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ポエム 3月18日〜365日の香水
詩
詩の持つイメージの世界も深く、歴史は長い。最古とされるのはギルガメシュ叙事詩だそう。ポエム~POEME(フランス語)はギリシア語で作るを意味する言葉が語源となったので、技術的に作り出された言葉という概念なのに対して、「詩」の文字は思いや記憶を言葉にしたものということで、ポエムと詩では若干ニュアンスが異なるのかもしれない。
香水の名前に「ポエム(poeme)」と使われると、幻想的でロマンチックな感じを受けるから近代の散文詩の世界を想像してしまう。
長恨歌と貴妃酒酔
ランコム(lancome)の90年代の香水ポエムpoemeの香りに触れてみて、そこから想像したのは漢詩の世界だった。
有名な白居易の長恨歌の一節には「眸を迴らし一笑すれば百媚生じ。六宮の粉黛 顔色無し」(瞳をめぐらし微笑めば媚びが生まれて後宮の美人たちも形無しとなる)と圧倒的な楊貴妃の美しさと、寵愛を一身に受けている様子が描写されている。(こちらを参照しました)
楊貴妃については、以前こんなNOTEも書いた。
楊貴妃の体臭については、挙体異香と言われ、今でいう腋臭のような独特の魅力的な体臭の持ち主であったとされている。
想像するに、少し脂粉のような甘くパウダリックな、人肌をかんじさせるような匂い・・・。
それは、長恨歌の描写を通して喚起される楊貴妃の可愛らしく、ふくよかな魅力に通じる匂いだ。
もう一つ、詩ではなく京劇だけれど貴妃酒酔という演目では、玄宗が約束をすっぽかし、他の女性のところに行ってしまったことにやきもちをやく楊貴妃のそれでも美しい姿が描かれる。
何をしても魅力いっぱいの人、その楊貴妃の様々な場面が、この香水から想起された。
poeme/lancome/1995
豊潤なフルーティーフローラルがトップノートから立ち合がり、ムスクやアンバー、バニラがそこに重なるので柔らかいけれど重厚な香り。甘さもしっとり系ではなくパウダリー感を伴うので、本当にかぐわしい人が通り過ぎる時のような印象。
調香師はジャック・キャバリエで、同氏によるディオールのドルチェヴィータやゴルティエのクラシックなどスイートフローラルとセミオリエンタルが相乗効果を発揮する構成がポエムにも活かされている。90年代はマリンノートの大隆盛期だったけれど、一方で80年代を継承するフローラルオリエンタルと2000年代を先駆けるようなフルーティフローラルが一定のマーケット遠形成していた。ポエムはフローラルオリエンタルとフルーティフローラルのいいとこどりを試みた点で興味深い。この試みが、私には「ライチを食べたい」と朗らかにいい、魅惑的な香りを放った楊貴妃を感じさせてくれた。
香り、思い、呼吸。
3月18日がお誕生日のかた、記念日のかた、おめでとうございます。