アドビ幹部が振り返る生成AIの1年、2025年にはコンテンツ量が5倍になると予想
こんにちは! アドビ未来デジタルラボ編集部です。
早いもので2023年ももう暮れようとしています。のちのち2023年とはどんな年だったか、と振り返るとき「生成AIが本格的に登場した年だった」と言われるとしても、特に違和感はありませんね。私たちアドビにとっても、生成AIに終始した1年でした。
年末らしく将来の話も少ししますと、アドビでは2年後にはクリエイティブコンテンツの量が今の5倍になると予想しています。つまり、生成AIの登場によってクリエイティブのボリュームが爆発的に増えるということです。
実はこの話は少し前に開催されたAbobe MAX Japan 2023の基調講演で話されていたこと。今回はその内容をちょっとだけ紹介しましょう。
もちろん、5倍になっても破綻しないコンテンツ制作の手法というものもご紹介しますので、最後までお付き合いください。
生成AIがクリエイティブにもたらす変革に言及したAdobe MAX Japan 2023
アドビでは年に1度、「Adobe MAX」という第一線のクリエイターが一堂に会する、大規模なイベントを開催しています。
日本ではここ数年、主にオンラインで実施してきましたが、2023年11月16日に、4年ぶりの本格的なリアルイベントとなる「Adobe MAX Japan 2023」を開催。日本初披露の技術はもちろん、世界初公開となる技術やサービスなども紹介しました。
会場の東京ビッグサイトには、約3600人が来場。基調講演には、来日したアドビのスコット ベルスキーCSO(最高戦略責任者)兼新興製品担当 エグゼクティブバイスプレジデントが登壇しました。
生成AI「Adobe Firefly」についてや、Adobe Creative Cloud製品の最新アップデート、生成AIがクリエイティブにもたらす変革について話したほか、LINEヤフーとの協業など、いくつかの発表もありました。
展示会場の雰囲気も交えながら、当日の様子をリポートします。
増え続けるコンテンツ需要に生成AIの活用が不可欠
「Adobe Firefly」は2023年春に、アドビが発表した生成AIです。「Adobe Stock」などの許諾済みデータや著作権の切れた一般コンテンツから学習しているため、安心して商用利用ができるほか、コンテンツの来歴を確認できる「コンテンツ認証」もサポートしています。
webサイトから無料で利用できますが、基調講演に登壇したスコットは、Adobe Fireflyを使ってすでに35億を超えるイメージが作られていると明かしました。
「AIを使用したコンテンツは、今後不可欠になっていく」と、スコットは言います。アドビの調査では、クリエイティブコンテンツに対する需要は、過去2年で2倍に急増。さらに今後2年で、5倍まで増えると予想しています。
「よりリッチで、パーソナライズされたコンテンツへの要求を満たすために、クリエイターの仕事は増えていきます。プロとしては、とにかく効率を上げなければなりません」とスコット。スピーディーかつ高精度なビジョンを実現するためには、Adobe Fireflyのような生成AIの活用が不可欠になる、というわけです。
生成AI機能を搭載するクリエイティブツールのポイント
アドビではAdobe Fireflyをベースに、画像生成AIの「Adobe Firefly Image 2 Model」、ベクター画像を生成できる「Adobe Firefly Vector Model」、デザインテンプレートを生成できる「Adobe Firefly Design Model」という、3つのAIモデルを展開しています。それらの一部は、すでにAdobe Photoshop、Adobe Illustrator、Adobe Expressに機能としても組み込んでいるもの。
AIモデルには4つの柱があると、スコットは説明します。
1つ目は想像の境界を越えて、いろいろなアイデアを試せること。2つ目は作業を効率化し、生産性を上げられること。3つ目は精度の高いクリエイティブコントロールができること。そして4つ目はベータ版として提供し、フィードバックをもらいながら改善していくことです。
生成AI搭載のAdobe ExpressがLINEやnoteと連携
基調講演では、アドビの各製品のエバンジェリストが、実際にAdobe Photoshopの「生成塗りつぶし」機能や、Adobe Illustratorの「テキストからベクター生成(Beta)」機能をデモしました。
Adobe Illustratorでは生成したベクター画像を、コーヒーカップやトラックといった立体物の写真に簡単に配置できる「モックアップ(Beta)」機能も紹介。Adobe Firefly関連以外にも、Adobe Premiere Proの「文字起こしベースの編集」機能など、各製品の最新アップデートを解説しました。
「Adobe Express」では、「テキストからテンプレート生成(Beta)」機能を使用して作った画像コンテンツを、別の担当者がSNSに投稿するなど、チームで共有しながら作業する様子をデモしました。
「Adobe Express」についてはこの日、LINE広告が作れる「LINE Creative Lab」との相互連携(2024年2月予定)も発表。これはアドビとLINEヤフーの協業による、取り組みの第一弾です。
LINEのほかにnoteでも、「Adobe Express」を使って見出し画像を作成できる機能の提供がスタートしています。2023年11月15日〜12月22日にはお題企画「#画像生成AIチャレンジ」を実施し、多くのユーザーが参加してくれました。
基調講演の最後には、10月に開催した米国の「Adobe MAX 2023」で話題を呼んだ「Project Stardust」のデモも公開しました。
“まるで魔法”と話題を呼んだ「Project Stardust」
「Project Stardust」は、アドビが開発中の革新的な画像編集エンジンで、被写体をオブジェクトとして認識し、動かす、消す、置き換えるといった編集が簡単にできます。実際にデモを見た参加者からも、「おー」という驚きの声があがっていました。
熱気あふれる会場にリアルイベント復活を実感
基調講演とは別フロアの展示会場には、アドビのほか、15社のスポンサーがブースを出展。改めてクリエイティブの楽しさに触れられるだけでなく、インスピレーションやテクニックなど、多くの刺激と学びが得られる場として、どのブースも多くの人でにぎわっていました。
アドビの各製品のブースでは、エキスパートによるショートセッションも実施。熱心に学ぶクリエイターの姿が印象的でした。また会場内のマーケットプレイスには32のクリエイターが出展し、作品の展示即売や参加者との交流で盛り上がっていました。
アドビのリサーチ部門で開発中の新技術「3D Edge Printing」のブースでは、本の小口に文字を立体的に印刷する技術を本邦初公開。この日「Adobe Fonts」に新たに追加した、オリジナルフォント「貂(てん)明朝アンチック」を紹介するコーナーも、フォトスポットとして人気を集めていました。
「貂明朝アンチック」は、漫画のセリフに使われる、仮名は明朝、漢字はゴシック体のアンチック体を採用したフォント。擬態語など漫画ならではの表現ができるように、すべての仮名に濁点や半濁点がつけられるほか、嘆符、疑問符、音引きなども複数種類あり、シーンに合わせた使い分けができます。
「Sneaks」では世界初の技術など数々の新技術を披露
イベントの締めくくりには、参加者が一堂に会する大規模なパーティー「Beer Bash」を開催。オリジナルカクテルを片手に大いに盛り上がったのは、アドビが開発中の新しい技術を紹介した「Sneaks」です。
音声を簡単に切り分けできる「Project Sound Lift」を世界初公開したほか、米国の「Adobe MAX 2023」でも話題を呼んだ、模様が変わるドレス「Project Primrose」を、来日したアドビのリサーチサイエンティストが自らモデルとなって紹介しました。
4年ぶりのリアル開催ということもあり、基調講演からBeer Bashまで参加者の皆さんの熱気であふれた「Adobe MAX Japan 2023」。この記事を読んで興味を持った方は、来年ぜひ会場でお会いしましょう。
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