ワンドロ「オアシス」20240614
カラシニコフ「ハローリリィ。今日の調子はどうだ。」
リリィ「水を頂戴。」
カラシニコフ「OK、精製された貴重な水だ大事に飲めよ。」
リリィ「オーライ、おじいちゃん。」
カラシニコフ「ちょっと俺にもくれ。」
リリィ「老先短いおじいちゃんには少しでいいのよ♪」
カラシニコフ「あのなぁ……」
リリィ「ねぇ、オアシスまでのコンパス。ぐるぐるしてる~。」
カラシニコフ「そりゃ、地下にあるってことさ。」
リリィ「おじいちゃん。嘘くさい。」
カラシニコフ「あのなぁ。」
リリィ「光るコケ……これさわっちゃダメなやつね……」
カラシニコフ「回廊みたいになってるからな、転んだら真ん中にヒューストン。」
リリィ「ふわぁ……」
カラシニコフ「俺の後ろについてきな。」
リリィ「ふみゅう……おじいちゃん、前見えないよ。」
カラシニコフ「お前は少し黙って……しっ。あそこに旧世代のアンドロイドだ。まぁ近づいたら撃ってくるだろうな。」
リリィ「どうするの?」
カラシニコフ「先に撃つ。」
リリィ「わお。じゃあ私の荷物のロングバレルが役に立つ♪」
カラシニコフ「遠距離の射程。約1200メートル。的はグミくらいの大きさの機械のコアだ。」
リリィ「はずしたら?」
カラシニコフ「みんな死ぬ。上に住んでるやつも。」
リリィ「ふーん。」
カラシニコフ「なにかしゃべっていてくれ。集中できる。」
リリィ「あーあーあー、あー。……外す?」
カラシニコフ「やっ……。ああ、外した。」
リリィ「死ぬの? 私達全滅かしら?」
カラシニコフ「……。」
リリィ「はぁ……仕方ないわね。羽よ。前方の敵を殲滅せよ。」
カラシニコフ「……まぁ、わかってたさ。」
リリィ「神秘的でしょ。機械の羽。やっぱり綺麗だと思うの。」
カラシニコフ「ふん。古代の超技術。アウル・ハム・ステロ。デウス・エクス・マキナ。」
リリィ「私、この姿見せるのは特別な時だけ。おじいちゃんにだけよ。」
カラシニコフ「さぁ、最深部に行こう。」
リリィ「うん。いこう。」
カラシニコフ「どんどん空気澱んでくな。」
リリィ「ああ。カナリアでもいたらもう死んでるだろうね。」
カラシニコフ「まったく、なんの因果かオアシスを行く運命かよ。」
リリィ「ねぇ。ここ。指輪光ってる……」
カラシニコフ「俺の指輪もだ。この輪っかに。」
リリィ「そう。握手してかざすの。指輪がここの鍵になるから。」
カラシニコフ「んん……。どうだ……。」
リリィ「わぁ……光ってる……ここから先が、オアシス!」
カラシニコフ「おい走るなって! 扉、くそっ入れねぇ、もっと早く開け!」
リリィ「おじいちゃんこっち、早く来て! もう! はーやーく!」
カラシニコフ「やっと開いたか。おい、勝手に……!」
リリィ「すごい! ここだけ自然がいっぱい! ちょうちょが飛んでる!」
カラシニコフ「おい……でもよ……お前、わかってんだろ……?」
リリィ「なに! 最後なんだから! 楽しませて! 最後の水浴び! 最後の食事! 生きてるって素晴らしい!」
カラシニコフ「お前……これからここで、電池になるんだろ? ここで、ずっと……」
リリィ「そうよ。」
カラシニコフ「それは……」
リリィ「私、おじいちゃんと旅してこれて楽しかったよ。思い出を抱いて寝るの。」
カラシニコフ「このオアシスは最後の人類にとって文明、希望の灯になるだろう。」
リリィ「そうだとしたら私。嬉しいな。」
カラシニコフ「リリィ。……そうか。楽しかったぜ。ありがとな。」
リリィ「ありがと、おじいちゃん。じゃあね。ばいばい。」
カラシニコフ「じゃあな。神に愛された子供、リリィ。」