確実に迫り来る南海トラフ地震への心理学的な備え方
2024年8月8日(木)午後4時43分に発生した最大震度6弱の宮崎県日向灘で発生した地震によって、マグニチュード8クラス以上の新たな巨大地震が起きる危険性が高まっているとされて、「巨大地震注意」の「南海トラフ地震臨時情報」が初めて発表されました。
ここで、南海トラフ地震とはどのようなものなのかについて、簡単に再確認しておきましょう。
南海トラフとは、日本列島が位置する大陸のプレートの下に、海洋プレートのフィリピン海プレートが南側から年間数センチずつ沈み込んでいる場所のことです。この沈み込みによって、この2つのプレートの境界にはひずみが蓄積されており、これが開放されることで南海トラフの大地震が発生するとされています。
南海トラフでは過去1,400年の間で、約90~150年の間隔で大地震が発生しています。
これまでのデータを判断軸とすると、次の地震までの間隔は88.2年と予測されています。
直近の南海トラフ地震てある1946年の昭和南海地震が発生してから、2024年は約78年を経過しており、南海トラフにおける大地震発生の可能性が着々と高まっているのです。
今後、40年以内に90%の確率で発生するとされており、遅かれ早かれ必ず起きるものだと言えるでしょう。
要するに周期的に考えると、今、この時に南海トラフ大地震が発生しても不思議ではないということです。
とはいえ、今すぐに避難するべきであるとか、過度に心配する必要はないとのことですので、現時点では普段より警戒しておくに留めておくべきです。
このような災害への緊張が高まっている状況においては、正常性バイアスという災害の発生リスクに対して、「起きるはずない」、「自分だけは大丈夫」と楽観的に錯覚する心理学の原理が起きがちです。
過度に心配するのは逆効果ですが、正しく恐れて正しく防災することを心がけましょう。
南海トラフ地震臨時情報が発表されたことに伴い、自然災害への恐怖や不安から気が気ではなくなってしまっている人が散見されましたので、心理学的にどのように心を落ち着かせるべきなのかを解説させて頂ければと思い本記事を執筆しました。
具体的な地震のメカニズムや、防災の備え方については専門家に任せるとして、あくまでも心理学的な対処方法についての解説に留めておりますのでご了承ください。
さて、みなさんも大地震が起きたらどうしようとか、呑気に働いたり、休んでる場合ではないんじゃないか?などと考えてしまう人も少なくないことでしょう。
心配してはいるものの、目先の仕事や享楽にうつつを抜かして、不安から逃れようとしている人もいることでしょう。
断言しますが、不安になって対策を必死に行うことも、仕事や娯楽で不安を紛らわせることも決して間違ってはいません。
極論してしまえば、自分ではどうにもならないことですから、できる範囲の対策をしたらあとは「人事を尽くして天命を待つ」しかないのが現実です。
それでも何でも、不安感がおさまらないとか、何かできることはないかと落ち着かない人も少なくないことでしょう。
そんな時にこそ、やはり心がけて欲しいことは「今を生きる」ということです。
「今を生きる」とは、過去も未来もなく今できることに没頭して生きましょうということです。
まずは、自分にコントロールできること、それから自分にはコントロールできないことを区別しましょう。
これは度々、私も至る所で語ってきたことですが、自分にコントロールできることは自分の行動や思考くらいなもので、自分の外側にある他人のことや環境のことは自分にはコントロールすることはできません。
南海トラフ地震が発生するのは確実でしょうけれど、それがいつになるのかは自分には分かりようがないことですし、コントロールすることもできません。
自分の外側にある他人や環境に、影響を及ぼすことはできますが、自分の思い通りにできるかどうかでいうと不可能なのです。
つまり、自分にはどうにもならないような、いつ地震が起きるのか、被害がどうなるのかをあまり考え過ぎないで、いずれ必ず起きる大地震に備えて自分は何をできるのかを意識するべきなのです。
いずれにせよ、人間は死から逃れることはできません。
万人にいつか必ず訪れるのが死なのです。
もちろん、死を克服する為に努力することは自由ですが、未だ医学的にも完全ではありませんし、すぐに実現できるようなことではありませんので現段階で当てにするべきではありません。
日頃から、いずれ人は死ぬという運命から逃れずに直面して生きていくことこそが、自然災害への心の備えにもなります。
そもそもな話ですが、南海トラフが発生するリスクが増大したとは言っても、人はいつ死ぬのかは分からないのです。
未来を不安に思ったところで、未来のことは分かりませんし、老後に備えようとしたところで老後が訪れるのかどうかも予測できなければ、老後が来たところで長生きできるのかどうかも分からないことです。
人生はいつ終わるのか分からないという現実を受け入れて、生きていられることに感謝して、今からできることに集中していくことが大切です。
アドラー心理学的にも、過去も未来もない今を生きるべきであるとしておりますし、人は今にしか生きることができないのです。
計画的に生きようとしたところで、夢を持ってそれに向かって邁進することはいいことですが、人生では何が起きるのか予測不可能であり、計画通りに生きることはできないのです。
未来のために今は準備であるとし、まるで犠牲にしているような生き方をしていたとしても、今というこの時こそが本番であり人生なのです。
哲学者であるマルティン・ハイデガー氏は、著作である「存在と時間」にて、本来性と非本来性という概念を提唱しました。
・本来性
確実に迫ってくる死を受け入れることで、自分の生き方やあり方を決めること。
・非本来性
確実に迫る死から目を背けるために、大衆がやっていることに身を投じて、他者の価値観に迎合することで未来の不安を減らす気晴らしをして生きること。
生き方に正解はありませんし、あなたがどちらの生き方を選択しても構いません。
自分が選んだことが少なくとも自分にとっての正解になるからです。
しかし、自分の頭で考えることなく安易に逃げるように非本来性な生き方をしていくことは、責任からの逃避であり充実した人生を生きることはむずかしいでしょう。
一方、本来性な生き方であれば、自分の意思で決めた本来の自分の人生を生きられるようになります。
大地震への緊張や恐怖が高まっているこの事態は、もちろん喜ばしいものではありませんが、こうなっているからこそ現実を受け入れて他人の人生ではない自分の人生を取り戻すきっかけに自分で変えていくのはいかがでしょうか?
アドラー心理学では、何が起きたのかが問題なのではなく、起きた出来事へ自分がどのような捉え方をするのかという意味づけによって、主観的な世界に人はみんな生きているとしています。
つまり、今回の事態を、自分の人生を生きる為のきっかけにして前向きに捉えてしまえばいいのです。
まるで不安を煽るようなことばかりをここまで書き綴ってきましたが、前述の通り自分の力ではどうにもならないことですので感情に支配されないように自分でが得られる日々の行動をコントロールするようにしましょう。
それこそ、日頃から体力作りをする為に栄養や運動、睡眠に気を遣ったりしていれば、いざという時に逃げ遅れるリスクを減らすこともできますし、目先のリスクである生活習慣病や事故を防ぐことにも繋がります。
今後、いつ起きるのかも分からない40年で90%の確率で発生する南海トラフ地震を過度に心配するくらいなら、日本人男性の2人に1人、女性の3人に1人がなるとされる癌の予防や、自然災害よりよっぽど確率の高い交通事故などに用心した方がいいという話です。
そもそも、身近にある危険を私たちは無自覚に受け入れて生きているものであり、認知能力に限界のある人間風情では全てのリスクを洗い出して認知したり、完璧に備えることは不可能なのです。
より充実した人生を送るために、キャリアアップの為に仕事に励むなり、勉強するなり、娯楽を楽しむようにした方がいいのです。
断言しますが、まだ起きてもいない、いつ起きるのかも分からないような大地震のことを心配して消耗するくらいなら、目先の事故や病気を防ぐ為の努力をしていた方がよっぽど有意義ですし、それこそが防災対策にもなります。
最後に付け加えて起きますが、心配事の9割は怒らないと世の中では言われてますが、あなたが心配しているようなことにはなりませんのでご安心ください。
もちろん、100%はありませんが、心配事が起きたところで南海トラフ地震発生確率とは、あなたが想定するような最悪の事態になる確率とは決して一致しません。
だからって、正常性バイアスで自分だけは大丈夫だと決め込むのは違いますが、不安に思うことがそのまま実現される可能性は計算できないことですし、そんな事態になる可能性を見積もっても起きる確率は非常に低いです。
なので、過度に心配せずに、正しく恐れて正しく防災してください。