献では、親水性物質、疎水性物質、両極性媒質を分離する研究が報告されています。
これを見ると、正確な物質の同定は難しそうですが、含まれる有機物の種類や量はある程度分かるので、簡単な操作で分析できるのであれば有効に使えそうです。
感想
EEMは改めて知りましたが、なかなか面白うそうな分析です。
ただ、処理効果を見るだけなら赤外吸収で評価すればいいだけな気がするので、今回の記事の目的では大きなメリットは感じませんでした。
ただ、複数有機物を同時に検出することができることはメリットだと思いました。
おそらくデータベースが十分でないので広まるには時間がかかりますが、そのあたりがクリアできれば、他の分析を組み合わせた方法と同じくらいのことは、EEMだけで分かってしまうのではないかと思いました。
今日は以上です。