散文58
白い歯を見せながらスポーツに興じる男にも憂鬱はあり、
平日の労働の影がコートに落ちる
その打球音が響く時にまた、
労働の味を知る
0−40(ラヴ・フォーティ)
反復するだけのラリーでは
何を知る由があるのかわからないが
ネットを隔てた向こう側に見える過去の死人と
対話している。
「長く沈黙が続くのが不快で、裸体の女を手っ取り早く捕まえて
ホテルに行く」
「誰もが一人で死んでいく街の衰退。当たり障りの良い親切や、余裕ある素振りをしているだけの人も、寝不足の日には眠りたい。電車で空いている席などがあれば、椅子取りゲームみたいにして座るよね」
「『性格悪くない?』っていう女性の性格の悪さを自認させたい」
こちら側では、長い間、死んだ人見ていない。
死人の打球音は2オクターブ低い。
15−40(フィフティーン・フォーティ)
サービスは有利であるが
死人にサービス権は無かったので、
こちらばかりにサービスが集まる
ダブルフォルトしかしない奴の
人生なんて上手くいかない。
Z世代をマーケティングしようとしている中高年の男性たちの
あの得も言われぬ空気感は何なのだろう。
不快ではないが、バカを見ればいいのにとしか思えない。
「そうだろ?」
「俺はもっと年上だから」
40−40(フォーティ・フォーティ)
「いつもイケてる感じで仕事している
カタカナ語ばかり使っている風な
ビジネスごっこ早く辞めろ
そういう奴らが他者の労働を馬鹿にしているから
気に食わないよね」
アドバンテージ・サーバー
若い女「こんな可愛いリング嬉しい」
ジョー・マローンの香水(イングリッシュオーク&ヘーゼルナッツ)
レンジ・ローバーのレザーシート
ロレックス
赤身肉 二切れ
火葬場 通夜
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空白 月曜日の東京メトロ銀座線下り
ゲーム 1ー0(ワン・トゥ・ラヴ)
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