尻は口ほどにものをいう⁈
「目は口ほどにものをいう」
言葉を発さずとも目をみればその人の心のうちわかる、といった意味ですね。
この慣用句はご存知の方も多いかと思いますが、実は、体には、目に負けないくらいの雄弁家がいるのは知っていますか?
そう『尻』です。
僕は、リハビリ職種という仕事柄、たくさんの人の体をみて、生活スタイルや生き様を類推してきました。
そして気づいたのです。
『ヒップラインをみれば、性格や人間性、ライフスタイルなどいろいろなことがわかる』と。
今回は、尻をみることによってわかる人間性の解説、どうすれば理想の尻を手に入れられるか、について掘り下げたいと思います。
※なお、今回のnoteを書くにあたって、正しい情報を提供することを心がけましたが、基本的には一個人の見解に過ぎません。内容に関しては一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
1.おどろくべき「尻」の役割
⚫︎ゴリラの「尻」より強い人間の「尻」
筋肉ムキムキのゴリラですが、さぞかし全身の筋肉が人間よりも発達しているのかと思いきや、意外にも尻の筋肉は人間の方が発達しているのです。
そもそも、人間が直立二足歩行ができるのは「発達した臀筋(=お尻の筋肉)」があるからなんです。
青くマーキングされた部分が尻を構成する中で、最大の筋肉である『大臀筋』なのですが、この筋肉があるからこそ、上体を垂直におこすことができるのです。
ゴリラはそれができないので、移動するときに両手を地面につきますよね。
彼らは「手」を体を支える役割から解放できなかったため、人間のような手先の器用さを手に入れられなかったのではないか、ともいわれています。
いうなれば、人間とその他霊長類の進化の明暗をわけたのは尻というわけです。
もちろん、それだけではありませんが。
⚫︎立っているときも座っているときも休まず働いてくれている「尻」
では、尻は立っている間だけはたらいてくれているのかというと、実はそうではありません。
座っているときも尻の筋肉は上体を支えるために、適度なテンションを保ちつづけてくれているのです。
僕が臨床でよく出会うのは、脳卒中で体の左右いずれか半分の筋肉が麻痺してしまった「片麻痺患者」さん。
当然、麻痺した側のお尻の筋肉には力が入りません。
そのような方はまっすぐ座ろうとしても、どうしても麻痺した側に傾いてしまうことが多いのです。
お尻の筋肉が働かなくなると、まるで空気の抜けたボールの上に座っているような状態になり、体はかたむきます。
そして、お尻の骨に直に体重がかかるわけですから、お尻がすぐに痛くなるわけです。
ひどい場合にはその部分に床ずれができてしまいます。
起きている間、休まず働いてくれている尻には頭が上がりませんよね。
(まぁ、頭の方が尻よりも上にあるわけですから、この表現は物理的に無理があるわけですが…)
⚫︎尻を構成する「臀筋」には3種類ある
尻を構成する筋肉には、先ほどご紹介した『大臀筋』の他に『中臀筋』『小臀筋』があります。
こむずかしい話は避けたいので、ざっくり以下のようにご理解ください。
これらの筋肉がバランスよく鍛えられていると、なめらかでしなやかな身のこなしが可能になるわけです。
そして、見た目も、平面的ではなくて、どの方向からみてもプリッとした肉感がある、立体的で美しいフォルムになるんです。
本当は、尻のまわりにはもっとたくさんの筋肉があって、どれもこれも大切なのです。
それらについては、また別の機会に話しますね。
2.「尻」にあらわれる人間性
ここからは、やや独断と偏見にまみれた内容になりますが、ご容赦ください。
⚫︎たれさがった尻
尻は筋肉だけで構成されているわけではありません。
体の他の部位と同様、皮膚でおおわれていて、その下には「皮下脂肪」もあるわけです。
「たれさがった尻」というのは、そうしたやわらかい組織を引き上げてハリをつくるだけの筋力がないお尻なのです。
BMI値(=身長と体重から割り出される肥満度をあらわす指数)が高くて、それでいて筋力がない、という状態だといえます。
当然、尻の筋力がないので、動作は機敏さに欠けますし、上体を起こすために腰の筋肉を代償的に使用することになるので、慢性的な腰痛に悩まされやすいと考えられます。
こんな尻の持ち主は、良くも悪くも自分に寛容で楽天的な性格であるといえます。
一緒にいると落ち着くけど、そのルーズな性格にイライラしてしまうこともあるかもしれません。
⚫︎ペラペラの尻
この尻の持ち主は、筋力が弱いという点で「たれ尻」さんと共通しています。
しかし、食事摂取量も少なく、やや痩せ型であるという点では真逆です。
ペラペラ尻は、全身の栄養状態が決してよくはないことを反映しています。
その状態で長時間座っていると、臀部の皮膚などの組織に大ダメージを与えてしまいます。
最悪、床ずれが発生しますし、そうならなくてもお尻の皮膚が黒ずんで病的な見た目になってしまう可能性もあります。
全身の筋力が弱いので、当然、猫背になりやすいなど、姿勢の悪さにも悩まされるでしょう。
性格傾向としては、やや自己肯定感が低く、悲観的なもののとらえ方をしやすいといえるでしょう。
⚫︎とんがった尻
あまりイメージしにくいかもしれませんが、本来丸みをおびている尻の筋肉が、いびつな形になっている状態です。
前後左右の厚みにバラつきがある、といいかえることもできます。
人間の股関節は「球関節」であり、かなり自由な運動性をもっています。
その滑らかな運動を可能にするためには、大小さまざまな筋肉が共同して働くのです。
ですが、日々の生活やスポーツの練習などの中で、お決まりの動作を何回も繰り返していると、筋肉の働きにバラつきが出てしまいます。
不均衡な筋肉の使用によって、とんがった尻になってしまうわけです。
そうなると「股関節脱臼」や「関節唇損傷」など、さまざまな股関節のトラブルをひきおこしてしまいかねません。
この尻の持ち主は、よくいえばストイック、わるくいえばこだわりが強い、といえるでしょう。
自分にきびしいのはいいことですが、度が過ぎると人が離れていく原因にもなってしまいます。
⚫︎カチカチの尻
これは見た目というよりは、触感の特徴ですね。
尻に限らずなのですが、筋肉というのは、やわらかすぎてもかたすぎてもよくありません。
力を抜いているときはやわらかいけど、力を入れるとグッともりあがる、というのが理想ですね。
カチカチの尻は、瞬発的な収縮力が生まれにくいので、動作に役に立たないシロモノといえるでしょう。
この尻は、ハードなマシントレーニングなどをされてる方に多いかもしれません。
マシントレーニングは体を固定して「その部分」だけを鍛えるものですから、必然的に見た目重視のカチカチ筋肉ができやすいのです。
カチカチ尻の持ち主には「おしゃれ好きな見栄っぱり」という人が多いのではないでしょうか?
筋肉は天然のファッションともいえますし、間違っちゃいないと思うのですが、どうせなら「軽やかな身のこなし」を手に入れるために、もう少し柔軟性のある尻を目指してみましょう。
⚫︎柔軟できれいなフォルムの尻
見た目が美しく、しなやかな動きを可能にする理想の筋肉というのは、横からみても後ろからみても適度な丸みをおびています。
そして、動きに伴って、プルンと弾けるように動く柔軟性を備えています。
僕も、まちでいろんな人の尻を観察していても(←エッチな意図は全くありません)、理想的な尻にはめったにお目にかかれません。
感覚的なところでいうと、20人に1人か2人といったところでしょうか。
高校や大学レベルの運動部員に多い気はします。
あと、日常的に自転車に乗っている人や、階段をよく使う人にも多い気はします。
きれいな尻をもっている人は、それ以外の体の部位をみていても、だいたい均整がとれています。
また、たちいふるまいをみていても、セコセコしているところがありません。
心身共に健康な人が多いといえるでしょう。
これをいうと、本当に、尻馬に乗っかるようで嫌なのですが、大谷選手がメジャーリーガーになる前から、彼のお尻のきれいさには一目おいていました。
その証拠に、彼がメジャーに行く前の2017年に、打席に立つ大谷選手の後ろ姿の写真に『この尻があればぜったい向こうでも活躍できる』というコメントを添えてFaceBookに投稿していたのです。
(…どうでもいい話でしたね)
3.理想の「尻」を手に入れるために
⚫︎マシントレーニングの落とし穴
プリッとした尻を手に入れるためにジムにいこう!と意気込んでいる人は要注意です。
マシンでガチャンガチャンやるのも悪くはないんですが、先ほども書いた通り、全身を固定して、その「部分」だけを働かせるやり方は、見た目だけの役立たずの筋肉をつくってしまう原因にもなりかねません。
もちろんトレーナーについてもらって、きちんと他の部位もバランスよく鍛えるのであれば大丈夫かとは思います。
人間というのは、なにか動作をするときは、必ず全身の筋肉を連動させて動きます。
立っているときは、地面と接している足から情報を受け取り、運動が波打つように上方もしくは下方の関節に波及していきます。
しかるに、尻だけを鍛えても、その他の部位との「連動」を意識しないと、役立たずの不健康な尻になってしまいます。
具体的な実践方法については以下に述べます。
⚫︎ときどき激しく追い込むよりは日々の生活の中で「尻」をつかう
大切なことは、ときどき思いついたように激しく尻を追い込むのではなく、いかに普段の生活の中で尻をつかっていくかを考えることなのです。
昔の人は現代人に比べて、歩く機会や坂をのぼる頻度は、とても多かったといえます。
その証拠に、古い年代に描かれた絵画をみてください。
とくに、写実主義を重んじたヨーロッパの絵画をみると、登場人物全員プリケツです(←いいすぎ)。
それくらい、昔の人は尻の筋肉を使う機会が多かったわけです。
交通手段が発達して歩く機会が減り、なんでも手の中で解決できるようになった我々現代人の尻の筋肉は活躍の場を大幅に失ってしまったといえます。
そんな尻の筋肉を鍛えるおすすめのトレーニング方法は「エスカレーターやエレベーターの使用を一切やめてひたすら階段をつかう」というものです。
階段ののぼりおりは尻の筋肉を鍛えるにはうってつけのエクササイズです。
山や森を歩く機会は減ったけど、コンクリートジャングルという巨大アスレチックパークに生きる我々にはもってこいの方法といえます。
これなら、生産性の少ない「移動時間」を、「尻トレ時間」にかえられます。
エスカレーターは足腰の弱いお年寄りに、エレベーターはベビーカーを押してる方や車椅子の方に、おゆずりして、僕たちはお尻の筋肉に「負荷」という名のエサをあげましょう。
かくいう僕は、ジムに行ってませんし、たまにランニングしたりスクワットしたりする以外は特別なトレーニングを一切していないのに、よく尻のフォルムをおほめいただける程度の美尻をキープしつづけています。
あとは、週末の山登りなんかもおすすめです。
森の中を歩けば気分転換にもなるし、子どもたちを連れていって動植物を探しながら歩けばいい教育にもなります。
とにかく、尻をつかえるチャンスがあったらつかいまくるに限ります。
⚫︎足の先からの『多関節運動連鎖』を意識する
最後に、尻トレをするときに意識してもらいたいことを書きます。
先に触れた通り、人間の動きというのは、運動が起こりはじめた関節を起点に、関節運動が上下左右に連鎖的に波及していくことで、目的を達成するものなのです。
基本的には、我々は、足裏を地面につけて動作することが多いので、足の指でしっかり地面をグリップできてはじめて、ふくらはぎ→太もも→お尻と力が伝わっていくわけです。
関節運動が連鎖的に伝わっていく様を『多関節運動連鎖』といいます。
なんだかこむずかしいですね…。
OK、では、どうやって多関節運動連鎖を意識して、見た目だけではない、本当に機能的で実用的な「尻」を手に入れるか、具体的なステップを以下に箇条書きにします。
これが尻トレにつながるなんて、最初はイメージしにくいかもしれませんが、ときどきこれらを実践しながら尻の筋肉に手をあててみてください。
自然に、キュッと尻の筋肉が収縮していれば、うまくいってる証拠です。
本当はもっともっとあるんですが、もうやめときます。
4.さいごに
僕は、美しい尻の人が好きです。
男女問わず。
それは、尻がきれいな人は、心も体も健康な人が多いからです。
尻を鍛えることによる恩恵は、運動面にあらわれるだけではありません。
臀筋のような大きな筋肉を鍛えると、基礎代謝が上がります。
代謝が上がると、循環器系や内分泌系が整うだけでなく、免疫の働きもよくなります。
まさにいいことずくめですよね。
まちろん、尻だけで人は判断できませんし、するつもりもありません。
ですが、幸せな人生を送るには、尻トレはとても有効な手段だと信じています。
これを読んでくださった、大切な読者の方々が、これから健やかなる尻ライフを送られることを、心から願っています。
イルハン