メタフィクション読書リスト
この記事は、メタフィクションについて知りたいなら、まずこれ読んどけブック推薦noteです。TRPGシナリオライターのための、って小さく書いたけど、要は「娯楽ジャンルの住人向け」っていうだけです。
メタフィク作品とか、二次元ジャンルで時たま見かけるし、そういうメタフィク系作品履修リストはあるけど、文学研究とかメタフィクション論ブックの紹介って……な…い……!?? って思ったから書いたよ! ちなみにこのnoteの筆者は二次元趣味と学問趣味の二足のわらじです。
ターゲット層(想定読者層)
このnote記事のターゲット層(想定読者層)はね!! TRPGとかゲームとかラノベとかなんかそのあたりで「あ、なんかメタフィクション面白くね!? 自分でもそういうの書いてみたいな~! 勉強しようと思うんだけど、なに読んだらええん???」って思ったそこの!! キミ!! だっ!!!!!
べつに製作側に回るつもりはなくても、「メタフィクションの理論とか研究とかを体系的に知りたい」とか「メタフィクものってどういう分析がなされているんだろう?」ってことが気になる人だったら、是非この記事で紹介した本とかを読んでいってほしいな!
「Wikipediaとかpixiv百科事典とかは読んだ」
「メタフィクション的な作品はいくつか見た」
「ネットソースレベルより知識をつけたい」
「理論的なところが知りたい」
って思っている人~~~! この本読むと良いよ!!!
ちなみに、なにか特定の分野(今回だとメタフィクション)面白いな~、って思ったときに、ひたすら良作品を摂取していって自分のなかに経験を蓄えていくタイプの人もいると思うんですが、そういう人はあんまりこの記事のターゲットではないです。ごめんね。
ステップ① 文学理論
このステップは外せなかった。だって、いきなりメタフィクション論ぶっつけで読んで「そういうことかー!」って10割理解できる人、いないと思います。というかいません。いたらすごいです、ぜひ研究者になってください。いませんが……。
というわけで1冊目は文学理論です。ぶっちゃけ「文学理論」の本なら読みやすいものを読んでもらえればいいです。大きめの本屋行って、「文芸」(小説とかのことです)コーナーのなかにある、「文芸理論」とか「文学理論」の棚を見てみてください。
ただコレ、「メタフィクションについて知りたい!」っていう需要に対して、「じゃ基礎理論からね!」っていう返しになってしまっています。でも、たとえばバスケとかサッカーとかやりたい人に「んじゃ1年間ずっと筋トレね!」って返したら、絶対モチベが萎えるじゃないですか……でも筋トレは確実にカッコイイシュートをキメるためには絶対必要じゃないですか……。というジレンマになったので、できるだけ短く読めるものを1冊ピンポイントで選出しました。
オックスフォードのVery Short Introductionsシリーズの和訳です。短め、かつ独学者向けになっています。(「文学理論」の本には、大学の教材として使うことを前提とした=教授による解説が行われることを前提にした造りの本があり、独学に向かないことがしばしばあります)
メインディッシュを味わう前の前菜、どんでん返しの前の伏線です。
とにかく予めご了承いただきたいのが、こういう「文学理論」っていう分野の下積みがありまして、その蓄積の上に「メタフィクション論」っていう個別具体的なテーマが成り立っているってことなんです。このnoteで次に紹介する本たちも、確実に「文学理論」の上に成り立っている本です。なので、下記の本のなかでわからないキーワードがあったら、「文学理論」というジャンルのなかで調べてみることをおすすめします。
ステップ② メタフィクション論
ステップ①の前提を踏まえた上で本題です。読むべきはこの本。
佐々木敦『あなたは今、この文章を読んでいる。:パラフィクションの誕生』
「パラフィクション」っていう言葉、聞いたことないと思います。そりゃそうだ。だってこの本の著者の造語だからね!
この本は二部構成になっているのですが、第一部ではこれまで蓄積されてきたメタフィクションにまつわる理論を総括しています。そして、第二部ではそのうえに筆者独自の「パラフィクション」という考え方を展開しています。
この本、第一部が非常によいメタフィクションの理論の概観になっています。
メタフィクションの定義やメタフィクションの研究史を追っていくのですが、重要文献であるパトリシア・ウォーの『メタフィクション』(このあとに書きます)から、日本のアメリカ文学研究者によるメタフィクション論の展開、そしてそこからこの本が書かれた2014年までのメタフィクション理論がざっくり200ページぐらいで読めちゃいます!!! すご~い!!!(いやこれはほんとうにすごいことなんですよ……!!)
というわけで読みましょう。
あとこれ、娯楽×学問オタクっぽい言及になっちゃうんですが、オタクとはなんぞや論をやるときにゼッタイ出てくるゲーム的リアリズムだとかゼロ年代だとかセカイ系だとかそういうフレーズを「メタフィクション」の視点から捉え直してるのがこれまた筋が通っていて面白いんですね~~~!!(第二部で展開される「パラフィクション」の挑戦も、すごく面白いです)
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あとこれはおまけなんですが、メタフィクション論の金字塔としてまず真っ先に挙げられる本は、パトリシア・ウォー『メタフィクション : 自意識のフィクションの理論と実際』です。
これをオススメにしなかった第一の理由は、絶版だからですね……。日本の古本屋からも在庫は蒸発しています(2022年2月現在)。英語版ならRoutledgeという出版社から2002年に復刻版が発売されているので、英語つよつよパーソンは英語(販売ページ)で読むのもアリです。
あと一応、第二の理由としては、原著(Metafiction: The Theory and Practice of Self-Conscious Fiction)が1984年で、少々情報が古いというのもあります。パトリシア・ウォーの『メタフィクション』は偉大なる金字塔ですけど、そこから先の約40年間でいろいろな理論が発展し、いろいろと情勢も変わったので、佐々木『あなたは今、この文章を読んでいる。』のほうが初読には適役だというわけです。
あとがき
やめろ―! 文学理論についてもマジで何も知らない人が初手で「メタフィクション」でタイトル検索して巽孝之『メタフィクションの謀略』を読むのはやめろー!!!!!!!
……という全力の叫び。いや『謀略』はもちろん意義のある本なんですが、めちゃめちゃアメリカ文学の素養が試されるので、このnoteで想定したタイプの読者が「初手で読む本」ではないんですよ。マジで……。ついでに「メタフィクション 論文」でググって出てくるのを無料公開だからといって初手で読もうとするのも挫折の元です。ほんとわるいこと言わないからやめましょう。
それでは! 自ジャンル(TRPG(CoC))のなかでの「メタフィクションシナリオ」がもうちょっといろんな意味で充実すると良いな~~!! っていう下心満載のnote記事、終わり! おつかれさまでした!!
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