一家団欒 (体重が100キロを超えた中学生時代の話)
僕は昔から少食だった。
信じられないかも知れないが、僕は本当に少食だった。タイトル詐欺ではない。
太った人がよく言う、「そんなに食べてないんだけど、なぜか太るんだよね〜」などでもない。
僕がこの言葉を頻繁に使うようになるのは、この時から十年は経ってからだ。
昔の僕は、そもそもモノを食べるのが怖かった。
少年時代のある日、餅を喉に詰まらせたのがきっかけだった。
そんな僕が食の悦びを知ったのは、こうした少年時代の反動であったのかもしれない。きっかけは忘れたが、自然と食の増える思春期には、丼ぶり程あるお茶碗でお代わりをするまでになっていた。
この時の僕のお気に入りはマヨネーズの納豆和えと、シュガーシロップの牛乳割りであった。
頭が悪いのか、舌が馬鹿なのかは今でも分からない。
今まで食べてこなかった分を取り戻すかの様に、僕は脂と糖とカロリーを欲していた。
それでも、たまに獣のように異常食を貪る以外は、学年に必ず一人は居たキャラクターの、まさかその「一人」に自分が成るほどの暴食をする事はなかったはずである。
最近知ったのだが、世の家庭では夕食は19時ごろまでには食べるそうだ。
我が家の夕食はたいてい21時から22時ごろであった。
僕の家には一つの決まりがあった。それは家族みんなが揃って食卓を囲むことである。
僕が塾などで遅くなる日でも、家族はこの決まりを必ず守ってくれていた。
その頃の父は仕事が忙しく、20時頃に帰宅してから酒を飲んだりするのを待つと、自然と夕食は遅くなった。
僕は、そんな時間から、笑顔でマヨネーズを啜る。
中学校を卒業する頃にはめでたく100キロを超えていた。
時を経て、僕の体重は現在80キロ前後で安定している。
身長に比較すると、少し肉付きが良い程度である。
決して、断じて、太っているわけではない。
あくまでも身長が高いのだから仕方がない。高身長なのが申し訳ない。
そんな痩せている僕は最近は忙しく、家族と顔を合わすことが少なくなっている。
一人で食べる夕食は何だか味気なく、ぼーっと液晶画面を眺めながら少量のモノを口に運び、アルコールで不足分を補う。
100キロを超えた中学生時代を思い出しながら、今日も僕は一人グラスを傾ける。
気が付けば12月29日。今年もあと僅かである。
僕は、我が家のお雑煮の味をふと思い出した。
お正月には、久しぶりに、ゆっくりと食事が出来そうな気がする。
そんな事を考えているとお腹が空いてきた。
午前2時、僕はカップラーメンを食べた。
来年の目標はダイエットにしよう。
来年こそは真剣にダイエットをする。まあ、正月もあるし、来年の第二週からスタートしよう。いや、第二週には僕の誕生日がある。お酒も飲むだろうし、第三週くらいからが、区切りがいいか。来年の第三週くらいからにしよう。
誕生日を家族と過ごしてから、必ず。