Unlocking the power of Google Ads 05
はじめに
これまではGoogle Adsの仕様や概念について、そして最適化までのプロセスを説明してきました。
正しくアドプラットフォームの仕様を理解することで、効率的な運用業務やパフォーマンスの改善は実現できるわけですが、この20年近くの流れの中でアドプラットフォームの機能は進化し、本来ならその進化に応じて運用方法や改善施策も進化していくべきなのです。
5回目となる今回は、運用方法や改善施策を進化させる前提として、これまでの内容の中で特に重要かつ運用者の方に誤認識されていることが多いテーマを深堀りしていきたいと思います。
広告ランクと品質スコア
広告ランクとは、Google広告ヘルプにおける記載を引用すると
と書かれており、この記載内容もこの20年近くで大きく変わりました。※自分が在籍していた当時より丁寧かつ詳細になってます。
コアの部分は何も変わっていないけれども、ユーザーに対して関連性が高い広告を掲載する仕様に変えるために加味されるものが増え、ユーザーによって(同じ検索クエリでも)広告掲載順位も広告クリエーティブ自体も変わるようになりました。広告の平均掲載順位という指標がなくなったのもその結果です。
しかしながら運用されている多くの皆さんが理解している広告ランクは、品質スコアと上限入札単価と広告表示オプションなどフォーマットによる見込み効果により算出されるもの、ですよね。
品質スコアは広告ランクの算出には使われていない
広告ランクとは、検索広告においては、ユーザーの検索クエリに対して都度算出される広告クリエーティブの予測(推定)クリック率に広告の関連性とランディングページの利便性を加味した、広告の品質と上限入札単価を掛け合わせて算出されるものであり、その役割は、検索クエリに対する広告掲載の資格判定、掲載順位の決定、上限入札単価に対する減額幅の決定、Top Slotへの掲載可否の判定です。
そう、品質スコアは広告ランクの算出には使われていないのです。過去のGoogle広告ヘルプでの記述は下記です。(現状もほぼ変わらず。)
品質スコアとは、検索クエリに対して都度算出される広告の品質(推定クリック率、広告の関連性、ランディングページの利便性)をターゲットキーワードの文字列レベルに細分化、掲載順位や広告表示オプションによる増分クリック率を正規化(ノーマライズ)した後、ターゲットキーワードの文字列に対する広告数値を、6を平均として10段階でスコア化したものです。
検索クエリレポートレベルでのクリック率は掲載順位や広告表示オプションによる増分クリック率を含んだデータであり、検索クエリの文字列をターゲットキーワードとして広告グループに追加してはじめて、その文字列に対する広告の品質の評価は品質スコアとして示され、純粋に広告クリエーティブ内における視認性を判断するための指標となるのです。
品質スコアはターゲットキーワードレベルに付与されるスコアであり、その文字列のみの評価であって、部分一致でどんな検索クエリを捕まえてようが評価には関係がないし、変わりもしないのです。またそうでなければ広告クリエーティブの視認性を上げるために盛り込むべき文字列の特定に品質スコアを利用することができません。
要は、品質スコアとは広告クリエーティブを改善した結果、予測(推定)クリック率が大幅に変わってはじめて数値的変化が出るものであって、広告クリエーティブを変えたら品質スコアが7→10に即刻変化するというのは(1→5ならともかく)起こる可能性はかなり低いと思います。
検索クエリは広告クリエーティブを探す
検索広告の仕組みから考えると、ユーザーの検索クエリが入力され、広告グループに追加したターゲットキーワードと照合され、そのキーワードが属する広告グループに入稿されている広告クリエーティブが露出すると思われているかもしれません。
しかしながらUnlocking the power of Google Ads 01でも述べた通り、オークションの仕組みにおいては、検索クエリに対して対象となるキャンペーン、広告グループの中で広告を露出するべきキャンペーンと広告グループを選出し、最適化配信であれば最も予測クリック率が高い広告クリエーティブを配信します。
要はターゲットキーワードとの照合はされていないのです。実際の処理は、検索クエリに対するキャンペーン、広告グループの選出後、広告クリエーティブが露出し、その結果を検索クエリと文字列の合致度合いが高いターゲットキーワードに返すという処理をしています。これも品質スコアが広告ランクの算出に使われていないことの証明です。
そしてこの構造があまり知られていないからこそ、運用者の皆さんは広告クリエーティブを変えることの意義をあまり感じていないし(そもそもそんなに頻繁に変えるものではないが。)、もしくはむやみやたらに検索クエリを追加し、品質スコアの高いものだけを残していくという本質的な改善には繋がらない業務に固執してしまうのではないかと考えています。
ターゲットキーワードの追加の意義
2002年7月にGoogle広告のクリック課金型、すなわち現在の検索連動型広告は始まりました。その当時は自動入札などという概念はなく、ターゲットしている文字列に対してコンバージョン率を確認しながら個別の入札金額を設定する必要がありました。
そもそもターゲットキーワードとは、どのような検索クエリに対して広告を露出させるかの幅を制御するものです。
今も昔もアカウントを構築して以降の運用業務のレバーは、ターゲティング、ビッディング、クリエーティブの3つしかありません。
ターゲティングを、ターゲットキーワードを追加する意義とは、そのターゲットキーワードにより広告を露出させ得る検索クエリに対するビッディング、クリエーティブのコントロールをするためです。しかしながら現状では多くのアカウントで自動入札が利用されており、自動入札では検索クエリと広告クリエーティブに対して入札を行うため、ビッディングのコントロールという点でのターゲットキーワードの役割はなくなったと考えられます。
広告クリエーティブの改善プロセス
ではターゲットキーワードとは何のために利用するべきか?それは、広告クリエーティブの改善です。それ以外にはない。
品質スコアは、推定クリック率、広告の関連性、ランディングページの利便性に細分化され、各々、平均・平均より上・平均より下の3つでステータスを確認することができます。
※ここからは自身で運用したことによる個人的見解が含まれます。
まずは品質スコアが低いキーワードに関して、低い要因となっている文字列を特定する必要があります。
推定クリック率・・・特定された文字列の位置が関係していると考えられます。ユーザーの視点は左から始まるので、可能な限り文字列を左寄せにする必要があります。
広告の関連性・・・特定された文字列が広告クリエーティブに含まれていないことによって平均より下になっている可能性があります。既存の広告クリエーティブに含められないか、もしくは広告カスタマイザーによって対応するなどが必要です。
ランディングページの利便性・・・リンク先のランディングページが適切かどうか見直す必要もありますが、特にモバイルのトラフィックが多いアカウントではランディングページの表示速度を改善する必要があります。管理画面のランディングページの項目からモバイル速度スコアを確認し、10-8であれば問題ないと思いますが、5だとクリック単価は高めになっている可能性があります。
今後はYahoo!検索広告の品質インデックスも、Google広告同様に細分化できるようになります。
ターゲットキーワードの文字列レベルでの改善は、アカウントの規模が大きくなればなるほど工数を要します。そのため、すべてのターゲットキーワードに対応するのではなく、まずは品質スコアや品質インデックスが低いターゲットキーワードに多く含まれる文字列を特定し、既存の広告クリエーティブに含める対応から始めましょう。
次回は広告クリエーティブの評価について説明していきます。
to be continued…
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