綺麗なままで
早起きして鴨川に出ると、満開の桜が出迎えていた。
お花見をする老夫婦や大学生グループ、キャッチボールをする二人組の青年、犬の散歩をする人、ひらひら舞う桜を目で追う犬たち、追いかけっこしている園児、三脚を立て写真を撮る人、木の下でのんびり休んでいる鳩
人も動物も関係なくそこに集まって桜を愛でている姿に、言葉にし難い嬉しさを感じる。私はぐっとこみ上げてくる感情を指に落とし、フィルムのシャッターを切る。
人工物が少なく自然をそばで感じられる場所ではつい人の動きを見てしまう。彼らが自らの感性や心に従って動く姿を、私は美しいと思う。
桜、川、動物、人、そこにある全てがキラキラして見えた。
ひとりで散歩するのは大好きだが、この景色をあの人と一緒に見て歩きたいとも思う。ありのままに感じたことをそのままの言葉で、あの人の口からどんな言葉が出てくるのか私は知りたい。
けれどこれはきっと、私の空想にとどめておいた方がよいのだろう。綺麗なままで。
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