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4.東大寺法華堂 執金剛神像

東大寺法華堂ほっけどう秘仏ひぶつ執金剛神しゅこんごうじんのご紹介です。


一年に一度、良弁僧正ろうべんそうじょう(東大寺の創建に尽力し初代別当べっとう(住職)となった)の命日12月16日にのみ開扉される。
執金剛神像は良弁僧正の念持仏ねんじぶつ(個人が身辺に置き私的に礼拝するための仏像)だったとされる。

秘仏ひぶつのため、保存状態がよく制作当初の彩色がよく残る。

像の詳細

国宝
東大寺法華堂所在 秘仏(毎年12月16日のみ開扉)
奈良時代(詳しい制作時期、作者は不明)
像高173㎝
塑像そぞう

塑像
粘土など可塑性かそせい(力を加えると変形する)のある材料で造られた像。奈良時代に多く造られた。

執金剛神とは

金剛杵こんごうしょを持ち、仏法を守護する神。「金剛杵をる」ことから執金剛神しゅこんごうじんといわれる。
ギリシャ神話のヘラクレスが起源とされる。

金剛杵
古代インドの武器。煩悩ぼんのうを打ち破る菩提心ぼだいしん(悟さとりを求める心)の象徴として、密教みっきょうでは宝具ほうぐとして用いられる。

お寺の門に立つ金剛力士こんごうりきし仁王におう)は執金剛神が発展して生まれたものといわれている。
上半身が裸形姿金剛力士に対し、執金剛神は甲冑かっちゅうをつけた武将風の姿で表されるのが一般的。
日本では作例が少なく、金剛力士の方がよく見られる。

像の特徴

長年秘仏として厨子ずしに納められていたため保存状態がよく、至る所に鮮やかな彩色(金色、朱色、緑色、青色など)が残っている。
特に腕の部分の彩色は当初のものといってもよいほど鮮やかである。

目を大きく見開いた怒りの表情で、口を大きく開け、怒号とともに今まさに右手の金剛杵を振り下そうとする一瞬の姿が見事にとらえられている。
鎧を着用し、垣間見える首や腕の浮き上がった血管と筋肉の表現がリアルで素晴らしい。

黒目の部分は鉛ガラス材が嵌め込まれている。

髪を束ねている元結もとゆい(髪を束ねて結ぶ紐)の右側がなくなっている。

平将門たいらのまさかどの乱が起こった時、執金剛神像の前で乱の平定を祈願したところ、このなくなっている部分が折れてたくさんの大蜂となって飛び立ち、平将門を刺し殺し、乱を治めたという説話がある。
像の前にけられた鉄製の燈籠とうろう(重要文化財)は、この説話にもとづいて造られたもので、火袋ひぶくろ(火を灯すところ)に蜂がかし彫りで表されている。

像が造られた背景

この像が造られた時期については諸説あるが、良弁ろうべんが東大寺の前身寺院である金鐘寺きんしょうじにいた頃に発願したものとされる。
そうすると約1300年前に造られたものとなる。
(良弁が東大寺初代別当となったのが天平勝宝4年(751年))

9世紀初頭に成立した日本霊異記にほんりょういきには、「法華堂ほっけどう本尊不空羂索観音立像ふくうけんさくかんのんりゅうぞう背後の厨子内に北面してまつられていた」と記されている。

日本霊異記にほんりょういき
平安時代初期に書かれた最古の仏教説話集。

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