子どもが仲間外れにされたらどうする?心理学的アプローチと実践的サポート
子育てでわかってほしいこと:友達トラブルを通して学ぶ社会性
我が子が保育園や幼稚園、学校で友達とうまくいっていないかもしれない――。そんな状況を知ると、親としては心が締めつけられるような不安を感じるものです。特に我が子が友達と元気に遊んでいる姿を見ることは、親にとって安心感につながります。反対に、お迎えに行く度に、我が子だけが一人で遊んでいるのを見かけたり、「OOちゃんにダメって言われた」と家で聞いたりすると、「いじめられているのでは?」と心配になります。
私自身も幼少期に似た経験をしたことがあります。幼稚園の年中の頃、近所の友達から仲間外れにされました。引っ越したばかりで、近所の子どもたちが通う幼稚園に入園できず、別の幼稚園に通っていたことが原因でした。近所の子どもたちは自分たちの幼稚園の遊びを中心に遊び、私は「智子ちゃんは幼稚園が違うからダメー」と言われ、仲間に入れてくれないことがありました。祖母が仲間に入れてくれるように仲介してくれたのですが、それもなんだか情けなくて、結局は嫌な思いをすることが増えるばかりで、自分から彼女たちと遊ぶのを避けるようになりました。
子ども同士のトラブルは成長の一部
こうした「幼児あるある」のような出来事は、私が関わる保育園でもよく見られます。親や保育士としては、子どもたちがみんな仲良く遊んでくれるのが理想的です。しかし、現実として、子どもたちは生まれながらに十人十色で、特に未就学児は認知能力や身体発達、運動能力のレベルが大きく異なります。その中で、偶然同じクラスやグループで時間を過ごすことになっただけなので、気が合わないことも当然です。それでも、こうしたトラブルを経験しながら子どもたちは社会性や自己表現を学んでいきます。
今回は、子ども同士のトラブルがどのように社会性を育むのか、そして保護者や保育士ができるサポートについてお話しします。
子どもが友達トラブルを経験する理由
子ども同士のトラブルは成長の過程で自然に起きるものです。特に未就学児は、身体能力や認知力、社会的スキルがまだ発達途上にあります。そのため、同じ年齢でも「自分の世界観」や「遊び方」の違いから、衝突や仲間外れが生じるのは避けられません。
自然な発達過程の一部としてのトラブル
未就学児は、心理学者ピアジェが指摘する「前操作期」にあり、自分の経験から得た「ルール」や「シェマ」をもとに世界を理解しようとします。たとえば、「プリキュアは髪の毛が長くてスカートを履いている」とイメージしている子は、それを遊びの中でのルールとして取り入れることがあります。この結果、「OOちゃんは髪の毛が短いからプリキュアにはなれないよ」といった発言が出るのです。
これは悪意からではなく、子どもが遊びを通じて秩序や社会性を学ぶ一環なのです。
「みんな仲良く」が返っていじめの原因に?
子どもの友達トラブルに直面したとき、大人としては「みんな仲良く遊んでほしい」と願うものです。しかし、現実にはそれを無理やり強要すると、かえって逆効果になる場合もあります。
子どもにとっての遊びは人生そのもの!真剣勝負!
例えば、大人が「仲間外れはダメ!みんなで遊びなさい」と指示した場合、一見すると子どもたちは従っているように見えても、内心では新たな葛藤が生まれる可能性があります。「自分たちで楽しい遊びを作りたいのに…」という思いが抑え込まれ、結果として陰で排除やいじめが起きてしまうこともあるのです。
なぜなら、子どもにとって遊びは「人生そのもの」といえるほど大切なものだからです。真剣に遊んでいる彼らにとって、その世界はとても大切な場所。だからこそ、そのルールを乱すような存在を受け入れたくないと感じるのです。この感覚は、多くの人が子どもの頃に経験したことがあるのではないでしょうか。
トラブルが教える3つのこと
子どもが友達トラブルを経験することは、社会性や自己表現を育む重要な機会です。以下のような学びが含まれています。
1. 自己主張と他者との調整
友達と衝突することで、「自分の意見をどう伝えるか」「相手の意見をどう受け入れるか」を学びます。
2. 共感と他者理解
トラブルを通じて、相手の気持ちに気づき、「こう言われたら嫌だな」といった共感力が育まれます。
3. グループの中での役割理解
子どもたちはトラブルを経験する中で、自分の立ち位置や役割、グループ内の調整方法を学びます。
大人にできる3つのサポート
子どもの友達トラブルを完全になくすことはできません。しかし、大人が適切にサポートすることで、トラブルを成長の糧に変えることができます。
1. 泣いている子の気持ちを受け止める
まずは、泣いている子の感情をしっかり受け止めることが大切です。「悲しかったんだね」「○○ちゃんも一緒に遊びたかったんだよね」と共感することで、子どもは安心感を得られます。
2. 遊びの調整を提案する
遊びをしている子どもたちのルールや考え方を尊重しつつ、仲間外れにされた子が参加できる新しい役割やルールを提案しましょう。
「パンツ姿のプリキュアもすごくカッコいいね!」
「OOちゃんはプリキュアを助ける妖精になれるよ!」など、柔軟な提案をすることで、子どもたちが自然に受け入れるきっかけを作れます。
3. 共感力や協調性を育む日常の工夫
トラブルが起きていない日常の中で、子どもたちに「共感力」や「協調性」を育てる機会を提供することも重要です。
絵本や物語を通じて、「仲間外れにされたらどんな気持ちになるか」を考えさせる。
自由遊びの時間に「みんなが楽しくなる遊び」をテーマにした話し合いやロールプレイを取り入れる。
最後に:子どものトラブルを「成長のチャンス」として捉える
友達トラブルは、子どもの発達の中で避けられないものです。それを「いじめ」と決めつけて排除しようとするのではなく、「どうしたら解決できるか」「何を学べるか」を考える場として大切にすることが、大人の役割です。
子どもたちは、トラブルを経験しながら少しずつ社会性を身につけていきます。泣いている子も、仲間外れをしてしまった子も、どちらも成長の途中です。親や保育士は焦らず、子どもたちが自分のペースで学んでいけるように見守りましょう。そして、適切なタイミングでサポートし、子どもたちが「楽しく一緒に遊べる」経験を増やしていけるよう支えていきましょう。