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障がいのある子を育てるあなたへ—『Welcome to Holland』という視点
「どうして、うちの子なの…?」
そう思うことが、これまでにあったかもしれません。
障がいのある子を育てることは、予想していた未来とはまったく違う道を歩むこと。
それは時に戸惑い、悩み、孤独に感じることもあるかもしれません。
アメリカの脚本家 Emily Perl Kingsley(エミリー・パール・キングスリー) は、障がいのある子を育てる親の気持ちを「旅」にたとえ、『オランダへようこそ!』 というエッセイを書きました。
彼女は、『セサミストリート』の脚本家として40年以上活躍した人物です。
しかし、息子のジェイソンがダウン症を持って生まれたことをきっかけに、障がいのある子どもがより身近な存在として認識されるように、番組内で多くのインクルーシブなストーリーを生み出しました。
「イタリアに行くはずだった。でも、着いたのはオランダだった。」
この言葉が、あなたの心にどう響くかはわかりません。
もしかしたら「そんな簡単な話じゃない」と思うかもしれません。
でも、「こんなふうに考えることもできるんだ」と、少しでも気持ちが軽くなる人がいたら――。
このエッセイは、そんな思いを抱く方にとって、一つの視点を提供してくれるかもしれません。
『Welcome to Holland』
私はよく、障がいのある子を育てるとはどういうことか、と尋ねられます。その独特な経験をしたことのない人に、それがどんな気持ちなのかを伝えようとするのですが……。それは、赤ちゃんを授かることが、イタリア旅行を計画するようなものだからです。
あなたはガイドブックを買い、素晴らしい計画を立てます。コロッセオ、ミケランジェロのダビデ像、ヴェネツィアのゴンドラ……。イタリア語のフレーズを覚え、期待に胸を膨らませながら、その日を待ちます。
そして、ついにその日が来て、飛行機に乗ります。数時間のフライトの後、客室乗務員がこう告げます。
「オランダへようこそ。」
「オランダ!? どういうこと!? 私はイタリアに行くはずだったのに!」
「ずっとイタリアに行く夢を見てきたのに!」
でも、飛行計画が変更され、あなたはオランダに降り立ちます。そして、そこで生きていかなくてはなりません。
大切なのは、オランダがひどい場所ではないということ。そこは病気や飢餓にあふれた恐ろしい場所ではありません。ただ、違う場所なのです。だから、あなたは新しいガイドブックを買い、新しい言葉を学び、今まで出会うことのなかった人々と出会うことになります。
オランダは、ただ「違う場所」なのです。イタリアほど華やかではなく、テンポも少し遅いかもしれません。それでも、しばらく経って落ち着いてくると、こう気づきます。
オランダには風車がある。
オランダにはチューリップが咲いている。
オランダには、レンブラントの美しい絵画がある。
でも、あなたの知っている人たちはみんな、イタリアへ行ったり来たりしています。彼らは「イタリアは素晴らしかった!」と語り、その素晴らしさを自慢するでしょう。
あなたは、ずっとこう思い続けるかもしれません。
「私だって本当はイタリアに行くはずだったのに……」
それは、心の中に残り続ける痛みです。なぜなら、それは非常に大きな夢の喪失だから。
でも、もしもあなたが、ずっとイタリアに行けなかったことを嘆き続けるなら、あなたは決して、オランダの美しさを楽しむことはできません。
Kingsley, E. P. (1987). Welcome to Holland.
日本語訳(今村智子 訳):
キングスリー, E. P. (1987). オランダへようこそ
© 1987 by Emily Perl Kingsley
All rights reserved.
Reprinted by permission of the author.