良い広告代理店 営業の見分け方
属人的な組織の場合、提供するソリューションのクオリティが担当営業の能力に大きく左右される場合がある。広告代理店もその傾向があると思う。良い営業さんだと思っても広告代理店社内の構造を把握した上で判断すると、意外な落とし穴もある。
「値引きをのんでくれる営業」はチームビルディングが必要な大きな仕事ができない
「~さんはいつもこちらの金額のお願いをのんでくれる。よくしてくれる。」そう思って頼っていることはないだろうか?
この手の営業は確かに人柄が良いが、顧客に頼られる快感の方を営業利益より重視する人だ。いつも値引きに対応することで、広告代理店社内ではうだつの上がらない人、稼げない営業と評価されているだろう。人柄の良さで泣き落としでプランナーやクリエイターをアサインすることはできるかもしれないが、稼ぎ頭である優秀なプランナー、クリエイターをアサインすることは組織の管理職クラスがストップをかける。残念ながら貴方の会社はその広告代理店では重点クライアントとすら認識されていない可能性がある。
従って、大きい仕事を任せてはいけない。
「お願いの通りに動いてくれるコミュニケーションが楽な営業」は新しいことを教えてくれない
クライアント側にとって「コミュニケーションが楽」な人は重宝したいところだろう。勉強熱心で、こちらのオリエンテーションが不十分でも狙い通りの提案を持ってきてくれるしとにかくストレスのない営業さんは、とにかく楽だ。しかし、このタイプにも落とし穴はある。
営業の性格は「チャレンジャー・セールス・モデル」という本に詳しい。
本書で指摘されている通り、「顧客のオーダーに忠実に従うこと」へのプライオリティが高い営業は、営業というよりもカスタマーサポート、営業事務、ディレクターといった職種だと理解した方がよい。顧客のオーダーに従うことを最重要視していると言えばかっこいいが、顧客に嫌われることを極度に恐れているというのが実態だ。過度に空気を読み、仮にクライアント側の課題設定が明らかに間違っていると感じても指摘してくれない。顧客が望んでいるもの以外は提案しないし、少しでも受け入れられなさそうだと思ったソリューションや情報は提供してこない。
業界の最新情報を知ったり、自分の認識の間違いを専門家として指摘してもらいたいなら、違う営業に頼むべきだ。
「頭は良いはずなのに、ちょっと空気が読めない提案を持ってくる営業」が最善だが、付き合い方が難しい
では、社内で評価され組織への影響力があり、プランナー・クリエイターのアサイン力があって、なおかつ新しい情報や提案もくれる人とは誰か?というと、頭は良いはずなのに、ちょっと空気が読めないところがある営業だ。
社内で評価されるためには「自社の利益率が高い業務に目線を向かせて効率よく稼ぐこと」が営業には求められる。従って、クライアント側のオーダーはわかっているのに敢えてズレた提案を持ってきたり、敢えて依頼を無視したりしてくる。ストレスフルな相手だと言ってもいい。
しかしそのくらいの営業の方が、いざというときに一流のチームを編成してくれるし、積極的に最新の情報を提供してくれるし、取引先企業のポテンシャルを最大限引き出してくれる窓口だということだ。
営業は顧客の味方ではなく、利害が一致したときだけ使える相手だと認識する
当たり前のことだが、広告代理店を始めとする下請け業者・パートナー企業は、クライアント側とは利益相反の関係にある。よほど独自手法で原価が安く抑えられているというソリューションでもない限り、広告代理店は自社の利益率が高いソリューション(それは媒体からのマージンが良いというケースもあるし、競合が持たない新ソリューションでまだ値段設定が高いというケースもある)を提案してくるものだ。広告代理店側がある程度儲かっていなければ、重点クライアントとして組織的な対応をして貰えない。
代理店を競争させて切り替えれていけば良いと思うかもしれないが、まともにマスメディアの買付ができる広告代理店や、グーグルとパートナー認定を受けている運用系の広告代理店などは数が限られているので、いずれは選択肢がなくなってしまう。
自分にとって少々厄介な相手を掴んでおかないと自分のキャパシティが広がらないという現象は、取引先企業の営業選定に限らず、自分のアドバイザー全般に言えることかもしれない。優秀だけど少し面倒な人と適度なストレスを持ちながら付き合っていくことが大切だ。