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おはなしするね。

私はね。
ハッピーエンドが好きだ。
だからこのお話は必ず。
たとえ共に長い道を歩くことになっても。
 
必ずハッピーエンドにしたい。
ちょっと険しいが一緒に登ってはくれないだろうか。
だから。勝手にだけれど。
あなたを。君を信用して。お話しをしたい。
大丈夫。勝手に信じたくせに勝手に裏切られたとか。
私は思わないから。
 
お話しをさせてください。
例えば。
 
教会に行って、罪を告白しただけで許されるのなら。
私は死ぬまでそこで暮らそう。
 
許されたいという望みはきっと。
必要な感情なんだと思う。
だから無駄にはしないために
私は許される事よりも心の中で悩み続ける事にした。
 
そうして、自分じゃない誰かがいてくれたら。
それを話してみよう。
恐らく。
 
多分。
 
傲慢も貪欲も淫蕩も悲嘆も憤怒も怠惰も虚栄心も。
いつかはきっと。
許されないのだけれど、感覚は薄れていくだろう。
 
私はね。
それを救いだというにはとても惜しい気がしてならない。
私はどんな感覚も大事に大切にしたい。
 
それは自分だけに与えられた
あるいは自分だけが感じる事ができる。
難しい比喩が許されるのなら。対話の彼岸だからだ。
そこでは善悪では語ることのできない。
救いではないのだけれど。
徹底的で無慈悲でもあるのだけれど。
人だから感じることができる創造上での平穏がある。
 
信仰は悪いものではないと思う。
けれど世の中にはたくさんありすぎて。
わかっていた事だけれど。わからない事が続く。
今なお続いている。
それは。
 
――ああ。きっと。
 
とてもじゃないが私には解けないと思った。
とてもじゃないけれど、自分じゃ無理だと思った。
 
世の中には理不尽がある。
今。私が起こすものなら。すぐに謝ろう。
だって私はできる事であるならば。
 
人に優しい人間になりたいからだ。
私は人を傷つけない人になりたい。
でも相当の精神苦を体験するはずだ。
だって何もしない事が一番なんだから。
だから落ち着いて落ち着いて。言葉を探す。
 
少しだけ自分が好きだからだ。
それでも。誰であっても人の幸せまで願ってもいいはずだ。
嫌がるであろう相手なら黙ってそう思っていればいいのだ。
 
自分とは相性が悪い人でも。
ただ自分とだけ相性が悪いのだろうから。
距離をとればいい。
 
でもね。
私はとても悲しい事だと思う。
自戒で済ますことはできない。
人を巻き込んでおいて自己完結させて終わりだなんて。
こんなの大した認識のズレだ。
また出会える可能性はあるんだから。
 
捨ててはいけないのだと思うから。
それにとても同じだと思う。
忘れる事と実は何もできなかった事実。
だから事実を正しく知る事でしか人は救われないのだと思う。
物語は優しい。とてもとても優しい世界だ。
 
決して自分に危害を加える事はない。
けれど私たちは多分そこにいるような。
その世界に存在する人にはなれない。
そこには罪を背負う作業がない。
そうして道は作られたものをなぞるだけなんだとしても。
 
現存の人と話した時の安堵や安心とか
心に残った大切な記憶には絶対に勝てない。
その人の世界がいかに広大かというような。
想像でのみ理解できる。
その人を強く想う時みたいな。
本当の優しい気持ちにはなれない。
 
自分を柔らかくして、柔らかくして。
辛い事や悲しい事を。
唯一自分の気持ちを自分の力で正しさを求め伝える事ができる"大切な言葉"を。
 
きっといつかの記憶で知っている。
人を信じる事。
そうして裏切られる事。
この道を知っている。
 
行き場のない記憶を知っている。
ただなにもない平原で。
本当にただただ独りで頭を下げて歩く。
 
考えて結果を出すためじゃない。
ただその人の事を考えて悩むための時間で歩く。
いったい今までどれだけの絶望があっただろうか。
地獄とは何かを私は知っている。
井の中の蛙は。大海こそ知らなかったが。
その深さは知ることができそうだ。
これは私の言葉じゃないけれどね。
 
でもね。
わかるのだ。
私だけの感覚じゃないと。
私だけが見た絶望と地獄じゃないと。
なんとなく。
そう思うのだ。
 
それはそうじゃないと困るわけじゃなくて。
良い事しか起きない人生なんて。
あたり前のようにないのだからだ。
 
たくさんの人が物語が好きだ。
一緒に怒ったり泣いたり。笑ったり。喜んだりできる。
共有できるようにするために。
創る人が一生懸命だからだ。
 
本当の世界ではないけれど。
たとえ一時でも一緒に道を歩めるのなら。
それだけでは何もかもままならないのだけれど。
 
もちろん。
物語を創る人さえもままならないのだけれど。
そこにはほんのわずかな。
わかり合える気持ちがある。
 
そうして。ほんの少しだけれど。
 
人間はそれぞれ全く別々の動物なんだけれど。
それを頼りに。
共有の松明みたいにして。
夜を照らす。
そうして夜でも昼でも少しだけ一緒に居よう。
 
今それができているわけだから。
きっと私も。
あなたも。
君も。
どんな人でも。
一緒に過ごした事実だけでもいいから大切にしよう。
 
それは決められた箱庭だったけれど。
そうじゃない。
いるじゃないか。遠くの人が。未来の技術で。
光で。音で。近くにいるみたいに。
そうでなければ。
私はきっと人と暮らしてはいけないから。
 
少しだけおんなじ部分を。
とってもとっても。
大切にして生きることにした。
これは私の場合だけれど。
 
おはよう。
 
おやすみなさい。
またね。
こんな簡単な挨拶だけを私たちは交わして。
またそれぞれの道をゆく。
本当に続く。
どこかで大切にしていた。自分の道をゆく。
 
巡礼のような時間。
 
でもあなたと今まで一緒に使っていた松明は
消さないで持っていくことにしたよ。
とても大切なものだし。証だと思っているから。
 
そうしてこのお話は終わる。
 
けれど。続く。
世界は私が歩き回れる庭ほど小さくないから。
歩く。
 
また会えるといいね。
世界はこんなにも広いけれど。
なんの約束もしていないけれど。
また会えるような気がして。
私のお話は。
ここでおしまい。
 
この世界で。
また会えるとなんとなく。
そんなおかしな気持ちになって。
 
それじゃあ。
またいつか。
 
どこかで。

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