しなやかに、生きる。女性の解放と70年代の香り
悪名高きRBG、85歳のファッションアイコン、現役の米最高裁判所判事、ルース.ベイダー.ギンズバーグ(Ruth Bader Ginsburg)、通称RBG。
彼女のドキュメンタリー映画「RBG」と、ハーバードのロースクール時代から弁護士としてのキャリアスタートくらいまでをえがいた「ビリーブ 未来への大逆転」を観ました。
こんな素敵な女性がいるんだ、アメリカに、現役で。しかもおしゃれでユーモアたっぷり!
日本版の宣伝PRが、「妻として、母として」的な、まさに時代錯誤なコピーで物議をかもしたらしいです。時代錯誤なのか、やっぱり、それが現実なのか。
ルースは、ハーバードロースクールが女性に門戸を開いた頃に入学。同期の女性は7人。学長は新入生の女子7人を食事会に招き、友好的な雰囲気の中、こういい放ちます。
「男子の席を奪ってまで、君たちが入学した理由を是非聞きたい」
ルースの答えは
「献身的な妻として、同じロースクールで学ぶ夫を理解し支えるため」
※ルースは同じハーバードに通う夫と既に結婚していました。
このくらいエレガントに相手をディスった回答をできるようになりたい笑。
女性が自分の名義でクレジットカードを作ることもできず、同じ仕事をしても賃金は男性より低いことが当たり前の時代。現にロースクールを首席で卒業してもRBGを弁護士として雇う事務所はなかったのです。
RBGはそんな時代に、女性の未来を切り開いていきました。ガラスの天井どころか巨岩を前に、つるはし⛏️一つで立ち向かい、トンネル掘るような戦い。果てしない。私なら徒労感で挫けていると思う。
RBGに共感するのは、そのようなあきらめない気持ちもそうなのですが、なんでもかんでも同じに、ではなく、何事にも公平に、というスタンス。RBGの回りにはなんとも自然で穏やかな空気さえ漂っています。
ドキュメンタリーで出てくる後年のエピソード。判事になったとき、法服がスーツにネクタイの上から羽織る前提でデザインされていることに違和感を覚えたRBGが、それを自分流にアレンジすることを思い付いたこと、それはレースで付け替えのできる襟をあつらえることだった、というエピソードがとても好きで、以後、法服に合わせる襟は彼女のアイコンになり、いろいろな団体、国々からプレゼントもされてコレクションは充実していきます。
みんなが同じにするのではなく、みんなが同じく自分らしくいられる、それがあるべき自然な姿なんでしょう。
70年代前半、活躍が始まった頃のルースは、どんな香水を好んでいたのかなー。
この時代の香りのトレンドはグリーンノート。
ベトナム戦争に疲弊した人々の心が、いわゆる自然回帰、癒しを求めたためと言われています。そして、ナチュラルでスポーティーで、フェミニンとは一線を画したグリーンノートは、ウーマンリブという当時台頭してきた女性解放運動ともリンクしています。女は女らしく、ではなく、誰もが当たり前のように自然の前では同じ存在。
この頃リリースされた香水としては、シャネルNo.19、エスティーローダーのAlliage、など。
ココシャネルがプライベートで愛用していたと言われているNo19、彼女の誕生日の8月19日に由来していて、オードトワレとオードパルファンではタイプが異なるのも面白いところ。トワレはグリーン、オードパルファンはシプレタイプ。
エスティーローダーのアリアージは世界初のスポーツフレグランスと言われることも。
私の勝手な想像では、同じ時代の香水で、グリーンというより、フローラルグリーンの代表作、ディオールのDiorissimoがこの頃の彼女に似合いそう、だなと思うのです。
可憐にして清楚、声高な主張ではなく、穏やかなけれど確信に満ちた説得。主香になっている鈴蘭は清潔感を醸しつつ、実はとってもロングらスティング、ほのかなグリーンノートがずっと持続するんです。
RBGのキャリアを彷彿させると思います。
一筋のしなやかな線がどこまでも伸びていく。