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ニュアンス…10月18日~365日の香水

四十八茶百鼠
日本の伝統色には茶系、グレイ系で実に多くの種類があって、それを「四十八茶百鼠」という。実際に48種類、100種類というわけではない。
江戸時代に茶やグレイの流行があり微妙な違いで数多のバリエイションが生まれた。
海老茶で通じることが多いワインレッドに近いブラウンは本来は葡萄茶と書き、山葡萄の一種であるエビカズラからきている。
利休茶は緑がかった薄茶色、利休鼠は緑がかった薄いグレイ、ともに千利休、茶の湯のイメージからネーミングされたよう。
染料や染め方に工夫を凝らしたのか、少しだけ変えて違う形にしていくというプロセスは調香にも似ている。

灰桜の受難
淡く品のある桜色にシックな灰色が少しかかったような色。
この色のような香りを創りたいと思って、試行錯誤したことがある。
何故、試行錯誤したのか、今振り返ると一番の原因は「周囲に意見を聞いた」からだった。
正確に言うと、意見を聞いたことは間違いではないけれど、人によって「灰桜」のとらえ方がマチマチだったので、「その人のイメージした灰桜」をもとにしたコメントは「私の灰桜」に対しては多分、ズレたものになっていたのだ。今思えば、色の見本帳を示せば済んだ話なのだけれど。
アドバイスや壁打ちや第三者の視点はとても大事だけれど、前提がしっかり一致していないと、迷走するというわかりやすい例。

日本人が感じ取る微妙な違い
日本では季節の植物や昆虫などが芸術の対象になってきた。
鶯一つとっても初春と晩春では鳴き声が変わるという変化を一つの春という季節、一つの鶯の鳴き声という現象の中で見出してきた。
それは普通は目に留まらないような小さなアイコンを発見しては慈しみ時を感じてきたような感覚かもしれない。

黄河流域の古代人が感じた微妙な違い
何かで読んだけれど、果てしない大地と黄河と空、シンプルなその光景の中で、古代黄河流域の人々は、微妙な空の変化、大河の変化を観察しながらその解像度を上げていったという。花や動物など目移りする対象が特にないから、同じ空、河、大地を眺めては変化を心にとどめていたらしい。
そう考えると、どんな環境の中でも、微妙な変化というのは起こっている。
不変はなく、森羅万象は変幻ということをつくづく思う。

ニュアンス
これまで語ってきたことはすべて「ニュアンス」について、と言える。
フランス語のニュアンス(NUANCE)は色合い、微妙な違い、という意味を持つ言葉でラテン語で雲や曇りを指すNUBESが語源。
うすぼんやりとした中の移ろいをとらえる。
質問されたときのニュアンス、返事のニュアンス、人と人とのコミュニケーションにも常に付きまとう。
デザインも線の入り方の微妙な違いをたくさんのパターンを作ってベストを見極めていく。
様々のニュアンスを理解するには観察力が必要になる。
自らの解像度をあげていく観察。

NUANCE/COTY/1975
未開封のパルファムのコレクション。
タイプはアルデハイドタイプで、少し前に扱ったMISS WORTH(ミスウォルト)のような系譜で、こちらは柔らかいあたたかみよりも繊細でスリムな感覚がある。
秋の日のデリケートな会話を楽しみたい。

香り、思い、呼吸
10月18日がお誕生日の方、記念日の方おめでとうございます。

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