『人類滅亡後のPinocchia』の場合①

noteではこれまで何回かゲーム制作論めいたものを述べてきました。
が、あえて自作品は例に出さずに論じてきました。

だって、僕の作品を例に出してもプレイしたことない人からすればわかんないじゃないですか。
とはいえ、逆にいうと僕の作品をプレイしたことのある方からすれば、その方がわかりやすいかもしれません。

というわけで、今回は『人類滅亡後のPinocchia』でなにを考えてつくっていたかを書きます。
今回はチュートリアルについてです。

ゲームの導入・序盤について
本作ではそのまま「すぐ操作させろ」を実践しています。
ゲームを始めると「冷凍睡眠が自動解除」され、プレイヤーはいきなり操作できるようになります。

で、少し進むとこれ見よがしになにかが転がっています。
調べるといろいろチュートリアルとして教えてくれます。

このチュートリアルではまず「ガラクタを集めて分解炉に放り込み素材を得る」「得た素材でアンドロイドをつくる」というルーチンを学ばせています。
ガラクタを集めるにはロッカーやコンテナを調べる必要があります。
そして重要なこととして、それらをすべて調べて集めないと素材は足りないようになっています。

つまり、部屋に入らなければなりません。
部屋に入れば他にも気になるものがちらほら見えます。
たとえば手記があります。それを読むと、「ガラクタを集めよう」「アンドロイドをつくろう」などとヒントが書いています。

「調べないと進めないようにする」「ついでに他のものも調べてもらう」
そういう設計意図です。
実のところぜんぶ調べないとダメなので、その意味でプレイヤーに「自由」はありません。
ですが、「自分で調べた」と思えばこそ、表示される文章にも興味を抱きやすくなるのではないか。そう考えています。


・分解炉とUIによる誘導
本作においてプレイヤーに理解してもらうのに苦労した仕様はいくつかありますが、そのうちの一つ。

「手に入った素材アイテムはすべて分解炉に放り込まなかければならない」

たとえば「ネジ」やら「ドライバー」やら「リアクター」やら様々なアイテムが手に入りますが、これらはすべて「ゴミ」です。
分解炉に放り込んで「素材」とすることで初めて意味を持ちます。

でも、初見プレイヤーはそんなこと知りません。
「なにかに使うかもしれない」「分解してしまうのはまずそうだな」そう思うかもしれません。

よって、いくつか対策を講じました。

①チュートリアルで「ガラクタ」としていくつかアイテムを渡す
上の画像にも出てきたチュートリアルアンドロイドに「私の残骸を分解炉に入れてね」「素材もちょっとあるからこれもいっしょにね」と言わせてしまいます。
「ハッキリ直接言ってしまう」これが一番わかりやすいです。

②分解炉のタブを「素材」と「アイテム」で分けた

実はいうと、β版の初期verでは「素材」「アイテム」の二つは「アイテム」として一つのタブにまとまっていました。
つまり、「応急修理キット」と「ネジ」や「ケーブル」などのガラクタが一緒に表示されていたのです。
その下には「一括分解」のボタンがあります。
さて、このボタンを押すとどうなるでしょう?

「応急修理キット」などの使用アイテムを残して、ガラクタだけが分解されます。
ですが、そんなの一回使ってみなければわかりません。

というわけで、「素材」と「アイテム」で分けました。
「一括分解」のボタンは「素材」タブでしか表示されません。これで暗に「一括分解してもええんやで」と伝える意図です。

また、本作には「ジャンクコア」というアイテムがあります。
これも分解炉に放り込まなければ意味のないアイテムです。
でも、いかにも重要そうなアイテムじゃないですか。

さらには、以前このアイテムは「アンドロイドコア」という名前でした。
おいおい、これホントに分解炉に投じていいのか?
β版プレイヤーをずいぶん戸惑わせました。

これを「ジャンクコア」と改名し、「素材」タブに表示させることで「分解するものである」ということを示しました。

③アイテムアイコンの色分け
というのも実はあるのですが、あまり功を奏してはいないようです。
(ガラクタは「緑」、メニューで使用できるアイテムは「青」、戦闘中に使用するアイテムは「赤」と色が分けられている)

まったく意味がないわけではないでしょうか、プレイヤーの理解誘導という点では期待はできません。

・説明さえすればいいわけではない
本作で他の作品ではあまり見られない特徴的な仕様として、回復アイテムの仕様があります。

すなわち「現HPの25%を回復」というものです。
はい、そうです。「現HP」です。

このことによって本作は、「瀕死になればなるほど回復効率が落ちる」「早めの回復が大事」という表現を実装しました。
ですが、回復量が「最大HP」ではなく「現HP」に依存するゲームなんて他にはあまり見たことがありません。
そのせいでプレイヤーがそのことに理解するにはだいぶ時間を要しました。

講じた対策は複数あります。

①文書に記す
「応急修理」という文書が手に入るので、「壊れれば壊れるほど修理は難しくなる」と書きました。

②TIPSを出す
探索を開始するたびにTIPSが表示されます。そこで「応急修理キットは現HPの25%を回復する」と書きました。

③命中率低下の仕様を強調する
本作ではHPが少なくなるほど攻撃の命中率が下がるという仕様もあります。
つまり弱体化するわけで、応急修理の仕様を知らなかったとしても「早めに回復したほうがよい」と思わせられるのではないかと考えました。

④アイテムの説明欄に書く
対策というか基本中の基本ですが、「現HPの25%を回復」と書いてあります(が、ここが読まれる可能性は低い)。

⑤使用時に回復予測値を出す
「回復量が一定でない」という仕様のためでもありますが、「あれ、なんか回復量少なくね?」と気づいてもらえればという願いも込めて。

さて、これでどうでしょう。これでもなお足りません

説明はしてあります。
してありますが、つい読み飛ばしてしまったり、先入観で頭に入らなかったりというのはよくあることです。


・図解しよう
というわけで最後の手段に出ました。

なんか美しくないなあと思いつつ躊躇っていたのですが、やはりこの形が一番わかりやすいです。
「応急修理」の仕様は理解してもらわないことには仕方ないのでこの形をとりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?