【ABA子育て入門#3】無視だけではダメ!不適切な注目行動をやめさせる方法
3歳半の息子のわがままに耐えられない
手のかかる下の子の面倒を見ながら、3歳半の男の子の育児をするのはとても大変です。保護者が日々忙しく、子供とのふれあいが十分でない時、子供は親からの注意を引くために不適切な行動をすることがよくあります。それは、悪いことをしない限り、親が振り向いてくれないことが多いからです。
例えば、料理をしている時、子供が一人で問題なく遊んでいたら、放っておくでしょう。しかし、子供がコップを落として割ったり、ソファーから落ちて泣いたり、激しい兄弟喧嘩を始めたりすると、あなたは料理を中断して子供のところに行くかもしれません。
このような生活から、子供は「ママ、こっち来てー」と言っても来てくれないが、「悪いことをすると反応が返ってくる確率が高い」学んでしまった可能性があります。
無視されるより、叱られる方がずっとまし
子供にとって、親から注目や愛情、親との関わりは、食事や睡眠と同じかそれ以上に不可欠なものです。大人が思っている以上に、子供は保護者からの注目を求めています。子供はまだ一人で生きていけないし、親から見捨てられたら生きていけないからです。そのため、子供が親の注目を強く求めるのは、生存本能なのです。ですから子供にとって、親から無視されるより、叱られる方がずっと安心なのです。
子供が不適切な行動をした直後に、あなたからの叱責という注目を得た子供は、その目的を果たすことに成功したことになります。
したがって、子供の不適切行動は、親からの叱責によって強化されたことになります。
このまま何もしないとどうなる?
このまま問題を放置してしまうと、問題はさらに悪化するかもしれません。親は息子を愛せなくなると、子供はそれを敏感に感じ、ますます頻繁にしつこく絡んで、親の関心を引こうとします。そうなると親はさらに息子を疎ましく感じ、感情的なきつい言葉を投げたり、無視したり、体罰にまで発展してしまうかもしれません。
表面的なABAだと失敗する
そこでABAによる対処法を試みたとします。
大抵のABAの解説には、「不適切行動が注目行動である場合、不適切行動を無視して、良い行動を褒めましょう」「叱ることも注目を与えることになります」とあったりします。
失敗1.:無意識的に不適切行動を強化していた
「叱ることも注目を与えることになる」と学習したこの保護者は、叱るのを辞めることにしました。しかし、無意識にため息をついたり、うんざりした顔をしていたとします。
実はこのような親の非言語的な反応も、子供にとっては注目に値することがあります。
注目行動とは、他者からの注意や反応を引き出すために行動することです。「自分の行動が親に影響を与えた」「親から反応を引き出した」のであれば、その行動は強化されることがありますので、注意が必要です。
じゃあどうすればいいのでしょうか?
無視するというより「動じない」こと
子供の注目行動には、全く動じないようにしましょう。つまり顔色を一切変えず、無感情で、子供と目を合わせず、無言で無表情で対応することです。このような態度を一貫して取り続けることにより、子供に「悪い行動をしても、なんの効果もないんだ」と学習させるのです。
失敗2:消去で不適切行動が増える
この保護者はABAのアドバイス通り、一貫して子供の不適切行動を無視し続けることにしました。しかし、子供の問題行動は無くなるどころか、返ってひどくなってしまいました。なぜでしょうか?
消去バースト
それは、今まで悪いことをすれば親からの注目を得られていたのに、同じ行動をしても親からの注目を得られなくなってしまったことで、「これでもか!これでもか!」と一時的に行動が強くなり、増えてしまっているのです。これをABAでは消去バーストと言います。
例えば、自販機にお金を入れても商品が出てこなかったら、ボタンを連打したり、自販機を叩いたり蹴ったりするのと同じ現象です。
消去バーストは感情的な行動なので、特にひどい暴力行動を引き起こす可能性もあるので、注意が必要です。消去バーストが起こらないような予防策を講じながら、問題行動を減らしていくように計画して実行する必要があります。ではどのような予防策を講じれば良いのでしょう?
この場合の消去バーストの機能を考えてみましょう。
行動の目的を果たせない限り、行動は続く
この行動の機能は、親からの注目です。注目を得るために行動し続けています。ですから、行動をやめさせたいなら、注目をたっぷり与えて満たしてあげる必要があります。注目欲求が満たされたら、悪い行動で注目を引く必要がなくなるので、悪い行動は必然的に減ります。
ですから子供には、注目が得られる適切な行動をしっかり教えていきます。たっぷり愛情表現をしながら、良い行動を教え、練習させて、できたらまたたっぷり褒めます。とにかく、「悪い行動を無視しなくちゃ」と考える以上に、適切な行動をしっかり教え、たくさん褒めたり、認めたり、一緒に喜んだりする機会を増やすことが肝心です。
愛情飢餓は空腹と同じ
例えば、お腹がペコペコの子供が盗み食いをしたので、罰として食事抜きにしたとします。子供は親の金を盗んで食べ物を買うかもしれませんし、コンビニで万引きをするかもしれません。
罰を与えるだけでは改善しない
このような罰の与え方は、非常に一般的なしつけ方法です。
例えば、毎晩遅くまで携帯を使っていて学校の成績が下がったので、携帯を取り上げたとします。すると子供は親を殴る、家出をする、パパ活でお金を稼いで自分で携帯を買うかもしれません。
もちろんこれらはかなり悪い例ですが、実際にただ禁止するだけでは問題が解決するどころか、返って悪化させてしまうこともあるのです。
ABAで行動を改善させるメカニズム
ABAで不適切行動を適切な行動に変えるメカニズムは、不適切行動をとっても目的が果たせない(強化子が得られない)ように環境を変えることで、不適切行動を取る意味をなくさせ、行動を減らしていきます。
同時に、今まで不適切行動で果たしていた目的(得ていた強化子)を、今度は適切な行動をすると強化子が得られるように環境を変えます。そして当事者にこの適切な行動をしっかり教え、この行動をすれば確実に強化子が得られるような環境に改善します。
最後に
子供の不適切な行動に対処するためには、ただ罰によって問題行動を一時的に止めたり、不適切な行動を無視するだけでは根本的な解決には至りません。
行動の目的(機能)を特定し、問題行動と同じ機能を果たす健全な行動(代替行動)を指導し、たっぷり強化することに焦点を当てます。これによってなんの効果もない不適切な行動は減り、強化子を生み出す適切な行動は増えていき、子供の愛情欲求は満たされます。
結果として、このアプローチは、当面の課題に対処するだけでなく、前向きな親子関係を育み、子供の情緒的な幸福と発達を高めます。
次回はもっと具体的な関わり方を解説します。