ゲームの導入・序盤について②
続きです。
一つにまとめてもよかったんですが、なんかとっちらかってきたので分けることにしました。
今回はどちらかといえばシナリオ寄りの話です。
・シナリオ導入いろいろ
「さっさと操作させろ」
「そ、そうは仰られましても、主人公の抱える事情が複雑でして、これを説明しないことには……!」
という場合もあるでしょう。
手はいろいろあります。
「もっとわかりやすい設定にする」「あとから説明する」「説明そのものを楽しくする」といったところでしょうか。
①説明の要らない導入
代表的なのは「脱出」です。
「ふと目覚めると見知らぬ部屋に閉じ込められていた」
そのときの反応はどんな人間でもだいたい同じです。
「なぜこんなところに?」「どうすれば出られる?」
そして、扉があればガチャガチャ調べてみたり、手記があったら読んでみたりするでしょう。
次に「記憶喪失」です。
主人公もプレイヤーも同じく「なにも知らない」という状態からはじめられるのでなにかと便利です。
また、SF限定ですが「冷凍睡眠の自動解凍」も便利です。
なんらかの事故か、周りに誰もいないのに目覚めてしまった。
「何年経ったのか」「他に誰かいないのか」主人公もプレイヤーもまず気になるところです。
以上、共通するのは「今起きた」という導入です。
これらは「起きた」という描写さえあれば即操作可能に移行することができます。
他に導入を簡潔にできるものとして、「主人公の職業」によるものがあります。
「刑事」なら、殺人事件があれば捜査します。
「軍人」なら、上官の命令には従わざるを得ません。
「考古学者」なら、遺跡があれば調査せずにはいられないでしょう。
その点、「学生」設定は扱いづらいなと思っています。
あるいは、「強烈な個性を持った誘導役」を用意しましょう。
突然可愛いヒロインが主人公の前に現れて「ちょっと来い! おら来い!」と強引に連れ出し、「この廃墟で肝試ししよう!」と。
主人公もプレイヤーも「は? なんで?」とはなりますが、困惑しながらもしぶしぶついていくしかありません。
(ヒロインは主人公のことが大好きで、かといって直接「好き」とも伝えきれない恥ずかしがりやで、勢いに任せて誘っていたようでいて実は前々から悩みに悩んで決行し、肝試しで距離を縮めたかった、などといった設定はあとからじわじわ明らかにしていけばよいのです)
似たように、「魔法少女のパロディ」みたいなのも便利です。
突然可愛らしいマスコットキャラが現れて、「君の力が必要なんだ!」と変身させられて戦わされる。
要するに「人の話を聞かないわがままなキャラ」に無理矢理話を動かしてもらって、すべての責任をそいつに負わせる手法です。
②あとから説明する
要するに①も「あとから説明する」ではあるんですが。
少し具体例で考えてみます。
二人が森を歩いています。
「この先の村ですね」
「ああ。急ごう」
(この会話だけで操作可能になります)
なにはともあれ先へ進み、村を目指しましょう。
村に辿り着くと、すでに壊滅状態。
家は燃え、住人は一人残らず殺されていました。
「遅かったか……!」
そして、モンスターが襲ってきます。倒します。
これだけで、おおよその設定は察せるかと思います。
「主人公の職業はハンターとか軍かな?」
「敬語で話してる方は部下とか後輩で、二人はそういう関係かな?」
「村がモンスターに焼かれる世界なんだな」
「モンスターはどこから来たんだろう」
「少なくとも主人公は連絡を受けて村に来たわけだから、そういう通信技術はある?」
などといろいろ気になる点も出てくるでしょう。
そのあたりの説明は後回しです。
敵モンスターを倒したあとも、主人公を操作させ、廃墟となった村を歩かせ調べさせてみましょう。
たとえば死体を調べた際に
「くそっ、○○め……! 絶対に××計画は食い止めねば」
などと台詞をしゃべらせれば「敵の名前」「主人公の立場」「なにか陰謀がある」などといった情報が伝わります。
(こういった固有名詞は一回ではまず覚えられないので繰り返し出していきましょう)
「なんとなく察せる描写をして、あとから答え合わせとして説明する」手法です。
前回の記事で書いた「チュートリアルを小分けにする」のと似たような発想ですね。
複雑な世界設定のある作品でも、真っ黒の画面で文章がスクロール表示されるよりは間違いなく興味を惹く導入になると思います。
③説明そのものを楽しくする
さんざん言われてますが、長々と世界情勢や世界設定の文章がスクロールしてくるタイプのオープニング。これは最悪です。
国の名前やら、世界を危機に陥れている謎の現象だの、そういった固有名詞が並び始めるとより悪いことになります。
ウェイト演出が多用され連打で読み飛ばすこともできないと発狂ものです。
なにがダメかというと、残念ながら初見のプレイヤーはそんなものに興味がないからです。
プレイヤーがまず興味を抱くのはキャラクターです。
設定説明からはじまるタイプのオープニングでも可能性があるとしたらキャラクターを軸としたものになります。
『HiGH&LOW』というドラマ・映画作品を観てみましょう。
かつて、ムゲンという伝説のチームが
この一帯を支配していた
いきなり世界設定の説明です。作中情勢の説明です。
しかも過去の話ですよ。さっきまで散々ダメだダメだ言ってたのはどうしたんだって話ですが。これがめちゃくちゃ面白いんですよ。
なぜ面白いのか?
実際に観ていただくのが一番ですが、キャラクターを前面に出しているのが大きいと思います。
かつて最強だった伝説のチームと、それに唯一対抗した二人のチーム。
ムゲンが解散し、のちに5つの勢力が台頭。
それぞれの勢力には特徴的なロゴマーク、テーマソング、ファッションがある。
それらを映像でワッと見せつけてくるんです。
情報の洪水という他ありませんが、それぞれ明確な特徴があり、「こいつらが今後どう活躍していくのか」というワクワク感があります。
と、『HiGH&LOW』に影響を受けて実験的につくってみた映像がこちらになります。
「映像を動かし、メリハリをつける」
「キャラクター紹介を軸にする」
「固有名詞はキャラクター名とキャラクターに関するものに絞る(この場合だと所属の国名など)」
を意識しています。
もしこの映像で「面白そうだな」と思えれば参考になると思いますし、「やっぱダメだな」と思えば主人公を記憶喪失にさせましょう。
・例外的な事例について
ここまでの話は、自分で制作する場合には心がけている点ではありますが。
「女性向けの場合はオープニングを丁寧にやることが多いよね」
というような話を聞き、ジャンルによっては必ずしも適用される話ではない可能性があります。
(え、ここまで書いておいて予防線張るの)
そもそもノベルゲームやそれに近しいジャンルについては「すぐに操作させろ」といわれてもなんのこっちゃという話です。
また、オープンワールドについても、面白さは「広大な世界を自由に冒険する」という点にありますが、開始数分でその状態に移行するとはかぎりません。
むしろ、「薄暗い牢獄などの閉じた狭い空間」からスタートし、30分くらいかけてようやく脱出! 大冒険の始まりだ! といった作品もあります。
オープニングから再序盤をあえて不自由にすることで「ここからは自由!」という盛り上がりをつくっているわけです。
とはいえ、「予感」はあります。
「はやく広い世界に出て冒険したい」というプレイヤーの欲求はあります。
いきなり「面白い!」ということはないにせよ、「ここを出れば面白くなる」という確信はあります。
少なくとも「面白くなりそうだ」という予感を覚えさせる。
これは間違いないかと思います。
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