独り旅
私は、小学校から大学まで野球を続けてきた。
大学を卒業し、これまでのめり込んできた野球を続けないという決断をしたが、その後は何か頭の中と生活の時間の中にぽっかりと穴が開いてしまい、ある種燃え尽き症候群のような状態に陥った。
就職活動をしてはいるが、いまいち身が入らない。
そんな時ふと
「もう一度アメリカに行こう」
ということが頭によぎった。
「もう一度」というのは、厳密にいうとその一年前、大学時代に野球部の遠征でアメリカ・ロサンゼルスに行っている。
かねてから、アメリカのベースボールに魅了されており、念願のアメリカ行きが決まったのであった。
期間は約1週間ほどだったが、期間中は全身の毛穴が開きまくり、目の前で起きること、アメリカ人の行動や仕草、空気感、雰囲気など全てを吸収している感覚があった。
それだけその時の経験が貴重であった。わずかな期間だったことや時間のほとんどが団体行動であったため、消化不良を感じてその遠征は終了した。
就職活動をする中で、自分の今までの生い立ちを整理するいわゆる自己分析をみんながやると思う。私も実施する中でたった1週間という短い期間ではあったが、その時の経験が自分に大きな影響を与えていることを改めて感じていた。
そんな当時のことを回想している中で先程の想いが込み上げてきたのだった。
就職活動を終え約半年ほど時間が空いたので、その思い通りアメリカにいくことにした。主に語学学校に通い生活していたが、学校卒業後にも時間をあけて初めての1人旅をする予定を立てた。
その時は、カリフォルニア・サンディエゴに滞在していたので、東海岸まで行き、西海岸に戻り、日本へ帰国するルートで旅の計画をした。
初めての一人旅ではあったが、前回アメリカに来た時同様全身の毛穴が開きまくっていたため、怖さよりも好奇心が強く私の背中を押していた。
それ以外にも行きたいところがたくさんあり、時間も限られているので、1人で行きたいところを計画してどんどん行くのが1番有意義だと思っていた。
約2週間で、ニューヨーク、フィラデルフィア、ボストン、ラスベガス、ロサンゼルスという日程を組んだので1人で行くことで行きたいと思ってたところにはほとんど行けた。
また、英語を語学学校に行っていたので、そこで学んだことを現地でアウトプットし、通じる通じないを試すことも楽しかった。途中、ニューヨークのタイムズスクエアで黒人に絡ませてお金を請求された時は、ここで引いたら負けだと思って強気に英語で喧嘩をし、結果逃れられた経験もRPG的でかなりアドレナリンも出た。
旅の中で新たな気付きがあった。
「1人だけど独りではない」
どういうことかというと、私は物理的に1人で旅をしていた。一緒に来てくれた友達もいない(そもそも誘ってないので笑)
けれど、街で交わす何気ない会話や利用していたゲストハウスでそこで知り合った人と過ごす時間が私を独りにさせなかった。
街いく人と交わす笑顔、お店などで『どこから来たの?』など拙い英語での取り止めのない会話、夜にゲストハウスで母国のことやその土地で見たもの感じたことをシェアする時間、その日の朝には想像もしてなかったような場所で今まで知らなかった人たちと杯を交わしている時間、、、、、
そういったものが私を独りにさせなかった。
そういった経験を楽しめるようになり、次第に独り旅にのめり込んでいく感覚があった。
その後、社会人になってからもアジア圏やヨーロッパを中心に旅に行くことになるが、きっかけは1番最初に行ったアメリカでのこうした経験。
その時、私に優しく接してくれた人、一緒に時間を過ごしてくれた人全てに改めて感謝したいと思う。