せせらぎと白日
観音寺川
去年はARABAKIの後に
見に行ったのだから確か5月初旬
福島最後の春
猪苗代、観音寺川の桜は
磐越西線
川桁駅から降りて歩いて見に行く
普段は地元の人以外
誰も降りないような
無人駅が花見客で賑わう
しかしてまぁ寒いのだ
川沿いだから余計に冷気で足元が冷える
体感温度は雪解けの春
浮かれて薄着で花見に行ってしまうと必ず後悔する
いつものわたしの愚行である
だって5月だし二本松、郡山と暖かかったからと
毎年油断して現実に直面する
お腹が冷える
トイレが近くなる
ぶるぶる震える
寒さを耐え忍び
我慢して歩く
例年、観光スポットである観音寺川の桜は
カップル、ファミリー、写真愛好家で賑やかで
思い、思いのアングルでファインダーを覗いては
桜とあなた、桜と川、桜と子どもたち、桜と私たち
桜とmetoo
桜を愛でる人達の脇を
身震いしながら
足早にすり抜けて
撮影の邪魔にならないように
ファインダー越しの視線を察知し
人と斜線を潜り抜ける
スパイ大作戦
わたしはわたしのアングルを探す
誰かと同じではつまらない
切り取りたい瞬間
どう見える?
寒いのでできるだけ
早く早く
早く早く
と歩を進めると
折返しの橋に出る
そこで闍の岡さんに会う
岡さんは福島県内で
珈琲の移動販売をしている
旅する珈琲屋さん
岡さんのネルドリップの珈琲で暖を取る
かじかんで固まってしまっていた
掌が次第に解けていく
ちょうどライトアップが始まる
幻想的なこの世であの世のような世界
もし臨死体験をしたら観音寺川の光景が
三途の川として現れるだろう
わたしの脳はきっとそう変換する
珈琲を片手に復路
イヤホンを左だけ耳に突っ込む
SpotifyがKingGnuの白日をplayする
Listento鼓膜
ARABAKIで直に聴いた
あの声
あの歌
あの景色
川が流れている
せせらぐ音、人の声
フェスが始まっている
多様に
静かに
各々が個々で其々
フェスティバル
境界線
言葉を発する
変わりにシャッターを切る
切り裂いて
残した後味は
岡さんにもらった
カカオ70%の
Bitterなチョコレート
雨ニモマケズ 風ニモマケズ