プレイヤーはゲームをクリアしない
このように、二回にわたってゲームの導入・序盤について、
「すぐ操作させろ」「開始数分で面白さを教えろ」など論じました。
これについて、もう少し関連する内容を続けます。
例によって内容としては主にフリーゲームの個人制作者向けのものになります。
・なんのために?
なぜ導入・序盤に気を配らなければならないのか。
制作者視点でいえば「プレイヤーを離さないため」です。
プレイヤー視点でいえば「そのゲームをプレイすべきかどうか早めに判断したいから」となるでしょう。
そして、僕が主張してきた内容はどちらかというと後者寄りになります。
・プレイヤーはゲームをクリアしない
100人があなたのゲームをダウンロードしたとします。
うち、何人がクリアまでしてくれるでしょうか。
10人いればいい方です。
もしかしたら1人かもしれません。
なぜか?
「面白くなかった」か、「面白くなさそう」と判断されたか。
あるいは、「めちゃくちゃ面白そう! でも、今はちょっと忙しいから続きはまた今度」とそのまま忘れられてしまったかもしれません。
とにかく、100人中100人がクリアしてくれる可能性はほぼありません。
いくら無料でプレイできるといっても、プレイヤーは人間でありその時間は有限です。
現在、フリーゲーム配信サイトふりーむ!で公開されているタイトルは1万以上とのことです。
RPGアツマールでも6000以上の作品が投稿されています。
そのなかにもっと面白いゲームはいくらでもあるかもしれないというのに、あえて「つまらなそう」なゲームをプレイする理由はありません。
多くが名もない個人制作であるため、プレイヤーからすると「本当に面白いのかどうか」の信用もありません。
無料なので気軽にプレイできるかもしれませんが、無料なので気軽にプレイをやめることもできます。
というより、有料のコンシューマーゲームですら、クリア率は決して高くはありません。
わざわざ8000円くらいのお金を払って買ったというのに、必ずしもクリアするとはかぎらない、どころか、多くのプレイヤーが途中で離脱します。
(参考:【コラム】市販RPGのクリア率)
「そ、そんな……じゃあいったいどうすればいいんだ……! いっそ、プレイヤーを椅子に縛り付けて銃で脅して無理矢理プレイさせるしか……」
血迷わないでください。
プレイヤーのことを……プレイヤーのことを想うのです。
・ゲーム内容が伝わったうえで離脱されるならいいじゃない
プレイヤーは「このゲームをプレイすべきかどうか」を知りたがっています。
ですので、序盤で伝えましょう。
その結果、「あ、なるほどこういうゲームね。俺には向いてないや」となったとしても、それでよいではありませんか。
「なんだこのゲーム……。なにが面白いのかよくわからん」と投げ出されるよりは何倍もよいです。
前回は「序盤から苦しい体験をさせる」というレベルデザインもあり得るという話をしました。
さて、「なにも考えずにとりあえずクリアできる序盤」と「一瞬の油断で死ぬ危険性のある序盤」で、どちらの方がプレイヤーの離脱率が高いかを考えてみましょう。
実際に調査をしたわけではありませんが、おそらく後者です。
前者は「もしかしてクソゲーか……?」とじわじわ離脱していくこともあるかもしれませんが、後者は「クソゲー!!」と爆発的に離脱していくでしょう。
ですが、それでいいじゃありませんか。
「一瞬の油断で死ぬかもしれない」という体験の楽しさを意図し、それを序盤で伝え、だけどそれでプレイヤーに「あ、向いてないな」と判断されて投げ出されたとしても、それはそれでユーザーフレンドリーです。
なかにはいるはずです。
「おいおい、なんだこのゲーム容赦ねえな……! おもしれえ。やってやろうじゃねえか」
そうやって、いきなり殺されることで燃えるプレイヤーも。
ターゲット層に的確に届いたのなら、それはもう成功です。
ひとまずそう考えましょう。
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