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「ボブ・マーリー ONE LOVE」客観性に疑問は残るが、微笑ましく許容できるくらいの〈あたたかみ〉は感じた。

どうも、安部スナヲです。

「ボヘミアン・ラプソディ」以降(かどうかわかりませんが)最近の音楽伝記映画は、本人像と音響の作り込みがネクストレベルへ行ったなぁと感じております。

で、今度はボブ・マーリー。

この題材は相当ハードル高いのでは?と思ったら制作陣にはジギー、セデラ、リタと華麗なるMarley一族が挙って名を連ねるテッペキのファミリービジネス体制。

果たして本家・家元ガチ監修によるレゲエの神様はどう映るのか…。

【あらましのあらすじ】

2大政党の対立が深まり、緊張が高まる1976年のジャマイカ。

既に政治的影響力も多大であったボブ・マーリー(キングズリー・ベン=アディル)は、この対立をやわらげ、国民がひとつになることをテーマに掲げたコンサート「スマイル・ジャマイカ」の出演を控えていた。

そのコンサートの2日前、ボブの自宅に武装集団が押し入り、銃撃によってボブと妻のリタ(ラシャーナ・リンチ)、マネージャーのドン(アンソニー・ウェルシュ)が負傷する。

ボブの身を案じた仲間達はコンサートの参加を危ぶんだが、彼は危険をかえりみずステージに立ち、人々を熱狂させた。

翌日、ボブは亡命する格好でロンドンへ立ち、後に歴史的名盤と賞賛されるアルバム「エクソダス」の制作に尽力する。

その後のヨーロッパツアーは盛況を博すものの、裏側では、リタとの夫婦間不和やドンの金銭絡みの疑惑など、周囲との軋轢に苛まれる。

一方、故郷ジャマイカの情勢は、内戦の危機も囁かれるほどに緊迫し…

【感想】

まず、この手の映画は主人公がどれだけ本人に見えるかが肝になって来る。

で、キングズリー・ベン=アディルによるボブ・マーリーはどうだったかというと、「似てはいないが〈なりきり度〉はなかなか」といった印象。

ただ、レジェンドになりきるスゴ味という点で、古くはゲイリー・オールドマンのシド・ヴィシャスやベッド・ミドラーのローズ(ジャニス・ジョプリンをがモデル)新しいところでは、ジェニファー・ハドソンのアレサ・フランクリンやオースティン・バトラーのエルヴィス・プレスリーには、遠く及ばないなと思ってしまった。

ボブ・マーリーの場合、風貌が完全にアイコン化されているので、逆に難しい部分もあるとは思う。

つまり面長、浅黒肌、髭、ドレッドヘアであれば、それなりに仕上がってしまう。

まして本作のように演じ手が本人よりもだいぶイケメンだったりすると、シラけてしまうきらいさえある。

実際、ボブ・マーリーにしては端正で健康的で清潔感があり過ぎるなと、はじめは思った。

出典:映画.com

だけどそれ以上に仕草や振る舞い、ジャマイカ訛りといったディテイルの再現精度が高いので、その〈シュッとし過ぎている感〉に持って行かれることはなかった(おまえにジャマイカ訛りがわかんのか!という指摘はご容赦いただくとして)

特に感心したのはアコースティック・ギターを親指でストロークする指の感じや音のニュアンス。あれはやっぱりボブ・マーリーだ。

いずれにせよ、自分がボブ・マーリーに抱くカリスマ性、奔放な少年っぽさみたいなイメージはギリ担保されているボブ・マーリーではあった。

ストーリーラインを1976年の銃撃事件から78年の「ワン・ラヴ・ピースコンサート」に絞っているのは正解だと思った。

ボブの人生の中で、最も劇的なその約1年半にフォーカスすることで、伝記映画にありがちな〈ダイジェスト感〉に陥ることなく、最初から最後まで残る映画になっている。

その上で、要所々々挟まれる回想シーンによって、彼がどのようにラスタに導かれ、人間形成されたかが示される。

ラスタの精神やその背景については、非信仰者が簡単に理解できるものではないのだろうが、あらためて歌とリンクしてテロップ表示される歌詞を見ると、彼が訴え続けた自由と解放の原理がそこにあることはわかる。

政治的な激動期であったが故に、ほぼ運命的に担ぎ上げられざるを得なかったボブだが、撃たれようが病魔に侵されようが、怯まずメッセージを放ち、人々を扇動し続けられたのは、家族や仲間の支えも大きかったのだろう。

特に妻のリタは、子供の頃からボブを引っ張って来た姉(というよりほとんどオカンだが)のような存在。

妻でありアイ・スリーズ(ボブ・マーリー&ウェイラーズのコーラス隊)のメンバーでもあったリタの鷹揚な魅力を存分に引き出したラシャーナ・リンチは本当に素晴らしかった。

出典:映画.com

現存する家族が、ほぼ総出ではないか?という勢いで制作・監修に関わっているのもこの映画の特徴だが、それによって、どれだけ本人像の信憑性と客観性のバランスを取れたのか…疑問は残るとこだが、まぁ身内贔屓なくすぐったさも微笑ましく許容できるくらいの〈あたたかみ〉は感じた。

家族でいうと、ウェイラーズのメンバーのアストン・バレットとジュニア・マーヴィンの実子がそれぞれ父親役を演じているのも特筆すべきだろう。

出典:映画.com

音楽シーンは、大いに満足だった。

ライブシーンに渦巻く切実な熱気には、1975年「Live!」を聴いた時の衝撃と感動を思い出したし、「栄光への脱出」に着想を得、レゲエだけにしかないバイブスによって「エクソダス」が組みあげられて行く過程も面白かった。

出典:映画.com

そして、ソファにダラんとなりながら、あるいはリタや子供達に弾いて聞かせる時の、あのラフで優しい空気感も良かった。

出典:映画.com

あとadidasジャージの着こしなしも、レジェンド級でした。

ジャーラスタファ〜ライ!

出典:映画.com

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