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Unlocking the power of Google Ads 07


 前回の06では、自動入札やユーザーシグナルを用いた広告クリエーティブの掲載順位の複雑化に伴う評価方法の変化について説明しました。今回は広告クリエーティブの検証に関して説明していきます。

※今回も自らの運用に基づく個人的見解を含みますので参考までに御覧ください。


広告クリエーティブを複数本追加することの意義

 検索連動型広告のアカウントでは、各広告グループに対して複数本の広告クリエーティブを設定することが推奨されています。

 広告クリエーティブとは、クリック後のランディングページの内容を凝縮したものであり、ユーザーのニーズ(=検索語句)にぴったりと合致していると認識してもらう必要があります。ユーザーの検索行動が日常生活に浸透すればするほど検索される文字列は多岐に渡り、ユーザーが魅力的と感じる訴求軸も様々になります。すなわち広告クリエーティブにおいて重要な要素とは、(検索語句に対する)視認性訴求軸です。

 複数本の広告クリエーティブを追加することの意義とは、ユーザーが入力する様々な検索語句の文字列に対応するためであり、検索語句の文字列を含む広告クリエーティブと含まない広告クリエーティブにおける統計的有意差をシステムに認識させることにあると考えられます。

 広告ローテーションのデフォルト設定は最適化配信であり、複数本の広告クリエーティブが存在する状態で検索語句に対する予測クリック率が最も高い広告クリエーティブに対してオークションへの参加機会を与える設定です。すなわち、広告見出し1の文字列が異なれば異なるほど特定の検索語句に対する広告クリエーティブの予測クリック率における統計的有意差は明確となり、最も広告ランクが高い(=掲載順位が高く、クリック単価が安い)広告クリエーティブが配信されることになります。

 しかしながら実際のところは、同一の広告グループに同一の広告見出し1の広告クリエーティブが複数本設定されているアカウントが多く存在します。

 果たしてそれは正しく機能を利用できていると言えるのか?

広告フォーマットの変化

 Google Adsの検索広告のフォーマットは2016年にスタンダードテキスト広告から拡張テキスト広告に変更されました。(厳密には徐々に移行)

 スタンダードテキスト広告は見出しが半角25文字、説明文が半角35文字の2本でしたが、拡張テキスト広告は見出しが半角30文字の2本、説明文が90文字の1本へと変更されました。これにより大幅に文字数は増え、より多くの訴求内容を広告クリエーティブに組み込むことが可能となりました。

 Googleが推奨している広告グループに対して3-5本の広告クリエーティブを追加したほうがよいというのは、拡張テキスト広告での検証結果ではなく、スタンダードテキスト広告での検証結果です。これは本数が重要なのではありません。同一のコンテンツに辿り着くユーザーの検索語句が同一の軸キーワードであるとは限らず、表記違いや類義語などに対応した場合に複数本になるということや上記でも述べたように広告見出しの異なる広告クリエーティブ間で検索語句に対する統計的有意差が明確になることが理由であると考えられます。

 拡張テキスト広告と同時に発表された機能が広告バリエーションとフレキシブル広告です。

 Googleは、広告クリエーティブとはパーツ(管理画面上ではアセットと呼ばれる)とパーツの組み合わせによるパターンであると考えています。

 広告バリエーションは広告クリエーティブにおける訴求内容=パーツの検証を行うための機能です。キャンペーンや広告グループを跨いでパーツもしくはパーツ内の文字列を差し替えることができ、Google Adsのシステムがテストとオリジナルの広告クリエーティブの結果について統計的有意差があるかを判定してくれます。訴求軸の検証に利用できる機能です。

 フレキシブル広告は現状では利用することはできなくなっていますが、パターンの検証を行うための機能でした。当時の仕様では、アカウント内に追加された広告クリエーティブのパーツをGoogle Adsのシステムが解析、パフォーマンスに寄与していると考えられるパーツを列挙、それらに対して代替テキストを入力することでさらにパフォーマンスの良いパーツの組み合わせ、パターンを生成することができる機能でした。おそらくこの機能はレスポンシブ検索広告のプロトタイプのような機能で、レスポンシブ検索広告の登場によりサンセットしたと考えられます。

広告バリエーションの意義

 これらの機能が拡張テキスト広告と同時にリリースされたことの背景には広告クリエーティブの総文字数の増加があると考えています。(個人的見解です。)

 拡張テキスト広告や広告バリエーション、フレキシブル広告の機能が発表される以前は、視認性訴求軸の検証および改善を同一広告グループ内において行わなくてはなりませんでした。スタンダードテキスト広告における広告見出しが主に検索語句に対する視認性を、2本の広告説明文が訴求軸を担っていたわけです。そして訴求軸を変えた広告クリエーティブを対象となる広告グループに対してすべて追加、無期限均等配信にて検証(インプレッションが均等になるという勘違いに基づいて)を実施し、広告レポートをダウンロード、統計的有意差があるかどうかを判定、勝ち負けを決めていました。

 広告クリエーティブの文字数が増加したことにより、検索語句に対する視認性については広告見出し1への文字列の含有(=品質スコアにおける広告の関連性に関連すると思われる)と左側に寄せること(=品質スコアにおける推定クリック率に関連すると思われる)が重要となり、訴求軸の検証については、各広告グループ内での検証では統計的有意差が出にくくなってしまうことが想定されるために広告バリエーションへ分離することが目的だったのではないかと考えています。

 もう1点は自動入札です。自動入札では(目標コンバージョン単価戦略の場合)設定した目標コンバージョン単価で過去に獲得できたコンバージョンデータをピックアップ、ユーザーシグナルを分析の上、広告IDごとにどのようなユーザーシグナルを持ったオークションに拡張入札するかをシミュレーションしていると考えられます。勝ち負けを決め、負けクリエーティブを止めるということはシミュレーションの再調整を意味するため、自動入札のパフォーマンスに少なからず影響するはずです。ということは、自動入札を適用している場合、可能な限り広告クリエーティブの停止は行わないほうが良いということになります。※以前は広告クリエーティブの変更を行った場合は、削除新規(以前のものを削除し、変更版を新規に追加)の処理がされていましたが、現状では変更が可能となっており、その場合、広告IDは変更されません。これも自動入札の導入が増加したことが背景にあるのかもしれません。

 すなわち、広告グループに追加するべき広告クリエーティブとは、検索語句に対する視認性にフォーカスした広告見出し1をもつ広告クリエーティブであり、訴求軸の検証(=検索語句に対する視認性に影響するテストではない)は広告バリエーションによって50%:50%のトラフィック按分テスト(按分率は10%-50%で変更可能。推奨は50%)を行うべきということです。ゆえに広告ローテーションのデフォルト設定が最適化配信であることもなるほどなと頷けますよね。

 最適化配信が設定されている状態で、広告見出し1が同一の広告クリエーティブを複数本追加するということは視認性が変わらない広告クリエーティブがほぼ均等に配信されることを意味し、結果、統計的有意差が出ないためにランダムに配信されているに過ぎず、負けクリエーティブを止めるたびに自動入札のシミュレーションは再調整することになるため、パフォーマンス面では何もプラスになることがないのです。

 機能の進化にともない、運用の業務も進化しなくてはなりません。過去の改善方法を引きずると本質的な改善は望めないのです。

to be continued...

株式会社アンノウンとは、”葉隠” 葉陰に隠れて見えない=まだ知られていない、”はやい、うまい、やすい”を生み出していくために設立した会社です。

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Tomoyuki Yonemitsu / un-known inc.
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