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「翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて」悪口は おもしろければ 許される
どうも、安部スナヲです。
「翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて」観て来ました。
主人公は東京による不当な支配と戦う埼玉解放戦線の主導者・麻美麗(GACKT)
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そして、元々は関東ヒエラルキーの上位から埼玉を迫害する立場だったが、麗に恋したことによって今は彼の右腕となっている東京都知事の御曹司・壇ノ浦百美♂(二階堂ふみ)
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前作にて、あれやこれやの奮闘の末、東京への通行手形撤廃を実現した彼らだが、今度は「埼玉人は横のつながりが薄い」という問題に直面する。
これを打開すべく、武蔵野線の開通など、新たな案を練るなかで、越谷に海をつくるという計画が浮上する。
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そこで、日本で最も美しい白浜の砂を調達すべく、麗は和歌山へ向かうが、航海の途中で船が難破してしまう。
が、どういうわけか、たまたま漂着したのが白浜で、そこでまたもや美しい男♂に出会う。
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何を隠そうこの人物こそ滋賀解放戦線の主導者・桔梗魁(杏)。
桔梗の談によると、白浜のビーチは大阪人がリゾート地として占領していて、よそ者が出入りするには通行手形が要るという(兵庫、京都の都会指数が高いとされる市区長の人を除く)
関西は大阪府知事の嘉祥寺晃(片岡愛之助)を中心に、その妻の神戸市長(藤原紀香)、そして「洛中以外は京都やおへん」とばかりの排外主義な京都市長(川崎麻世)が牛耳っており、滋賀、奈良、和歌山人は下層階級として虐げられていた。
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桔梗は、嘉祥寺らに囚われた仲間である和歌山解放戦線の姫君(トミコ・クレア)を救出すべく手を尽くすも、まんまとハメられる。
そうこうしてるうちに嘉祥寺らのシャレにならん陰謀を知り…
既にズブズブに巻き込まれた麗&埼玉・千葉friendsにも危機が…
というようなハナシ。
関西人であるわたしには、埼玉と千葉の確執、あるいは東京への迎合や忖度の機微はわからないにもかかわらず、前作は死ぬほど笑った。
その続編の舞台が関西で、ターゲットとなるのは滋賀だという。
ハッキリいって「琵琶湖より愛をこめて」という副題だけで既におもろい😂
このシリーズは、登場する都道府県すべてを等しくディスっている。
そこにあるのは優劣ではないし、全員がどこか自己欺瞞的なのだ。
どギツい悪口の応酬ではあるが、おそらく誰も傷つかないし、これをみて本気で怒る人はいないと思う。
悪口は おもしろければ 許される
それは最も高度なコミュニケーションなのだ。
パンフ記載のインタビュー記事に、制作陣が関西で取材した時、滋賀のフィルムコミッションの人は「うちをディスってくれ」と接待までしてくれて、通天閣の社長はクライマックスの〈あの仕掛け〉に快諾してくれたとあったことから、そもそも彼らはディスられたり茶化されたりすることが大歓迎なのだなと思った。
一概にいえることではないが、確かに関西人には、人前で貶められることを〈おいしい〉と捉え、悪口であれ目立ったもん勝ちという価値観が存在する。
また美術担当者が、大切にしているのはゼロリアルと語っているのを読んで、これこそが作品ポリシーだと思った。
この世界は一見、あるあるネタのように見えるが、ただのイリュージョンなのだ。
つまり、地方の県民性や名産をゼロリアルまでデフォルメすれば、そこには笑いしか残らない。
実際、鼻の穴にピーナッツを詰めて九十九里で地引網を引かせる千葉県人や、鮒寿司を詰め込まれて信楽焼割りをさせられる滋賀県人なんている筈がないのだが、このような破壊力のあるデフォルメ発想は、ゼロリアルを目指すからこそ生まれるのだ。
キャラクターは全員が全員濃すぎて、もう誰がどうとかいえないレベルだが、今作でわたしが敢えてMVPを授けたいのが藤原紀香。
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現実の夫婦でもある片岡愛之助との捨て身パフォーマンスもさることながら、クライマックスのご当地有名人対決での紀香の貪欲な笑い魂は天晴れだ。
というのも、彼女の出身地はプロフィール上、兵庫県西宮市だが、ご両親は和歌山出身で、「紀香」という名前も紀州に由来する。
さらに彼女は初代「紀の川市フルーツ大使」に任命されており、件のシーンではその御役名が書かれたタスキをかけた、申し訳ないがヒジョーにダサい佇まいの写真が巨大な垂れ幕となって掲げられるのだ。
しかもこの経歴をネタにすることを、紀香御本人が提案したというのだから、さすがは関西人、何が〈おいしい〉かを心得てる。
あとどうしても触れないわけにいかないのが、東近江発祥の飛び出し注意看板「とびだしとび太」の勇姿。
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滋賀といって、ここに目をつけるのはさすがだが、何といってもこのとび太は、みうらじゅんに見出されてサブカル界でポピュラリティを得たポップアイコン。この作品と相性が良くない筈がない。
驚いたのはその応用の仕方。
あのアイディアは、木下藤吉郎が敵を欺くために一晩で張りぼての城を作った「墨俣一夜城」を彷彿とさせる奇策・珍策でありました。