
Advanced Squad Leader (ASL) 勝利への道:コラム― 間もなく、ウォーゲームのルール和訳やファーストインプレッションの記事は、AIが全部やってくれる時代に
8年ほど前のある日の午前2時半。
携帯電話の着信音で目を覚まします。
電話の主は、霞ヶ関官庁のラスボス、泣く子も黙るZ省の係長。
「鈴木さん、夜分遅くすみませんが、朝のXXという番組の書き起こしをお願いします」
当時、会社勤めであった自分は、有識者が出るテレビ番組のコメントをテキストにするという業務を請け負っていました。
省の職員たちは、これを読んで政策に役立てるのです。
少し昔の言葉で言えば「テープ起こし」です。
自分はマネジメントの立場で、実際のテキスト化業務はスタッフにお願いしていました。しかし、長時間の番組であったりして、スタッフのキャパがオーバーするときは、自分もテキスト化に加勢していました。
経験者しかわからないかもしれませんが、結構大変な作業です。1時間の番組をテキスト化するのに、ゆうに半日はかかりました。
これを何とか省力化できないかと、当時話題になり始めていた音声入力ソフトを自腹で購入しました。声を自動的にテキスト化してくれるのですね。
しかし、このソフト、相当な数の単語・言い回しの発音を「認識させる=覚えこませる」作業を経ないと、言葉のテキスト化率の精度がかなり低いのです。
その労力と精度が見合わず、早々と見切りをつけました。
霞が関の不夜城からは、いつ発注が来るかわからず、発注が来たらすぐに対応せねばならないため、契約期間の2年間、住まいと会社の半径2キロから出たことはありませんでした。
「せめて、音声入力ソフトの精度が、業務上の実用レベルだったらなあ」と、ぼやいていました。
当時は自宅拘束が多いこともあって、ボランティアでウォーゲームのルールブックの和訳作業をいろいろやっていました。トータルで20作くらい? ASLは分業でしたが、それ以外は1人で分厚いものばかり手がけていました。
この作業は、およそ楽とは言えないものでした……てか、尋常ではない苦労が伴いました。校正やレイアウト作業も含めて、数千時間は費やしたと思います。
これも何とか省力化できないかと、Google翻訳をはじめ無料・有料の翻訳ソフトに流し込んでみました。
ハッキリ言って、翻訳のクオリティはお話にならないレベル。試しただけ時間・費用の無駄だったなと、ぼやきたくなるほどでした。
結局、翻訳ソフトも見限り、全部人力で完成までもっていきました。
「音声入力ソフトや翻訳ソフトが、本当に満足できるレベルになるには、あと15年はかかるのではないか? いや、もしかしたら自分の目が黒いうちは実現しないかも」と、その頃は思っていました。
その予想は嬉しい意味で裏切られました。
まず、音声入力機能の精度がいきなり爆上がりしたのです。
それに気づいたのが約1年前。
本当に唐突という感じでした。どうやら開発に人工知能(AI)を援用したことで、精度がびっくりするほど向上したようです。
早速、仕事上の文章作成に活用。今では、日常的なメールのやりとりから、込み入った文章、そしてこのnoteの記事に至るまで、音声入力を活用しまくっています。
もちろんパーフェクトとは言えませんが、キーボードの打鍵数はおよそ3割減り、文章作成の生産性は大きく向上しています。
そして翻訳機能。
これも本当に突然という感じで、ここ1~2年の間に精度が劇的に向上。
昨年8月に刊行の『AI翻訳革命 ―あなたの仕事に英語学習はもういらない―』(隅田英一郎/朝日新聞出版)を読むと、
「AIに基づく自動翻訳は不可逆的な“翻訳革命”をもたらし、言葉の壁は確実に崩壊しはじめた」
とあるとおり、まさに革命レベル。
実際の話、オフショア開発の現場など、非英語圏の人を含めた複数国のプロジェクトでは、 AI翻訳が重宝されています。もうグローバルなビジネスのテキストメッセージは、おおむねこれで済んでしまうみたい。
2023年初頭の現在、さすがにウォーゲームのルールブックの翻訳のクオリティは「五合目」といった感じ。ですが、ファミリーゲームのルールだと、相当な精度で翻訳してしまうのではと思います。
革命は止まらないでしょう。来年か再来年には、小難しいウォーゲームのルールブックも、プレイに支障無いレベルまで翻訳精度は上がると思います。
まあ、それを商品にくっつけて売るとなった場合は、人力によるリファイン・校正・用語統一作業は必要と思います。でも、個人同士が対戦するレベルでは、メーカーサイトからルールをダウンロードし、そこからテキストを抜き出して、翻訳アプリに突っ込んでしまえば、数十秒で一丁上がりの時代となるでしょう。
その時代は、目と鼻の先。
さらに言わずもがなの、ChatGPTの登場。今後、ChatGPTを上回るレベルの文章生成AIがいくつも出てくるはずです。
さて先日、このnoteで原稿用紙200枚に及ぶ翻訳記事を載せましたが、今後は、もう翻訳活動はしないと思います。
そして、ウォーゲーム製品のコンポーネント(内容物)を、ただ説明しただけのような「ファーストインプレッション」の記事を書くこともないでしょう。
だって、それはもう間もなくAIがやってくれるのですから。
自分はそのぶん、オリジナルの文章を書く力を伸ばし、日本だけでなく、海外のASLerたちが ―超絶翻訳アプリを通じて― 読んでいただけるよう努力することにします。
人対人のヒリヒリするような頭脳戦を解説したり、人間的な思考プロセスも含めた戦術探求の記事を書くことは、(シンギュラリティでも起きない限り)AIにもできないことなのですから。
#AdvancedSquadLeader #ASL #スコードリーダー #ウォーゲーム #シミュレーションゲーム #ボードゲーム